一筋の閃光
序章 差しいる光
4月のある日、暖かな日光に身を包まれ、平和に見える日が流れていた。
だが、裏路地では少女が少年に囲まれているといういかにもな状況だった。
「触るな、下衆共が」
この不良に囲まれている少女、黒い髪に豊かな体を持っている少女、取り囲まれているというのに恐怖どころかむしろ楽しんでいるようだった。まぁ、確かに実力はある、この都市の中でランク一から七までの七段階評価の中でランク6に属するのだから。しかし、彼女の得意魔法は後方支援であって、間違っても面と向かって使う技ではない。
が、不良程度なら調理はできる。
そんなわけで、少女がいつもの容量(何かと良く絡まれる体質なのだ)で不良を調理しようとした時だった
「邪魔」
ただ短い一言であったが、見えない威圧が込められていた。
あまりに突然のことで少女には理解が及ばなかった。ただ本能的に一つの言葉が頭を巡った
「何なんだコイツ???」
不良達もいい気になるわけもなく、青年に掴みかかろうとした、、、、が、突如不良達が地面にめり込んだ、比喩でも何でもなくほんとにめり込んだのだ。
少女が唖然としていると青年に声をかけられた
「おい、アカデミアってどこにあるんだ?」
少女は一瞬呆然としたが、すぐに意識を青年に向けた
この青年は「アカデミア」と言ったのだ
アカデミアはこの少女が所属している学校であり、この都市の四天王と呼ばれるランク7がいる超名門校だ。だとしたらこいつは新入生なのだろうかと思った少女だった。たしかに今日は新入生の試験があったような気もする。そこまで考え手、少女は気づいた。
新入生の試験は三十分前に既に始まっているのだ。考えていると青年に声をかけられた。
「見たところテメェも同じ学校のようじゃネぇか。」
いきなりのタメ口その他諸々のことで少女はどうしようもない疲労感に襲われた
まぁ、この学園は年齢制ではないので後輩先輩の概念はないが、初対面の人にテメェ、とか言わないだろうと思いながら少女は答えた。
「連れていこうか?私空間魔法使えるし」
「こんな餓鬼にも使いようがあったんだな」
「誰が餓鬼だこら」
青年が答える前に少女が青年に手をあてる、数秒後には既にアカデミアにいた
「アンタ遅刻だから早く行きなさいよ!」
言葉を言い終わる前に気づいた
青年はもういなくなっていた
一、悪夢への誘い
先程まで少女といた青年は理事長室にいた
「特別に貴様のような輩を入れてやっているのに、遅刻とは何事だ!」
「全くだ!試験は中止でいいのでは!」
「いや、それではつまらん。せっかく闇から引き抜いたのだから」
学園の権力の塊の理事たちが好き勝手ワイワイと騒ぐ。
青年はただだまっていた
「では、四天王と戦わせればよかろう。」
一人の理事の発言でその場が静まる。
「ははははははははははははは。それは名案だ。まぁ、最も生きて変えれるかはわからんが。」
理事がいっせいに笑い出す。次々と好き勝手にものを言う。
その笑いを聞いていた龍牙から爆発的な殺気をあふれでる。その殺気を感じたのか、理事たちが黙り込む。そこで理事長たる男が口を開く。
「おや、殺しにこないのかい?」
ほかの理事がこの発言に戸惑う中、理事長が笑身を浮かべ、龍牙が口を歪める。
「まぁ、せいぜい頑張りたまえ、龍牙君」
その言葉を背に龍牙は反対側へと突き進む。
「そして、知れ。貴様はこんなところに来ていい奴でないのだ。」
誰もいなくなった。理事室に笑い声が響く。
<行間>
何だったんだろう?あのバカ?
