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悠たちのアオハル ~大学進学~  作者: すー
1章 大学生時代 一年生
2/13

2 入学式の日 前編

 大学の近くで一人暮らし。夢が現実になったことに、悠は感激していた。もろもろの諸経費は両親が負担してくれることになっている。もちろん社会勉強も兼ねて、悠はアルバイトを入れるつもりではあったが、金のことは気にするなと、快く送り出してくれた両親には感謝の念しかない。


 家具は中古で手に入れ、冷蔵庫や電子レンジなど家電製品は扱いが簡単で丈夫そうな新品を選んだ。ドライヤーには奮発した。マイナスイオンが出るという、髪に優しい優れものだ。


 部屋は、一人暮らしにはすこし広めの8畳のスペースがある。そこに背もたれを倒すとベッドになるソファーを置いた。これなら家族や友人が来た時にも座ってもらえる。


 家族と離れることに少しの不安はあったが、手狭な家で中学二年の生意気盛りの弟とケンカしたり、両親のもとの窮屈さを感じたりしていたので、一人だけで使える空間が出来たことには喜びがあった。


 いよいよ今日は入学式だ。新品のスーツを買う時は、母に付き添ってもらった。黒のジャケットとパンツとスカート、三点セットを選んだ。悠は明るめのパステルカラーのスーツも可愛らしくて良いと思ったのだが、母が「黒なら冠婚葬祭にも使えるし、就職活動だって行けるわよ」と言うので当たり障りのないフォーマルスーツにした。シャツだけは淡い桜色のフリル付きにこだわった。母も「インナーくらいは、就活のときにまた買ってもいいわよね」と、賛成してくれた。バッグはA4の書類が入るサイズのブランド物を母が選んでくれた。これも就活で使えるようにとの配慮があった。


 鏡を見て、悠は笑顔を浮かべた。JKの自分に、本当にさよならだ。


「行ってきます!」


 悠は元気よく部屋に向かって声をかけた。

 悠のアパートは大学から徒歩20分。もっと近いところもあったが、間取りや、街に出るための交通機関の利便性、近所にスーパーがあるかなどを吟味したら、このすこし遠めの部屋になった。ちょっとは歩けた方が健康的、悠はそう思っている。


 入学式の始まる30分前には大学に着いた。立派なアーチが架かる正門の前で、母の(はる)が片手を上げた。


「お母さん!」

「悠! 素敵ね」


 晴が満面の笑みを浮かべる。


「ひとりでも大丈夫だったんだけど」と、悠は憎まれ口をたたいてしまった。


「馬鹿ね。今の時代、入学式は親のイベントでもあるのよ! お父さんが残念がっていたわ、土日に入学式をやってくれって言ってたもの」

「そっか。来てくれてありがとうね、お母さん」

「ほらほら、門の前で写真撮るわよ」


  晴がスマートフォンのカメラを悠に向けた。


「笑って笑って」


 カシャリ。シャッターの電子音が響いた。


「ああ、悠ちゃん!」


 男の人の声に、悠は振り向いた。


「あ、悟くん?」

「あら何、もうボーイフレンドが出来たの!?」


 晴が驚く。


「合格発表のとき、転びそうになったところを助けてくれたの」

「蕗村悟です。よろしく」

「野桜晴です。悠をどうぞよろしくね。不純異性交遊はダメよ」

「お母さん!」


 悠はズケズケと言う晴に、恥ずかしいやら悟に悪いやらで閉口した。


 「悠ちゃん、お母さんと入りなよ。スマホ撮ってあげる」


「いいの? ありがとう」

「あら親切ねえ」


 悟の親切に甘えて、悠と晴は正門の大学のアーチと看板を入れて撮ってもらった。

 

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