堅物宰相様は人形を愛でる
なんか思いついたので
ファナック王国で有名人と言えば、当代国王であるジクアス=ヒアデス=ファナック王が一番にあがるだろう。若くして王位を継承し、国内のゴタゴタを納め、近隣諸国を手中に治め、その手腕にて今やこの大陸の覇者となっている誰もが認める賢王。
しかし、最近その王よりも有名人がいた。ファナック王国宰相であるクロノス=シーズ=パタノール公爵である。
元々公爵もそこそこは有名であった。主に堅物宰相ということであったが…。
ある伯爵令嬢はいう。
「クロノス様はどんな美女に迫られても顔色一つ変えることなく、つれない態度でしたのよ。最も冷たいところが素敵とおっしゃる方も多くて…その内、あの方は男性にしか興味がないのではないかと噂されるくらい。ここだけの話ですが不敬にも陛下との噂があがるくらいには…ウフフ」
そう嬉しそうに。
堅物宰相から男色、そして最近は特殊な趣味をお持ちだとか。
そう証言するのは、人身売買の罪で捕まったある子爵令嬢である。
「わたくしは生き人形を手に入れて遊びたかっただけですわ。その人形が異世界からの落ち人だったなんて…。あんな人形くらいの落ち人だなんて知りませんでした。今までの落ち人は少し小柄ではありましたが、人形サイズではありませんでした。だから、わたくしは魔術で作った人形と思ってました。知らなかったんです」
この時捕まった者は他にもいたが、ほとんどの者は落ち人だとは知らなかったようだ。
この世界には時々他の世界より落ちてくる者がいる。彼、彼女達は皆有益な知識を授けてくれるために見つけ次第国が保護するという決まりになっていた。
今までは特に問題はなかった。しかし今回の落ち人は見た目で気づかれずに稀少生物として高値で取り引きされそうになっていたところを国に保護されたのである。
しばらくは王宮で保護されていて、宰相が抱きかかえる姿が数多くの人に目撃され男色ではなく人形を愛する特殊な性癖との噂がたった。まさか宰相が抱きかかえる物が人間と思われておらず、ましてや落ち人は誰も思ってもいなかった。
その内人形が人間であり落ち人であることが広まると、その落ち人の外見から幼女もしくは少女であり、ほとんどを宰相様が抱きかかえるていつも一緒にいたため終いには幼女趣味という噂がでた。それを聞いたある変態紳士は嬉しそうに
「宰相様も、まさかお仲間とは思いませんでした。今までロリコンだ変態だと肩身の狭い思いをしてきましたが思う存分変態を貫き通します」と世の変態に活気を与えていた。
ただの堅物からロリコンまで墜ちてしまった宰相様。
「私はロリコンではありません。人形を愛する特殊な性癖でもありません。まして陛下と…心外です。アンナが可愛いだけです。錦糸のような長い黒髪。黒曜石のような瞳。透き通るような白い肌。柔らかい頬。形の良い鼻。濡れたような唇。華奢な身体…」
まだブツブツと呟いていますが、やはり噂は本当のようです。
では当事者である異世界からの落ち人さんに聞いてみましょう。
「宰相様には感謝しています。オークションで売られそうになっていた所を助けてもらって王宮に連れてきてもらって…侍女さん達からリアル着せ替え人形にされたから私の世話をしてくれて…お風呂まで」
そう言って真っ赤になってしまった。最後の方をもっとくわしくと叫ぶが宰相様に抱えられて行ってしまった。
ファナック王国の有名人は新しい称号を再び手に入れるのか?
宰相様の溺愛が始まる。