校門で少女が空を見上げる。
2、悪夢 nightmare
学園中が騒がしい
みな、新入生が四天王と戦うという噂を聞き騒いでいるのであった
「可哀想な新入生だな」
「全くだ」、「真夜先輩容赦ないからなぁー」
「あー怖い」
龍牙の対戦相手が決まったのだ。その名は真夜、名字は誰も知らない。
その頃、真夜は戦いの場―コロシアム―に向かう通路で思いを巡らせていた
真夜の使う魔術は、「幻術」。
それは、真に才能のあるものしか使えない。
どんなに努力しても「眼」がないものには使えないのだ。
眼にも種類があり、1人で扱えるのはせいぜい一種類。
なぜこんなことを言うかと言うと、噂ではあるが七つの目を自由に使えるという人物を耳にしたことがあるからだった。
そして、彼はその力の強大さのため皆から敬遠されていた。
「たくっ、何なんですかぁ?」
独り言を言いながら真夜はコロシアムにつく
既に龍牙はいた。
戦闘開始の合図がなる。
そこから先はあまりにも一方的だった
幻術にかけられなかった観客でさえ恐怖が全身から溢れ出すほどに。
真夜の目には愉快な程ボコボコにされた龍牙がいた。
「雑魚が、俺の手を煩わせやがってよぉ。理事会もほんとに悪趣味だな。まさか、何お前、自信があったわけじゃないだろー、まぁ、気の毒だけど。俺に殺されることを誇りに思いながら散ってくれよ。」
「」
龍牙は何も言えなかった。幻術で身動きを封じられた末に全身をボコボコにされていた。
「内蔵何個残るかわかんねぇけど、どうにかなるよなぁ?あひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
凶悪な笑いの後に真夜は霊装を呼び出した
霊装は、神話に登場する武器の、魔術的な意味を抽出して、一時的に自分の武器とするものである。
真夜が作り出したのは
「ミョルニル」
北欧神話で、トールが持つ北欧神話中最強の鎚である。その名前は古ノルド語で「打ち砕くもの」を意味するほどのはかいりょくである。
そんなもので叩かれたら、形容しがたいことになる。
真夜が槌を振り下ろそうとする
唐突に真夜の脇腹に激痛が走り軌道がずれた
(しばらく使ってねぇから、なまったか?)
そう思いながら、第二の攻撃を繰り出す
それはたしかに龍牙に当たった。
そして、戦いは完全な真夜の勝利であった。
相手が一撃も攻撃を繰り出せないほどに。
その瞬間、真夜の見ていた世界が歪む
全身に激痛がはしる
そう、たしかに真夜の完全な勝利であった。
真夜の眼の中では…………
<行間>
一方その頃、龍牙と出会った少女―狩闇 光―は二年生の教室にいた
彼女は、この学園の中では、トップクラスの実力の持ち主だが、主流が後方支援であるためあまり目立つというわけではなかった。
そもそも彼女には前衛のパートナーがいないのだ、というより四天王以外で彼女と釣り合う力を持つものがいないのだ。
たった三十分ほど前までは……
3、その名は翔
真夜が意識を取り戻す
「てん…じょう?なんで俺は優雅に寝ているんだ?そもそも何であいつが生きてる、傷すらないだと?!」
真夜の頭が自らが見ている世界を正しく認識するのにはしばらく時間がかかった。
龍牙が微かに笑い、真夜の頭の中へと真相を叩き込む
「お前は俺の幻術にかかった。戦いが始まった直後にな。所詮ランク7と言えど貴様は12人いる、ランク7の中では9位だ。その程度が妥当というところだろ。」
真夜はその言葉をかみしめた。
自分は力があるが絶対的な力ではない。
それゆえに拒絶されたのだ
そして今またその事を思い知らされた。
真夜は落胆した。しかし、同時にそれよりも大きな疑問が生じた。
「お前は誰なんだ?」
そう、たしかに真夜は絶対の力を持つ訳では無いが曲がりなりにもランク7なのだ。
その真夜に真夜の最大の戦力である幻術で挑んで勝てるヤツなどそうそういない。
「俺は龍牙。龍牙翔だ。」
そう言い残して龍牙はその場を去った
<行間>
理事会室に一人の青年が入る
その名は 未神 吹雪
ランク7にしてこの学校最強の四天王
序列は3位。
「全く面白いものを連れてきてくれたもんだね。」
青年の声が響きわたる。
「彼はDarknessの出身だ。その力はあまりにも強大すぎる。君でも勝てるかは分からんよ」
不気味な笑みを浮かべながら理事会のひとりが言った。
