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史記~史記とはなにか~
これからは、またファンタジーを離れて史書に戻りたいと思う。中国の歴史書は数多くあるが、資料としては24史に春秋、後は兵法書が主に挙げられる。そのなかで、中国古代史で有名な物は、「史記」「春秋左氏伝」「竹書紀年」「資治通鑑」であろう。
そのなかでも「史記」は、司馬遷のおかれた境遇、書かれた思想、人に焦点をあてる紀伝体、そしてなにより物語としての抜群の面白さで、一つ抜け出た存在である。それは、伝記のみならず現地に赴いて取材をして口伝や評判を聞き取ったほか、自分と似た境遇の者たちへの愛隣の情が垣間見えるからである。
漢の役人でありながら、高祖と呼ばれる劉邦について、「口先だけでなにもできないろくでなし」と現地の評判があった、とはかなりの覚悟がないと書けないであろう。また、司馬遷が冤罪の上、極刑を受けた身であったので、不遇な境遇に落とされた人間に対しての筆致は力のこもった物となった。
人にスポットを当てるあまり、年表がかなりいい加減になっているところが指摘されるが、史実に忠実ながらも、史記は紛れもなくエンターテイメント作品である。




