幸せな時
「いやーやっぱりお祭りはテンションあがるー。」
トウヤは手をバタバタさせながら言った。
「トウヤ。そんな騒ぐとお面が落ちるわよ
。」
ナツカが言った。
年に一度に行われるこの祭りは必ずお面をつけなければならないという伝統がある。
「あの、お面もらってしまってもよろしかったのでしょうか?」
ルリが言った。
ルリ以外の僕たち4人は毎年この祭りに参加しているのでMyお面を持っているが、ルリは初めてだったので、僕は家に余っているお面をあげたのだった。
「いいよ。家で余っていたものだから。」
僕は言った。
「ありがとうございます。」
と微笑みながらルリは言った。
「なあなあ、射的行こうぜー!」
トウヤがはしゃぎながら射的の店の
ある方向に走った。
「こらっ、ちょっと待ちなさい‼︎」
「兄さんみんなとはぐれるから…」
ナツカとユウヤが止めに走った。
がトウヤの姿は人ごみで見えない。
みんなでトウヤを探しに走ったのだが
「あっ。」
ルリの履いていた鼻緒が切れた。
それから転けて手に擦り傷ができていた。
「大丈夫⁈」
「大丈夫です。すみません。」
謝っているルリの足元を見ると切れた鼻緒の部分が赤く腫れていた。
どうやら走ったため靴擦れをおこしたらしい。
「ユウヤ、ナツカ‼︎ルリが転んだっ!ちょっと待っ…」
2人共気づかなかったのかそこには居らずトウヤを追いかけているようだ。
「迷子になってしまったな…」
そう言ってルリを見るとまだ座りこんでいる。
ルリは裾をあげて足首を見せた。
「足を捻挫してしまって…動けないんです」
足首が赤く腫れ上がっている。
手に擦り傷、足に捻挫と靴擦れというドンマイな状況だ。
そういえば祭りの本部に救護テントがあったな。
そこに連れていけば…
どうやって連れて行こう?
僕がまず1人で行っておじさんを呼ぶか…
いやでも、女の子1人ここに置いていくのもちょっとなぁー。
僕は思いついた。
実行するには勇気がいるがこの際仕方ないだろう。
そう思ってルリに話しかけた。
「祭りの本部に救護テントがあるからさ。僕がそこまでおぶっていくよ。」
えっ、という顔をルリはしたが、それから
「ありがとうございます。重いと思いますがお願いします。」
恥ずかしがりながら言った。
そこから僕はルリをおぶった。
ルリからのいい匂いが漂ってきた。
そして彼女の吐息が僕ね頬にかかった。
心臓の音が伝わってくる。
ドクン、ドクン
いつの間にか僕はドキドキしていた。
なにをドキドキしているんだ僕!
彼女は昨日会ったばかりだはぞ
本部まで距離はそう長くはないのに、この時だけは長く感じた。
ルリが手当てを受けている間にぼくはユウヤに連絡をいれた。
ユウヤがきた。
「すみません。兄さんがはしゃいでしまうから… あっ、今ナツカが兄さんに説教しています。」
ユウヤはルリに謝った後、僕に今の状況を伝えた。
その後トウヤとナツカが到着してみんなで話しあった結果、ルリが怪我をしたのでみんな帰ることにした。
あの祭り以降僕はルリの事を目で追うようになった。
恋というものだろうか。