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戦乱の世に舞い降りた全人類が抱えていた議題


3年前、当時リニア大陸の東に位置するバストロア帝国は突如として全世界に向けて宣戦布告した。


バストロア帝国の有する軍事力は凄まじく、瞬く間に隣国を征服していった。


自体を重くみた他国は、当時世界一の大国であったブームラン帝国を中心に連合軍を作り、バストロア帝国に迎え撃った。


しかし、連合軍は敗れ、今や全世界の8割はバストロア帝国によって支配された。


そしてここはバストロア帝国の真横に位置する小さな国、エルム。


バストロア帝国の真横にありながら、今だにバストロア帝国に征服されていない国である。


いまその国の城で会議が開かれていた。


重々しい空気に包まれるその部屋で、いま、国王が口を開く。


国王「では、小学生の間で流行っている『ねぇ、ちゃんと風呂入ってる?』の正しいかわし方を決めようと思う」


エルム王国の前国王はまだ幼い一人息子を残し、この世を去った。


残された息子は王位を継ぎ、若干7歳で国王となった。


そして、現在10歳のエド国王は、通称、ショタ国王と呼ばれている。


国王「なにかいいアイデアがあるやつはいないか?」


「あ、あの…」


静まり返った空間で、一人の女性が手を挙げる。


国王「そなた…見ない顔だな、名をなんという?」


スミレ「はい、お初にお目にかかります。わたしはこの度、戦術参謀官に任命しました、スミノ村出身のスミレと申します」


国王「大臣、彼女は?」


大臣「彼女は田舎のスミノ村から突如現れ、若干16歳の身なりで戦術参謀官を襲名した若き天才と呼ばれている才女です」


国王「ほう。それで…その…名をなんといったか…もうめんどくさいからイナカと呼ばことにしよう。なにか意見があるのか?」


イナカ「田舎…。その…『ねぇ、ちゃんと風呂入ってる?』というのは…」


国王「現在初等学校で流行っている言葉遊びだ。はいと答えたら『姉ちゃんと風呂入ってるに入っている』ムッツリと解釈され、いいえと答えると風呂に入っていない不潔者の扱いを受ける。どちらを答えようが悪いように扱われる不毛な争いだ」


大臣「派生技として『理科、ちゃんとやってる?』などがあります」


イナカ「いえ、そうではなくてですね。厳正なる王国中央会議の場でそのような議題を話し合うのはどうかと…」


国王「ふむ、イナカの言うことももっともだ。大臣、説明してやれ」


大臣「はい。現在、我が国の初級学校で流行っている『ねぇ、ちゃんと風呂入ってる?』という質問によるイジメが多発しております。これによって我が国の小学生の8割が家に引きこもり不登校の状態に追いやられてます」


イナカ「小学生メンタル弱!!」


大臣「このままでは我が国の教育が遅れてしまう。そこで自体を重く見た我々は今回、このような議会を開くことになったのだ」


国王「なにを隠そう、私のクラスメートの大塚君もこのイジメにあい、ひどく傷付いている」


イナカ「誰だよ、大塚君」


国王「まぁ、そういうわけだ。なにかアイデアがあるものはいないか?。マリアはなにかアイデアはないか?」


マリア「え?わたしですか?。えーっとですね…じゃあ『ねぇ、ちゃんと風呂入ってる?』と聞いてはいけない法律を作るのはどうですか?。もし法律違反したら、軽く罰金…もしくは一族皆殺しにするとか☆」


イナカ(この人ヤバイ人だ)


国王「ふむ、法律自体は悪くない考えだ。クルスはなにかあるか?」


クルス「そうですね。はいかいいえを答える前に『そういうお前はどうなんだよ?』と聞き返すのが無難かと」


国王「ふむ、悪くないアイデアだ。だがそれは小学生同士のヒエラルキーを考慮すると、最終的に弱いものが姉ちゃんと風呂入ることになるのだ」


クルス「難しいですね。もう聞かれたら殺すしかないですね」


イナカ「ぶっそうな人多いな、ここ」


国王「うーむ…イナカはなにかアイデアはないか?」


イナカ「えーっと…そもそも姉ちゃんと風呂入ってるってそんなにダメなことなんですか?」


国王「ムッツリと思われることは小学生にはキツイものだ。そなたも小学生のときに同級生の周りでこういうのなかったか?」


イナカ「私の村に同級生がいませんでした」


国王 大臣 クルス マリア「………」


イナカ「そのかわいそうな人を見る目をやめてもらえませんか!?」


国王「まぁ、友達がいなくても立派に生きていけるさ」


イナカ「友達いましたからね!!近所のキクコおばあちゃんとか!カブトムシのカブト太郎とか!!」


国王 大臣 クルス マリア「………」


イナカ「だからやめろ!!」


国王「まぁ、とにかく…アイデアはないか?」


イナカ「国王も学校に通われてるのですよね?国王はその質問をされたときにどうされてるのですか?」


国王「わたしか?。リアルヒエラルキーの際頂点の私に喧嘩を振るアホはいないし、仮にいたとしても姉のいない私にそのような質問を投げかけるということは王族の家族構成も把握できていない愚かな反逆者として牢にぶち込む」


イナカ「そ、そうですか…」


国王「むしろ私は姉ちゃんと風呂入りてぇと高らかに宣言する」


大臣「国王」


国王「冗談だ、半分は」


大臣「気持ちはわかりますが、議会では抑えましょう」


イナカ「ダメだ、この国」


国王「それで、なにかアイデアは?」


イナカ「その前にですね、なにか良案が出た場合、それをどのようにして実戦するのですか?」


国王「ふむ、まずは無難に大塚君に実戦してもらおうと思う」


イナカ「この国王の大塚押しはなんだ?」


国王「大塚君バカにすんじゃねえよ」


こうして、王国の厳正なる議会で話し合った結果を大塚君に実戦してもらった。


いじめっ子「大塚、『ねぇ、ちゃんと風呂入ってる?』」


大塚「うん、入ってたよ」


いじめっ子「わあ、こいつまだ姉ちゃんと風呂入ってるんだって!!」


大塚「…ぐすっ、ぐすっ」


いじめっ子「こいつ泣き出したぞ」


大塚「あんなに優しかった姉ちゃんが…どうして…ぐすっ。あの日も一緒にお風呂入ろうって約束したのに…なんで帰って来なかったんだよ!!。どうして…どうして姉ちゃん死んじゃったんだよ!!。さみしいよ、会いたいよ…。あぁ、神様…哀れな私の…だった一つのささやかな願いを聞いてもらえるというのなら…どうか…どうか…もう一度だけ…姉ちゃんと一緒にお風呂に入らせてください…」


教室は凍りついた空気に包まれ、周りの冷たい視線に耐えきれなくなったいじめっ子は、それ以来家に引きこもり、不登校になったという。


イナカ「やっぱ小学生メンタル弱いな!!」


この解決方法を公表した結果、瞬く間にイジメはなくなり、引きこもっていた生徒の多くが学校に登校しだしたという。


その代わりに、今度は冷たい視線に耐えきれなくなったいじめっ子の不登校が相次いだ。


国王「この度、議会に集まってもらったのは他でもない。冷たい視線に耐えきれなくなったいじめっ子の不登校をどう解決するかを話し合いたい」


イナカ「不毛な争いだと思います」


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