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悠たちのアオハル ~大学進学~  作者: すー
1章 大学生時代 一年生
8/13

8 サークル見学の日 後編 TRPG部

「ようこそTRPG部へ!」


 艶のある黒髪をリボンのようなヘアゴムでまとめた女子学生がにっこりと微笑んだ。


「部長の佐伯よ」

「こ、こんにちは……」


 悠はぺこりと頭を下げた。


「TRPGって何ですか?」と、おずおずと疑問を口にする。


「テーブルトークロールプレイングゲームの省略よ。RPGはゲームでもドラクエやウィザードリィなんかでお馴染みね。戦士や神官や魔法使い。ファンタジー世界の住人になったつもりで、ゲームのルールを守ってお話を楽しむことがメインになるわ」


「そうそう! 一度やると、面白いからとてもハマるよ」と悟が続く。


「悟くんは、TRPGをやったことがあるの?」

「うん。高校のときに、友だちとね。だけど大学進学でバラバラになっちゃったから、もう滅多に集まれないなって思ってたとこなんだ」

「そっかあ」

「今、私がGMとしてすぐに提供できるのは『The north legends』くらいね」

「じーえむ? のーす……?」


 悠は聞きなれない単語にきょとんとする。


「GMはゲームマスターの省略さ。モンスターを出したり、ダンジョンの構造を考えたりして、ゲームとして物語の進行を勤めるのがGMの役割だよ。僕もやったことがある。『The north legends』はTRPGのゲームのひとつさ。初心者でもやりやすいと思う」

「そうね。でも、これから始めるには時間が遅いわ。今日はウノかトランプで、地ならししましょ」


 佐伯は手慣れた様子で部室の奥に行き、ウノとトランプを持ってきた。


「それくらいならあたしにも分かる! 悟ってばあたしがいない間にマニアックな趣味にハマってたのね」

「マニアックかなあ? みんなでワイワイやれる面白いゲームだよ、TRPGは」

「そうそう。ゲームの中の冒険者たちが酒場で意気投合してパーティを作るように、ゲームをやる度に現実でも親交が深まるわよ」


 佐伯がにっこりと笑った。

 悠もウノやトランプくらいならばやったことがある。しかし、TRPGというのも面白そうだと思った。


「TRPGのこと、いろいろ教えてくださいね。佐伯先輩」

「任せて。それじゃ、ウノのカードを配るわよ」


「うーい」と悟が返事をした。


 佐伯と新入生の悠たち4人でウノが始まった。悠は高校の修学旅行で、夜中にこっそりやったウノのことを思い出した。


「うちの高校さ、規則が厳しかったから修学旅行でウノ禁止だったんだよね。先生が見回りに来るんじゃないかってビクビクしながらウノをやってたんだ。懐かしいな」

「えー!? あたしの高校はそんな禁止事項なかったよ」

「朱里は私立のいい高校だからなあ。生徒にも優しかったんだろ。まったく、何でこの大学に来たんだか」

「悟のためじゃない! ひどい、せっかく同じ大学にしたのに、あたし、のけ者扱い!?」


 朱里は涙目になった。


「悟。そのくらいにしとけ。カードがもう来てるぞ」

「洋介……お前は何だかんだ言って、朱里に甘いんだよな」

「朱里さん、泣かない泣かない」

「悠は優しいね! あたし、悟から悠に乗り換える!」

「へっ!? じ、朱里、お前そっちの気が!?」

「冗談よ。でも悟があたしを置いてくなら、いつの間にかあたしがいなくなっても文句言わないでよ」

「行け行け。せいせいするよ」

「ひっどい!」


「まあ、仲がいいのね」と、悟と朱里の様子を見て、佐伯がにっこりと笑った。


(くさ)(えん)です、腐れ縁」と悟。

「昔は結婚を誓う仲だったのにー。なんでそんなふうに育っちゃったのよ」

 朱里は頬を膨らませた。


「ふふっ」と悠が微笑む。


「悟くん、朱里さん、洋介くん。せっかく同じ大学になったんだもの。仲良くしようね」


「おう」と洋介。


「うん。あたし女の子の友だち少ないから。悠だったら仲良くなれそうだよ!」


「こちらこそ、よろしくね」と悟も応じた。


「はい、それじゃあウノをやるわよ」


 佐伯が皆をまとめた。

 彼女と新入生4人組は、真剣な面持ちでカードを見つめ、ゲームに興じた。

 日が暮れて夜になるまで、悠たちはウノに熱中していた。


「ウノ!」


 朱里が高らかに声をあげた。


「はい、今日はこれくらいでおしまい」と佐伯がカードを仕舞った。


「時間があっという間に()っちゃうね」と悠。


「楽しかったなあ。今度来るときは『The north legends』をやろうな、悠ちゃん」


 悟が笑顔になった。


「TRPGも面白そうだな。役を演じるのは演劇みたいだ」と洋介が言う。


「ウノはいいけど、TRPGは何だかちょっと面倒くさそう」と朱里。


「なら朱里、お前はやらなくたっていいんだぞ」

「ひどーい! 悠、悟がいじめる!」

「朱里さん、いい子いい子」


 悠が朱里の頭を撫でた。


「今日はありがとうございました!」


 悟が皆を代表して佐伯に礼を言った。


「今度はもう少し早めに来てね。みんなで『The north legends』を楽しみましょ」


「はーい」と返事をする悠たち。


 TRPG部の部屋を出たあと、他愛もない話をして、四人は解散した。


※登場するTRPG「The north legends」は、本作品内オリジナルのゲームです。

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