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6月休日のボランティア

 6月休日、6月には連休がない月だ。昨日の天気予報によると気象庁は梅雨入りを宣言したらしい。雨の続く梅雨の季節が憂鬱と聞くが僕としては梅雨の雨よりも6月中に連休がないことが憂鬱である。そんな6月の某日、放課後の時間に僕は進路指導部の前にいた。6月4週目の土日はバイトのシフトが入っていなかったのだ。僕としては土曜日か日曜日のどちらか働いていないと気がすまないのでこの週に短期バイトがないか探しに来たというわけである。

「ホントあんたは勤労なことね、前回の短期バイトはえらい目にあったというのに」

一応千佳が仕事探しに付き合ってくれた。一応。

「まあ仕事にはそんな時も・・・ある」

しかし僕は勝手に工場以外のバイトを探していた。しかしながら短期バイトはどうしても工場が多くバイト先はなかなか探し出せない。

「?」

なぜだろう、背中から視線を感じる。千佳は真横にいるし誰だろうと気になって後ろを振り向くと・・・

「こんにちは進くん、その横の方は初めてかな?」

白沢先輩だった。どうやら彼女は何らかのオーラを放っているようだ。生徒副会長ともなると大物オーラが漂うものなのだろうか。

「だれ?」

「生徒副会長の白沢先輩だよ」

そういえば千佳は白沢先輩に会ったことがなかったのだった。

「こんにちは、白沢姫梨です」

「あ、玉瀬千佳です」

無事に自己紹介が済んだ。白沢先輩は人の名前は絶対に忘れない。きっと千佳の名前も覚えてくれるだろう。

「で、また短期バイト?前回の”アレ”はどうだったの?」

前回の“アレ”とはあんまん工場のことだろう。ダメだ、あんなことがあった後だと何も言えない。「アハハ」としか言えなかった。

「進はしばらく工場に行きたくないだそうです」

「ちょ、千佳!」

僕の本音を千佳が代弁してくれた。代弁してしまった。白沢先輩の前では強がってみたい僕としてはいい迷惑である。機動を修正しようと思ったが既に白沢先輩が「まあしょうがないよねー」みたいな事を表情だけで僕に伝えていたので軌道修正は不可能と判断しこのままにしておくとした。僕の面子丸つぶれである。

「仲がいいところ悪いけど進くん、たまにはバイト以外で働くのはどう?」

「バイト以外で働く?」

頭にハテナが浮かんでいる僕に白沢先輩は掲示板に貼ってあるチラシを剥がしとることで答える。そのチラシはボランティア募集の張り紙だ。ここの掲示板にはバイト以外にボランティアの張り紙も貼ってある。

「チャリティバザー?」

ボランティアの内容はチャリティバザーだった。

「募集をかけたのはいいけど今のところ私しか参加者がいなくて・・・」

「絶賛募集中というわけね」

僕に見せたチラシではあるが千佳までチラシを覗き込んできた。

「別に絶対に行かなければいけないということではないのだけど人数は欲しいのよ・・・」

「白沢先輩!それ報酬出ますか!」

「そんなわけないでしょ!ね、姫梨先輩」

僕のボケ(ボケたつもりはない)に千佳がチョップでツッコミ。僕の目的の都合上、報酬が出なければやる気が出ない。毎月の給料日が楽しみでしょうがない毎日を送っているのだ。報酬は欲しい。

「でないことはないけど・・・」

「うっそぉ!」

報酬は出るという白沢先輩は斜め上を2秒くらい注目したあと僕の方を向いて

「“ありがとう”という言葉かな?あと、お弁当と飲み物は貰えるよ」

事実上弁当と飲み物だけだった。僕は葛藤する。この報酬でこのボランティアを引き受けていいのだろうか、いつもやっているバイトに比べれば報酬は天と地の差である。そもそもあくまでボランティアなので報酬を期待する方が馬鹿なのだが僕としては譲れない。

「姫梨先輩、あたしも行っていいですか?」

千佳が右手をでかでかと挙げる。

「是非!」

なんだとー!あの千佳が体を動かすだと!なんだ、何が起きている!明日は雪か!?

