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四話




 私は万全の装備品を身につけて、愛美を連れ去ったマフィアのカジノに向かった。正面からホテルに飛び入りの客を装い、チェックインを済ませてエレベーターに向かう。一般客用のエレベーターでは最上階までは行けない。カジノだけあってセキリティも確りしているが、私は特別事故処理班のリーダーを務めているだけあって、セキリティをくぐり抜ける事は得意だ。宿を取ったホテルの一室に入ると、監視カメラに写らない特殊な防護シールドを発動させてバルコニーから外に出る。壁を歩ける特殊装置を発動させて壁を登る。たまにホテルのセキリティのセンサーが合ったが、それを避けるのも得意だ。最上階の一室につくと、窓に掛っている鍵をチェックインの時に予め、仕込んでおいたハックシステムを起動させて開ける。

 ここまで簡単に行くのは、私が特別事故処理班で特殊訓練を受けているからと、シュアが作ってくれたハックシステムが完璧だからだろう。

 中に侵入して、人がいないか確認する。この最上階の一室に人の熱反応が二つある。どうやら、そのひとつが愛美でもう一つがマフィアなのだろう。

 人がこのフロアーに居ないのなら、部屋に催眠弾を投げ込んで、二人が寝ている時に愛美を助けるのが良いかも知れない。

 部屋の様子を小型の虫型探索機を飛ばして確認してみる。


 虫型の映像から映し出されたのは、愛美がベッドの上で縛られて、茶髪の男がその隣で笑っている様子だった。男の年齢は十代後半か二十代前半。すぐさま男の正体をデータベースと照合させる。

 このロリコンやろう。十四歳の子供に何をする気だ。早く愛美を男の魔の手から助けてあげなければ。

 男の正体が判明する。この、辺りを仕切っているマフィアの孫で、二十一歳。少女趣味だとは書かれていないが、映し出される映像は、実に楽しそうに愛美の頬を撫でている。その手を愛美が噛みついた。

 やばい。こんな変態に噛みついたら倍返しにされてしまう。私は映像を見るのを止めて、愛美のいる部屋に突入する事にした。扉に掛っている鍵をハックシステムで開ける。三つ続きの一番奥の寝室にいる二人に迷わず近付く。

「動かないで」

 そう言うと同時に、何時でも催眠弾を発動できるようにしておき、銃をマフィアに向けた。目に入ったのは愛美に馬乗りになり顎を掴み、キスをしている男の姿。

「何していんのよ!? このロリコン野郎!」

 私は思わず男に向けて、銃を打ち込む。狙うのは愛美に図々しく載せている体だ。私の銃を受けた男は愛美からずり落ちる。ちなみにこの銃は電気ショックが当たるだけで、死にはしない。私はベッドからずり落ちた男に、三回続けて銃を撃った。身体がしびれて動けない男を見てから、愛美に駆け寄る。

「愛美ちゃん大丈夫!?」

「アーネ? なんなのこの人! 最低っ! 私のファーストキスが!」

 愛美を縛っていた縄を外す。だいたいこの原始的な赤い縄なに、このロリコン野郎の趣味!?

 ファーストキスが奪われたと嘆いている以外、傷はないようだ。

「……人の楽しみ中に随分無粋な事をするな」

 男はどうやら、防御シールドを張っていたようで、銃の威力が半減している。

「未成年誘拐して、悪戯するのが楽しみとは、随分と変態なこと」

 茶髪のスラリとした長身で目鼻がはっきりとしている。一見かっこよく見えるこの男だが、正体は変態ロリコン野郎だ。彼は不機嫌そうに立ち上がり、愛美を庇っている私を見る。

「堂々と侵入してきた君は誰だい?」

 男がそういいながらも侵入者を知らせるシステムを起動させていた。でもそんなモノこっちはシステム全てをハックしているので、発動しない。

「彼女の保護者よ。連れて帰らせて貰うわ」

「まぁ、いい。持って帰ればいいよ」

 やけにあっさり言うな。やっぱりこの男を気絶させて、逃げた方がいいかもしれないな。

「君、ローレンスの奥さんだろ。彼を敵に回すと親父達より恐いから、そのまま普通に帰っていい」

 ローレンスと言うのは、シュアのファミリーネームだ。シュアの名前がマフィアにまで伝わっているらしい。確かにこんなハックシステムとか作れちゃう天才だから、ある種の人達には有名な人だけれど。私も、彼とセットで覚えられているのか。公式の場所に二人で出席したりしていないのに、なんでだろう。でも、まだ結婚してないから奥さんじゃないんだけど。