「そもそも何故あんなのを入学させたです?龍牙君の力はあなたがたの『対神格計画』の邪魔になると分かっていたのでは?」
「彼の力があれば『対神格計画』を十五年も短縮できる。」
「なら、何故僕と戦わせるのです?」
「この学園の力を思い知らせいうことを聞かせるためにさ。」
4、始まりと終わり Condemnation and Expiation
真夜との戦闘後龍牙は、理事会に呼ばれた。
「おめでとう龍牙君。君の実力は素晴らしい。そこで提案なんだがね、うちのトップ、未神君と戦ってみないか?まぁ、拒否権はないがね。」
その挑発的な言動は龍牙にとっては侮辱以外の何でもなかった。
龍牙は体中から爆発的な殺気を溢れ出させる。だが、その殺気が行動に出ることは無かった。殺気を抑え龍牙が口を開く。
「チッ、分かったよ、そのかわりどんな結果になってもしらねェかンな。」
理事は全てを見通すかのように言った。
「では、戦闘は明日。今日は、そうだな、君と話していた狩闇くんの部屋に止めてもらいなさい。なにぶん部屋がないもので。あっ、入学後もこれは変わりませんからね。不満なら一人か二人殺すことです。まぁ、今のあなたにそんなことが出来るとは思いませんが。そうですよねぇ?り、ゅ、う、が、く、ん?」
龍牙の過去を逆手に取ったことで理事は舐めきった口調になっていた。
舌打ちをしながらも龍牙は手を出す事はできなかった。
それは、生まれて初めてした、ただ一度約束であったから。
外に出ると狩闇が待っていた。龍牙は少し驚いた。人に待たれたことなどない。ましてや、一言や二言交わしただけの奴だ。
「なんでここにいる?お前と慣れ親しんだ覚えはネェがよ。」
「だって、アンタ私のヒーローだから。」
あっけに取られる龍牙をよそに狩闇はしゃべり続ける
「わたしの、両親はDarknessに殺された。殺された原因は取引をたまたま目撃してしまった人と通信があったから。たったそれだけ。その両親に直接手を下したのが真夜。この学園に入ったのも復讐の為だった。で、1度あいつに洗いざらい話して、その上で謝って欲しかった。だけどあいつはこういったの。『はぁ?謝る??なに?なんですかぁ?頭がおかしくなっちゃったんですか?オメーの両親なんて所詮は魔術もろくに使えねー雑魚だろ。ゲームだったら何全体も殺されてるだろ?なんでそんなのに謝らないといけないんですかァ?雑魚が何体死んでも誰も困んねーんだよ。あひゃひゃひゃひゃひゃ!!』
私はあいつが許せなかった。でも、私の力じゃどうしようもない。ほかの四天王もみんなDarknessと繋がってる。ランク7なんてみんなそう。特に第2位や1位は許さない。あったことは無いけど、話では、強大な力を殺しのみに使いそれを生きがいにしている。あいつらさえいなければDarknessだって消えるかもしれない。でも、そんなDarknessの1人をあんたは倒してくれた。私の為じゃないのは知ってる。でも、それでもあなたはその力を正しい方向に使った。四天王と同じ力を持ちながら正しく使ってくれた。それが嬉しいの」
Darknessを消すことは無理だと告げようとしたが、どうしても口が開かない。なんと言えばいいのか。そして、今までに感じたことがない気持ちにもなっていた。龍牙よりも先に狩闇が口を開いた。
「ごめん。こんな話。あんたには関係ないのに……。まぁ、てなわけで話は聞いてたけど私の部屋に来るんでしょ?あんたなら発情することもなさそうだし。こっち。ついてきて。」
狩闇が自分の手を掴む。龍牙は自分の感じている気持ちの名前をやっとつかんだ。
「ありがとう。」
龍牙は生まれて初めて人に感謝した。
その言葉に偽りはなかった。
龍牙は少しであったが嬉しさを感じていた。
1ヶ月前までの自分の周りのヤツらならこんな言葉をかけられることは無かっただろ。龍牙は生まれて初めてであろう人からの優しさを受け取った。だが同時にそれは自らの過去が明らかになる時にくずれさるものが大きくもなった。そんな龍牙のことなど知らずに狩闇が口を開く
「あら、意外ときざなこと言うんだ。」
面白がりながら狩闇は、龍牙を部屋に案内した。
「ここが私の部屋。で、あんたは地下の部屋使って。」
「アァ、ありがとな。」
「男のツンデレは需要ないわよ。」
「殺すぞ。」
そういった龍牙からは、殺気は微塵も出ていなかった。