「ほら進!」

千佳に肘をグイグイやられ・・・

「僕もやります・・・」

僕も流れで参加することになった。千佳によって参加というあたりが気に食わない。別にボランティアはいいことだし否定するわけではないけど気に食わない。

「ありがとう進くん!」

白沢先輩の天使スマイルを拝めたのでいいだろう。これだけで報酬に値する。なんか報酬の前払いみたいでやる気が出てきた。ボランティアを終えた暁には更なる笑顔が待っていることであろう。




 その日もミハラ薬品松野宮店でバイトだった。白沢先輩曰く人数は多ければ多いほどいいということで僕はボランティアの人員を集めるために早速行動に移る。

「そういうわけで六倉さん、どうでしょう?」

「ボランティアですか・・・」

六倉さんは日程を確認している。その日は幸いにもシフトには入っていなかった。

「何も予定はないですしいいですよ」

「よっしゃ!」

パーティメンバーがひとり増えた(嬉しげなファンファーレを脳内再生)

「といのも以前にも言ったように私は奨学金で通っているのでいろいろ報告しないといけないのです」

「そうなの?」

奨学生はいろいろ大変そうだった。六倉さんも色々苦労している。

「毎年家族の収入と学園活動について書かないといけないのです」

「うへぇ、大変そうだ」

「年末は書類地獄ですよ・・・」

まだその手の書類は書いていないのだろうがのちに来るであろう書類地獄に(わざと)震えていた。僕だってそんな書類地獄はごめんだ。たぶん白沢先輩とかは得意だろうな、と思いつつ僕は売り場に出ることにした。




 というわけでやってきました週末日曜日、ボランティアの日。会場は地元の自然公園だ。自然公園だけあって緑がたくさんある公園、その中の広い広場(だから広場だ)があるのでそこでバザーを行うことになった。まだ陳列が終わっているわけではないが見た感じ品揃えは・・・まあまあというところだ。ちなみに僕は千佳と一緒に集合時間30分前には到着していた。早めの行動である。

「進、そういえば大地は?」

会場に着くなり千佳は僕の進路を妨害してきた。訪ねてきた内容は大地の安否であって・・・

「あ・・・」

僕は1文字で答えた。

「何が“あ”よ・・・」

ちょっと前に大地も誘おうみたいな話をしたのだがすっかり忘れていた。まあ多分だけど誘っても部活で来れないだろう、多分・・・

「忘れましたすいません」

「別に居なくてもいいけど誘うなら誘いなさいよ・・・」

“居なくてもいいけど”酷いことをさらりと千佳は言ってのける。きっと今頃大地はくしゃみをしていることだろう。


集合時間15分前に白沢先輩が到着、すぐさま僕と千佳の姿を見つけてくれた。

「あ、やっぱり早めに来ていた」

さすが白沢先輩、僕の行動は想定済みである。

「姫璃先輩だ!」

「おはようございます」

いつもとは違って私服姿の白沢先輩、膝までのレーススカートに薄手の上着、ふわふわなイメージのある白沢先輩にはぴったりの服装だ。

「たしか後ひとり来るんだよね、確か“ろくくら”さん?」

「むつです、六倉」

書類でしか会っていない白沢先輩は六倉さんの名前を思いっきり読み間違っていた。確かに珍しい苗字だし読みにくいもんな。

「私も初めて会うだよねー、バイト先の知り合いなんだっけ?」

「ああ、六倉香苗っていう娘だ」

「香苗ちゃんねぇ・・・」

2人は初対面となる六倉さんの話題に必然となった。しかしどんな娘と言われても別に千佳のように付き合いが長いわけでもなければ白沢先輩のように物覚えがいいわけでもない。とりあえず素直でいい子でありバイトではとても助かっているということは伝えておいた。


