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退院

「……」


 病院から退院し、ここが自分の家だと案内された俺は、その家の中を見て絶句している。


 扉を開けてまず最初に感じたのは、モワッとした熱気だった。

 八月という猛暑日なので当たり前と言えば当たり前なのだが、やはり不快感は拭えなかった。


 そして部屋の中は、高等学校と書かれた教科書が散らばり、プリント等はクシャクシャになって、同じように散らばっていた。


 それだけなら良いものの、エアコンが壊れていて、さらに追い打ちをかけるかのように、冷蔵庫すらも壊れていて使えない状態だった 。


 エアコンが無いだけでも、現代の猛暑日を生き抜くのは過酷とも言えるのに、冷蔵庫までもが壊れているのだ。

 これでは生物なまものや冷凍が必要な食材は、全滅しているだろう。


 そもそも部屋をよく見渡してみれば、暑さでやられたのか知らないが、電化製品は全て壊れていた。


 教科書やプリントが散らばっているのは自業自得なので良いのだが、電化製品が全滅しているのは絶望でしかなかった。


 尚且つ、この部屋には食材が殆ど存在しない。

 当然ながら冷蔵庫が壊れているので、冷凍が必要な食品は全滅。


 クーラーボックスが部屋にあったが、当然ながら中に入っていた食材は、全て腐っていた。


 それ以外にあった食品は、レトルト食品が少々と、米が僅かに残っているだけだった。


 そもそも、こんな状態では生活する事が苦しい。

 せめて、この暑さを生き抜く為に扇風機は欲しい。


「……買い物に行くか」


 太陽の光がギラギラと照らす猛暑日の中、俺は仕方が無く買い物に行く事にした。


 ――


「何だと……」


 俺は絶望的な状況に立たされている。

 何故か……それはATMの残額に、三千円としか表示されていなかったからだ。


 これでは、数日分の食材を買う事しか出来ない。

 扇風機を買う事なんて夢の話だった。


 記憶を失う前の俺はどうやって生き延びていたのか……謎が深まるばかりである。


 兎にも角にも、買い物をしなくては始まらないと思い、ATMから残り三千円全てを引き出した。




(さて、何を買えばいいやら……)


 ATMからお金を引き出したは良いものの、何を購入するか全く決まらなかった。

 何せお金がある前提で買い物に来たのだ。これだけしかお金が無いのは、大誤算だ。


(とりあえず、食材と保冷に必要な氷を買うか。貧乏飯に必要な食材は……)


 俺は自分の知識をフル活用して、貧乏飯に必要な食材を考え出した。




 もやし、納得、天かす。瞬時に浮かんできた食材はこの三つだった。

 もやしは言わずもがな、貧乏食の筆頭である。そして納豆は、一パックを二回に分けて使えば、かなりコストが安くなる。天かすは色々と使えるだろうという判断だ。


「よし、とりあえず決まったな」


 買う食材が決まれば、後は買い物カゴに商品を入れていくだけだ。

 俺はヒョイヒョイという効果音が付きそうなスピードで、買い物カゴに商品をぶち込んでいった。


 そう、殆ど思考停止でヒョイヒョイとカゴに入れていったのだ……




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