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廃ビルの開かずの間

開かずの間と言うのを知っているだろうか?

その名の通り、開ける事が出来ず中に入れない部屋?

誰もがそう誤解をしている事だろう・・・






「うわぁ~ボロイなぁ~」


私は廃墟となったボロビルの中へ足を踏み入れていた。

趣味で廃墟を巡るのが連休の楽しみになっている私、今日も廃墟となった地区のとあるビルに侵入していた。

私の様な変わった趣味を持つ人種はそれなりの人数が居るのでたまに人に出会ったりする。


「こんにちわ~」

「どうも~」


すれ違う男性と会釈をして埃塗れのビル内を徘徊する。

まるでRPGの冒険をしているようなこの感覚を快楽と感じられる、私個人は素晴らしい趣味だと考えている。


「ふんぬっ!」


倒れた棚を乗り越えて部屋に入ってみると床に足跡が多数残された一室に降り立つ。

足を置くと共に舞い上がる埃に喉をやられないようにマスクをしているがモアッとした臭いに少し咳き込む。

チラリと給湯室だったであろうスペースに視線をやると大きなゴミ袋の様な物が多数置かれていた。

放置されたのであろうその袋も誰かが中を覗いたのだろう、口が開けられ周囲にゴミが散らばっていた。

暫し探検を楽しんだ後、私は部屋を出て上の階へ向かう。


「あれ?」


そこには木材や棚など色々な物でバリケードの様な物が作られていた。

僅かに隙間が在り小柄な人間ならなんとか進めそうだ。


「んっしょ・・・おじゃましまーす」


物怖じする事無く中へと侵入し更に階段を登る。

誰か人が通ったのであろう、その空間だけ汚れが少なかったのだ。

だから確信して進めると考えた私は奥へと進んだのだが・・・

このとき引き返せば良かったと後から後悔する事となる・・・


「ここが最上階かな?」


階段を一番上まで上がって最上階らしき階に到着した私は再び探索を開始する。

他の階よりも妙に狭いこの階は大きな会議室らしき部屋が1つ在るだけだった。


「ほぇ~大会議室ってやつかなぁ~」


部屋の中央で高い天井を見上げながらクルクルと回る私。

暫し堪能した後、フトそれに気が付いた。


「あれ?なんだろあれ・・・」


会議室の奥の壁に四角い突起が1つ在ったのだ。

△の形をしたそのボタン、私は恐る恐るそれを押した・・・


「うわわっ?!」


ウォーンという音と共に何かが動く音が上からしてそれはやって来た。

壁だった場所が左右に開き中から1人の女性が飛び出してきた。

目を血ばらせ慌てた様子の飛び出すように中から出てきてそのまま会議室から出て行った彼女。

一体何事かと身構えたがよくよく見ればただエレベーターが開いて中から人が出てきただけであった。


「ははっ・・・ビックリしたぁ~」


一瞬驚いて固まったが落ち着いてみればなんてことは無い、私は安堵して開いたエレベーターの中へと足を踏み入れる。

この時、廃墟となったビルのエレベーターに電気が通っている違和感に気付ければまだ引き返せたのかもしれない・・・


「最上階だと思ったけどまだ上が在るのかぁ~」


そう言って目の前に在った『閉』ボタンを押した。

そう、押してしまった・・・

その瞬間私は再び固まってしまった・・・

そのエレベーターには『閉』のボタンが1つ在るのみで他にボタンが無かったのだ。


「あぁっ?!」


慌てた時には既に扉は閉まっておりエレベーターは自動的に上へと向かって動き出していた。

少し驚いたが中から人が出てきたのだから大丈夫だろうと考えていたのだが・・・


チーン


音と共に開いた目の前を見て絶望に染まった。

鉄格子、そこは社長室の様な一室になっていたのだが入り口に鉄格子が在りエレベーターから出る事が出来ないのだ。

そして、正面に見える椅子にはこちらを向いた白骨死体が座っていた。


「ひ・・・ひぃいいいいい!!!」


慌ててエレベーターの『閉』ボタンを連打してエレベーターを閉めるが・・・

うそ・・・動かない・・・

ボタンが1つしかないので扉を閉めることは出来るのだ。

だがその扉を開く方法がなくなってしまった・・・


「うそっ?!うそっ?!うそぉおおお!!!」


指を隙間に入れてこじ開けようとすればなんとかエレベーターの扉を開ける事は出来そうだ。

だがそこの前には鉄格子、しかも最上階は完全な密室。

開いても中へは入れずこちらを睨み付ける白骨死体が私を招いているようにこちらを見詰め続ける・・・


「やだっ!やだっ!やだぁあああ!!!!」


スマホをポケットから取り出しても『圏外』で使えない。

そこで初めて中から飛び出してきたさっきの女性を思い出す。

きっと彼女もここに閉じ込められて・・・

時間的に日が暮れ始める、私の様な人が偶然最上階への隙間を通って会議室のボタンを発見して押してくれるまでここから出られない・・・

その絶望的な状況に真っ青になりながらあの出て行った女性が警察とかに白骨死体を通報してくれるのを信じて私は座り込む・・・



開かずの間、それは中へと入る事は出来るが外へは決して出られない部屋の事なのかもしれない・・・



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― 新着の感想 ―
[一言] 語り部がいるってことは出れたってことね。 (小説や)
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