集合時間10分前に話題の中心だった六倉さんの姿が見えた。僕の姿を探しているようなので声と共に頭より高く手を挙げて自分の存在をアピールする。30秒後に六倉さんは気づいてくれた。気づいてくれてよかった、これ以上手を挙げていると血の流れがおかしいことになりそうだった。

「香苗ちゃーん!愛してる!」

「ふぇへえ!?なんですか、なんですか!?」

玉瀬千佳、初対面の六倉さんに容赦しない。よくまあ初対面の人に抱きつけるものだ。これは女子の特権なのだろうか。しかし同じ女子である白沢先輩はニコニコとその様子を見ていただけだった。


六倉さんの温もりに飽きた千佳はようやく六倉さんを解放する。

「お、遅れました、六倉香苗です」

名乗らなくても2人は知っていると思う。

「大丈夫よー、まだ時間あるし」

白沢先輩が僕と千佳が早すぎると言いたげな目をしていたが僕は気にしないことにしよう。何はともあれ無事にメンバーが揃った。

「それでなにをやるのですか?」

話の本題に入ろう、今回のボランティアはバザーの手伝いだ。

「まずはテントの設営ね。進くん、任せてもらえるかしら?」

「了解しました」

男の見せ所だ、僕はわざわざ腕まくりをしてやる気を見せた。

「この猛アピールは見なかったことにしよう」

千佳よ、そこまでして僕を全否定したいか。たまには褒めてもらいたいところだ。

「まぁともかく、その間に私たちは商品の仕分けや陳列の手伝いをよろしく」

「わかりました」

六倉さんは丁寧にお辞儀をして答えた。僕や店長とは少し違う態度、若干他人行儀なところを見ると六倉さんの人見知りは若干治っていないらしい。まぁだいぶ治っているようだから上出来か。


男である僕はテント設営のため一時的に千佳たち女性陣とは別行動だ。そういえば僕はテント設営をしたことがない、今まで運動会とかもテント設営みたいな役割をしたことがなかった。

「おじさん、どうすれば・・・」

テント自体は昨日のうちに半分位組み立ててあった。後は足を上げてしまうだけだ。

「てなわけでやること自体は簡単だ」

実際にやることは簡単だった。「一斉のせっ」の掛け声にあわせて4人がかりでテントを持ち上げてそのあいだに足を固定する。事前に組み立てていただけあって楽だったがテントはそれなりの数があったので時間はかかった。事前に組み立てていた人達に感謝である。


僕が再び3人と合流するときには品揃えの方も終わっていたようだ。

「それじゃあ後は店番だね」

「いつもやっていることです」

「僕もだ、バイトの経験が生かせる!」

ミハラ薬品組は笑顔満載のトラック状態だ。僕個人的には六倉さんとハイタッチをしたいところだが千佳あたりにセクハラ呼ばわりされるのが目に見えているのでやめておいた。

 チャリティバザーがついにスタート、僕らはある1ブロックの店番だ。

「店番はやったことありますけどバイトとは全然違いますね」

「そうなの?」

開始して間もない頃に六倉さんがポツリとつぶやきそれに千佳が反応した。

「まぁ屋内と屋外の違いもあるし売っているものも違うし・・・何より雰囲気が違うな」

「進に回答を求めていない」

「おぅ・・・」

あれ、なんでだろう?いつもより千佳の反応がドライに感じる。そこに売ってある加湿器で湿度を上げれば千佳の反応も潤うようになるだろうか・・・

「あたしは香苗ちゃんとしゃべりたいのー」

どうやら千佳は六倉さんが気に入ったようだ。さっきから常に隣にいるようにしているし・・・六倉さんはどう思っているのだろうか?

