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町
砂混りの乾いた風が頬を撫でる。
ここは廃れてしまった町。
壁が罅割れた家屋はかつてここにも人が居たのだという事を思わせる。
手入れが施されることが無くなった畑に命はもう感じられない。
井戸は乾き切り、一滴の水さえも無くただ闇を抱えている。
「現実」つまり「私の世界」がこの町のように廃れてしまったら。
私はここで乱雑に積まれた瓦礫たちと同様に等しく無価値なものになるだろう。
昔、この世界がどのように栄えていたのか。
今、私が何を見て生きているのか。
いつかの未来で、廃れてしまった「私の町」を訪れた旅人は何を思うのか。