恋せよ、コミュ障
七
国王「今日はなにについて話し合えばいいかを話し合おう」
イナカ「帰っていいですか?」
国王「まぁ、待つんだ。大臣よ、説明してやれ」
大臣「はい。皆様はコミュ障という病気をご存知ですか?。近頃、巷ではこの病が流行っており、誰とも会話することもない生活を送り、最終的には声帯が退化し、話すことすらできなくなった国民が全体の8割を超えました」
イナカ「え?。つまりこの国の80%の人が声帯がいかれて話すことができなくなったということですか?」
国王「その通り」
イナカ「流石にこの国終わったな。…転職先探しとこう」
国王「なにを隠そう、この場にいるサンダー将軍も最近声帯が退化してきたそうだ」
サンダー「………」
イナカ(ちょっと嬉しいと思ってしまった私はきっと正しい)
よく見ると隣にいたマリアもガッツポーズをしていた。
国王「コミュ障の原因は会話の話題がないからという意見が多い。だから今回の会議では会話に困ったときの話題を考えてほしい」
クルス「代表的な例として『今日、天気いいですね』とかですか?」
国王「そうだな。しかし、それだと『そうですね』の一言で会話が途切れてしまう」
サンダー「好きな…アニメキャラの話…とか」
コミュ障を患ったサンダーはボソボソと話す。
国王「誰しもがアニメに興味があるわけではないからな。しかも我が国はテレビが普及していないから電波放送もしてないし…」
イナカ「電波放送もしていないのなら、情報の伝達技術の不足のせいで、共通の話題を見つけることも難しいですね」
国王「ここで話し合いたいのは誰しもが興味を持ち、会話が弾むような話題だ」
マリア「それでしたら当てはまるものは一つしかありませんわ、国王」
国王「申してみよ、マリア」
マリア「紳士淑女、老若男女問わず、誰しもが興味を持つもの…そう、それは恋バナ!!。恋とは誰かを好きになり、心を狂わし、張り裂ける程の想いを湧き上がらせるもの。それは有性生物として生まれてきたものとしての権利であり、義務である。淡い思い、届かぬ想いも恋。甘い吐息、結ばれる体も恋。恋をしない人間などいない、いるとしたらそいつは人間の皮を被った単細胞生物に過ぎませんわ!!」
国王「悪かったな、単細胞で」
マリア「国王はまだ幼いから仕方がありませんわ。これからです、これから」
イナカ「昔おばあちゃんがコイって食べられるって言ってたんですけど、本当ですか?」
マリア「イナカさん、あなたそれでも花の16歳?」
国王「しかし、マリアの言うことも最もだ。皆も恋した経験あるだろう?」
クルス「まぁ、そうですね。最終的にはいつも振られますけど」
サンダー「恋人はいないけど…嫁なら30人くらい…」
大臣「私はアイドルのイザナギちゃん一筋ですぞ!!」
マリア「…ここのメンバーってまともな人が少ないわね」
国王「うーん…わたしも恋には興味はないが、エロいことなら興味深々だぞ」
イナカ「うわっ、私の祖国の国王がゲスい」
大臣「そうですな、エロいことなら大歓迎ですな」
サンダー「うんうん」
クルス「そりゃあ、男として当然ですね」
イナカ「うわっ、私の祖国の官僚がゲスい」
マリア「エロいのはなにも男だけではありませんわ。一度男の味を知った女も同じくらいエロいですわ」
イナカ「あれ?。これって私が少数派なの?」
結局…
A子「大塚君、一緒に帰ろ?」
大塚「う、うん」
大塚君と付き合い始めて一週間くらいが立ちました。
あれから一緒に下校したりしてるけど、大塚君は全然話をしてくれません。
でもそれでもいいの、だってあの大塚君なんだから。
無口でクールな大塚君もかっこいいから。
大塚「あ、あの…A子」
A子「な、なに?。大塚君」
大塚君は振り返り、A子を真っ直ぐな瞳で見つめる。
放課後の西日に照らされた大塚君を見つめ、A子は胸をときめかせながら返事を待った。
大塚「オッパイ、見せてくれないか?」
ニッコリと、爽やかな笑顔を浮かべA子に想いを伝えたいつもよりも大塚君は輝いて見えた。
いくら下賎な言葉であろうが、大塚君が口にすれば、それは英国紳士の愛の言葉に劣らないものになる。
河川敷に流れる風が無言のまま立ち尽くす二人を祝福するかのように包み込む。
青春を絵に描くとしたら、きっと西日に照らされ、光り輝くこの小さな二人のラバーズになるのだろう。
そんなことを彷彿とさせるこの風景こそ、きっと愛なのだ。
それはそうと、大塚君はこの日の翌日に振られたそうだ。
イナカ「ほんといつもゴメンね!大塚君!!」