「仲良しはいいことじゃないかしら?」

どこかに行っていた白沢先輩が両手にスーパー袋を下げて戻ってきた。袋の中からはいい匂い、お弁当のようだ。500mlのペットボトルに入った緑茶もある。

「これ、お昼ご飯ね。お昼になったら交代で食べましょ」

「あ、すいません。僕が行ったほうが良かったですか?」

お弁当4人分とお茶でも結構な荷物であることに変わりはない。僕はジャントルマンを目指すものとして(今目指すことにした)失態もいいところだ。しかしながらさすが白沢先輩だ「いいのよ、私が代表だし」とテントの隅にお弁当をおいた。


「ああ、香苗ちゃんは蟹座なんだ」

「はい、7月6日生まれです。今日の運勢はまずまずでした」

いつものバイトと根本的に違うところの一つに無駄話が多いというところがある。これは千佳がいるというのもあるのかもしれないがバイトとは違って働いているというより手伝っているという感覚が近いからなのかもしれない。無駄話というと聞こえは悪いかもしれないが人と親睦を深めることができるのもボランティアの意気込みだろう。

「あたしは魚座だけど・・・今日最下位で・・・」

魚座が最下位?ということは・・・

「俺もかよ!?」

「そうね、巻き添えね」

僕は3月9日生まれで千佳は3月10日生まれだ。一日違いの誕生日はともに魚座、運勢共同体である。僕は普段占いを見ているわけではないし気にしているわけでもないが最下位と聞くと凹むものだ。さっきは気にしていないと言ったのに占い気にしているじゃんというツッコミはここではNGでお願いします。

「姫梨先輩は何座ですか?」

星座占いの流れになったので白沢先輩にもそのまま聞くことになった。

「え、私?私は6月19日生まれのふたご座だけど・・・」

あ、地味に誕生日が過ぎている。お祝いしたかったな・・・

「あぁ、誕生日過ぎたんですね。遅くなりましたがおめでとうございます」

お祝いしたかったので今更だけどお祝いすることにした。

「いいのよ進くん、別に・・・」

「それで今日の運勢はどうだったのですか?」

占いの話題に夢中な千佳は誕生日よりもそれに付随する星座占いに焦点を絞っていた。ちょっとは祝ってやれよ・・・

「えっと・・・普段見ていないから・・・」

あら意外だった。女の子なら気にするものだと思っていたのだが白沢先輩は無関心のようだった。ちょっと残念。ちなみに白沢先輩の運勢が気になったのか千佳は携帯で調べ始めた。ふたご座の運勢は10位、微妙だった。調べない方が綺麗な終わり方だったと思う。

そんなこんなでたまに来るお客さんを相手しながら午前は過ぎていった。


 2人ずつ交代でお昼休みを取った。組み合わせは最初に千佳と六倉さん、千佳たっての希望で六倉さんとお昼を食べることにしたのだ。はじめは戸惑っていた六倉さんも弁当を食べているうちに千佳と打ち解けたようだ。まあ、千佳には色々と感謝だ。後から食事をとった僕と白沢先輩の話のタネは2人に関することだった。

「あの・・・白沢先輩」

食事を終えて僕は早々にあることが気になった。

「どうしたの?」

「イベントにしては人が少ないような気がするのですが・・・」

平日ならともかく今日は休日だ。場所も悪くはない。それなのにどうもまばらな人気だったのがどうしても気になっていた。チャリティーだが商売あがったりである。

「実を言うと別の会場でもイベントをやっていて・・・」

「そっちに取られていると・・・」

休日はイベントを行う上でとてもいい日ではあるがそれは他のイベントにとっても同じことだった。

「そっちはステージがあって出し物もあるから・・・」

あー、そりゃかなわないわー。

「何か客寄せになるものは無いのですか?」

「ステージはないけどアイテムなら確か本部のテントに」

あるのか!あるなら使おうあるものは使おう!

