悩みは尽きぬ、死ぬまでは
弐
私の名はスミレ。
1年前に故郷のスミノ村を出て、この城下町にやって来た。
最初の頃は田舎者田舎者とバカにされ、誰にも見向きもされなかったが、血反吐を吐くような努力の結果…いま、私は戦術参謀官としてこの王国中央会議に出席し、国王の前に座っている。
国王「それでは今回は『上手な遅刻の言い訳』について話し合いたいと思う」
今日もショタ国王は深刻な面持ちで口を開いた。
先日の『ねぇ、ちゃんと風呂入ってる?』に続き、前回は『赤信号の上手な渡り方』…そして今回は…
イナカ「あの、それはいまこの場で話し合うべきことなのですか?」
国王「大臣」
大臣「はは、ただいま」
ショタ国王はまたかといった表情を浮かべ、大臣を一瞥して言った。
大臣「現在、我が国の国民の遅刻したときの言い訳の90%は『電車が遅れたから』が占めております。ちなみに、現在このエルム王国に電車、鉄道と呼ばれる交通機関は一切機能しておりません」
イナカ「それは国民の90%がアホと解釈してよろしいのですか?」
国王「これは国として由々しき事態である。遅刻するのはもちろんよろしいことではないが、言い訳をするにしても酷すぎる。だから国民に代わっていまこの場で我々がまともな言い訳を考える必要があるのだ」
イナカ(なんでこの国が帝国に支配されていないのだろうか?)
国王「ちなみに今回もこの議会の結果を大塚君に実戦してもらうとする」
イナカ「大塚君忙しいな…」
国王「そういうわけで、なにかいい言い訳はないか?」
クルス「親族の急病などはいかかでしょうか?」
国王「ふむ、確かに親や子供に何かあったから遅刻したのを責める者はそういないだろう。しかし、その言い訳は余計な心配されるし、何度も使うと怪しまれる言い訳だからな」
マリア「じゃあ、そもそも遅刻させないようにすればいいんじゃないですか?。例えば、遅刻してはいけない法律を作って、違反したらギロチン☆とか」
国王「お前に任せてたらそのうち国民が絶えそうだな」
イナカ「私はマリアさんの意見に賛成です。そもそも遅刻をさせないような国づくりを心がけるべきです」
国王「お前もギロチン派なのか…」
イナカ「違います。鉄道、高速道路といった交通機関の発達。通信技術の向上。自転車、自動車の普及。これだけでもかなり遅刻は減ると思います」
国王「ふむ。それについては既に話を進めておる。私が一番危惧しておるのはあるはずがないことを9割が理由にしている国民性だ」
クルス「一度教育機関の見直しをなされてはいかかでしょうか?」
国王「その必要もありそうだ。しかし、いまはできることを一つずつやろう。まずは良い言い訳、それを考えよう」
イナカ「やはりどんな理由があろうと、遅刻した人に非があると思います。なので私は遅刻したときはまず誠意を相手に見せる必要があると思うのです」
マリア「つまり切腹だね☆」
イナカ「違います。まずは謝罪です」
国王「どんなに非があったって謝ってしまった時点でアドバンテージは相手に移る。わざわざ相手にアドを取らせるようなことをする弱い国民に私は育てたくない」
イナカ「この国そのうちクズしかいなくなりますよ?」
国王「相手に付け入る隙を与えずに言い訳をする方法…」
マリア「じゃあ、国王、こういうのはどうでしょうか?」
場所は代わって学校
先生「大塚君、一時間目はとっくのとうに始まってるのよ?どうして遅刻したの?」
大塚「…先生、お言葉ですが、一時間目の開始はまだですよ?」
先生「なにを言ってるの?。一時間目はとっくのとうに…」
大塚「先生は数を数えるのが不得意なので、時間を間違えたんですよ。ほら、これの枚数を数えて、数を数える練習をしてください」
先生「こ、これは…札束!!。ごめんね、先生昔から数を数えるのが下手だったからね、大塚君の言うとおりこれで練習させてもらうわ。一枚、二枚…」
大塚「気をつけてくださいね、先生」
イナカ「これならまだ国民の9割がアホな方がいいです!!」