 帰っていいと言うのだから、帰ろう。ここで事を大事にしても仕方がないからね。

「愛美、行くよ」

「へー。マナミって名前なのか」

 そう言えばこの変態は翻訳もされていない、言葉の通じない愛美を連れ去っていたから、名前も知らなかったようだ。愛美を連れて行こうとすると、愛美が不意に立ち止まり、振り返り止める間もなく男を拳で殴っていた。

「私の、ファーストキス代よ!」

 愛美の拳を頬に受けて男は軽くよろめく。十四歳の少女の拳なのに、結構利いているようだ。そのくらい避ければいいのに、わざと受けたのだろうか、流石変態。というか、変態男にそんなに近付いたら危ない。そのまま返してくれそうだったに、仕返ししたら帰れなくなるかもしれない。

「気の強い女は好きだ」

 男は殴られた頬嬉しそうにさする。鳥肌が立った。この真性の変態の傍にいれば危険だ。まだ男の近くに立っていた、愛美の腕を引っ張り男と距離を取る。

 愛美は中指を逆立てって、舌を出している。何のポーズだかわからないが、挑発的なポーズだ。直ぐに止めさせて、腕を引っ張り出口に向かう。

「マナミまた、会おう」

 後ろか恐ろしい言葉が聞こえてきた。愛美には外に行く時は護衛を付ける様にしよう。




本当に何事もなくホテルを出られた事に違和感を覚えつつ、陽菜が待っているシュアの家に向かう。その途中で、愛美に何が起きたのか詳しく説明してもらった。乱暴な事は特にされていないようで、ほっとする。

 シュアの家に着くと、陽菜が玄関ホールで帰りを待っていた。愛美が陽菜に飛びついて再会を喜び合っている。

「アーネ」

 低い声が聞こえてびくりと体が震える。怒っている時のシュアの声だ。

「ちょっとおいで」

「あ、でも。まだ昴を見つけていないからまた外に行かなきゃ」

「おいで」

「はい……」

 シュアに呼ばれておっかなびっくり近くに行く。

「マフィアの経営するホテルに単独でのりこむって、君、自分のシステム能力を過信し過ぎ。俺が裏で手を回したから、そのまま帰って来られたってちゃんと分かっている?」

「やっぱり、シュアのお陰だったのね。なんか変だとは思ったのよ」

「危険な事をしたと反省している?」

「……う、ん」

 いやでも、危険な事だったとは思ったけど、私が使えるシステムが、一介のマフィアたちと同じレベルだとは思えない。ちゃんと、上手くやれる自信はあった。

「アーネの行動を、再生して一から問題点を上げないとだめかい?」

 陽菜に持たせていた、映像装置をシュアも一緒に見ていたのだろう。

「ごめんなさい。単独行動はもうしないようにします」

 頭を下げて謝る。


「スバルを探すのには俺もついて行く事にする。あの二人はここで留守番させればいい」

「施設に戻せとは言わないのね」

「アーネが施設じゃなく俺の所に連れて来た人を、追い出すわけないだろ」

「有難う」

 さすが、シュア私の気持ちを良く分かってくれている。

「でも、ここは危険なものが色々ある屋敷だから、二人には俺達が戻るまで大人しくここにいる様に良く言い聞かせるんだよ」

「うん。ありがとう」

 私は愛美と陽菜の所に戻り、二人を客室に連れて行く。今日一日、色々な事があり大変だったと思う。昴の事は私達に任せて、先に寝ていてもいいし、休んでいて欲しいと頼んだ。また、陽菜には私達の行動が映る映像装置を渡しているので、気になるなら見ていてもいいと言った。

 でもこの屋敷はシュアの実験道具とか危険なものがあるので、部屋から出ないように頼む。

 部屋に鍵を掛ける事もできるけれど、監禁されていると言われるのが嫌なので、愛美たちの部屋ではなく危険な部屋に入れない様に鍵を掛けた。





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