「探してくるねー」

頼んでもいないのに白沢先輩は本部テントに向かっていった。

「アイテムってなんだろう?」

後ろからひょっこりと千佳の顔。

「バルーンアートとかじゃないでしょうか?」

そのさらに後ろに六倉さんの顔。串団子のような構図になっている。

「バルーンアート・・・あたしできない・・・」

だろうな、千佳のことだろうから絶対にできないだろうな。

「私できますよ、プードルくらいですけど・・・」

「さすが六倉さん!頼りにしてるぜい!」

最も白沢先輩がバルーンアートを持ってくるかどうかだが・・・


 しばらく経って六倉さんが何やら布製のものを抱えて持ってきた。この時点でバルーンアートじゃないだろう。

「大体のものは他の人が持って行っちゃって・・・これしかなかったの」

「こ、これは・・・!」

メイド服・・・

「なんかこの手の作品にベタなものが来たわね・・・」

千佳、その発言はメタになってしまうからNGだ・・・投稿する際に消されていないことを祈る。

「しかしメイド服か・・・」

客寄せに誰かが着れば目立つこと間違いなしだろう。幸いにもここにはメイド服が似合いそうな女の子が3人もいる。メイド服は1着なので3人のうち誰かが着ることになるが・・・

まずは六倉さんか・・・六倉さんはストレートモードとポニーテールモードの2通りあるがどっちも似合いそうだ!切りそろえている前髪がこれまたいい!控えめな性格がいい!いける、行けるぞ!

次に白沢先輩・・・これは至高ではないか!ふわっふわの髪とメイド服との相性はこうかはばつぐんだ!メイド服は本来、ご主人様に奉仕するための作業服!白沢先輩みたいななんでもできる人間には正しく“制服”と言っても過言ではない!いける、行けるぞ!

最後に千佳・・・付き合いが長いので忘れがちだが千佳の整った顔立ちはメイド服でも衰えることはないだろう。ショートカットと長い前髪というアンバランスな髪型だが。メイド服はその髪型を超バランスに変えるだろう。安っぽい飾りのついたヘアピンもメイド服にはよく似合う。いける、行けるぞ!

そんな妄想を頭の中に繰り広げているところに白沢先輩は僕に一言。

「それじゃあ進くんよろしくね」

は・・・


10分後・・・僕はメイド服を着ていた・・・

「進・・・道を踏み外したね・・・」

「その格好で絶対にバイトに来ないでくださいね・・・」

ドン引きだ!ドン引きの有様だよ!

「あの・・・白沢先輩・・・コレ・・・」

なんで僕がメイド服を・・・?ここには女の子が3人もいるのに?

「そのメイド服、男性用なの」

男性用!?そんなものあるのか!?そういえば肩幅と胸元がピタリだなと思った・・・

 男のメイド服は効果絶大だった。来場数は相変わらずの量だがその殆どは僕たちのもとに来たのでいい結果だろう。子供に「気持ち悪い」とか、同じくらいの年の人に「罰ゲームか何かですか?」と言われたことを除けば・・・3時間の羞恥プレイを耐え切ってようやくメイド服を脱ぐことができた。白沢先輩曰く、貰ってもいいらしいが丁重にお断りした。




翌日・・・

「おはよー」

陽気な挨拶とともに大地が朝練から戻ってきた。

「ん?進・・・どうした?」

大地はやってくるなり机にブッ倒れている僕に目が入ったようだ。

「あー、昨日精神がやられたみたい」

僕の代わりに千佳が答えてくれた。メイド服を来ている最中はなんとか正気を保っていたが脱いだ途端、メイド服とともに僕の精神が持ってかれた。

「何があったんだよ・・・」

「・・・・・」

僕は喋らない、動かない。見るに見かねて千佳が再び喋ってくれた。

「メイド服をもらった」

「は?」

貰ってもいいと言ったがもちろん僕はお断りした。しかし運営の人に「あってもしょうがない」と言われてしまい結局僕が持ち帰る羽目になってしまったのだ。メイド服は今、僕のクローゼットの中にある。僕としてはこのまま永遠にクローゼットの中をさまよい続けてもらいたいところだ。


報酬があろうが無かろうが体を動かすことは大変なものである。


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