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二話



 第十二空間歪研究室から、まだ可笑しなこと言っている三人を連れて比較的小さな休憩室に連れて行く。ここは二十人程が休憩できる部屋で淡い青色の壁紙、丸いテーブルが四つ同じ様な淡い青色の丸椅子が置いてある。

 今この部屋にいるのは私と、渡りをしてきた少年たち三人だ。一班の精鋭たちはモニター室で待機して貰っている。少年たちが必要以上に警戒するように無い為だ。


「改めて、貴方達の今後について話をしたいと思います。私は特別事故処理班のリーダーで、緊急事態が起きたらその処理をするのが役目よ」

「召喚しておいて処理するのか?」

「まず。そこから間違っている。召喚なんてしていない。時空の歪に落ちたあなたたちを私達は救いだしたと思って」

「でも、こうやって、監禁して私達をどうにか、するつもりなんでしょう?」

「監禁しているつもりはないけど、貴方達はまだ子供でしょう。そのドームの大人が保護するのは当然なことだと思うわ」

「ねぇ、貴女貴族?」

「貴族社会ではないわ。上流階級はあるけれど、貴族は存在していないわ」

 垂れ目の少女がつまらなそうな顔をしている。

「まず、自己紹介からしましょう。私の事はアーネと呼んでくれていいわ。少年からどうぞ」

 癖のある波打つ黒髪の少年の方を見る。

「俺は佐藤昴さとう すばる中学二年生」

 警戒するように私を見ている。そんなに警戒しなくても、取って食ったりしません。

 隣に座っている、大きな瞳の少女が続く。黒髪は肩にかかる程の長さで、同じ様に私を警戒している。

「私は、久賀愛美くが まなみ14歳」

元谷陽菜もとやひな私達三人、夏休みにおじいちゃんちに帰省していた従兄妹なのよ。本当に同じ時間同じ場所に返してくれるの?」

 最後に少し垂れ目で栗色の髪をボブショートにしている少女が言う。

「ええ。それは安心して、必ず帰れるようにするから」

「本当は俺達になにをさせたいんだ?」

 何度否定しても信じてくれない様子だが、本当に迷い込んだだけの子達なんだけれど、どうしたものか。軽く息を吐く。

「お姉さん何歳?」

 愛美が私を観察するように聞く。

「二十八歳よ」

「一回りも違う。俺のハーレム要員ではないな……」

 ハーレム要員?

「ねぇ、私達七日間はここにいなきゃいけないんでしょ? なら住む場所は? 食事はどうなるの? お風呂とかある? 働けって言うの? 保障してくれるんでしょ?」

 愛美が次々聞いてくる。

「ある程度は保障するわ。未成年が保護される施設があるから、七日間はそこで生活をして貰う事になる」

「施設? お城じゃないの!?」

 お城?

「もう少ししたら、施設の管理者が来ると思うから、それまで簡単にここの説明をしましょう」

 私は、三人にこの場所の説明を始めた。


 ここは世界に百八十二ケのドームと言われる居住区が存在する。科学と魔法が融合した世界だ。ドームの広さはその場所によって違うが、一つを都市と考えてもらうと分かりやすいと思う。国という意識は、遥か昔あったらしいが、世界戦争を行った結果、人が住める場所がドームだけになってしまった結果、なくなった。国の名残は、ドームの名前として残っている。

 各ドームは最高管理者という役職があり四年の任期で、市民から選ばれ政治がおこなわれている。

 王族は居ないのかという質問が上がった。昔居た。でも世界戦争の混乱の中、王侯貴族という概念がなくなったと言われている。もちろん権力者や上流階級というモノは存在する。二十歳までの学校教育が義務付けられているドームは、実力社会だ。いくら、親が権力者でも試験を合格して資格を手に入れなければ、システムを使えないし、データを入手できない仕組みになっている。


「科学と魔法が融合した世界だなんて……。このスマホ使って尊敬されるチート計画が」

「携帯端末ね。此方でそれを与って分析してもいいかしら?」

 昴は取り出していた携帯端末を握りしめて私を睨む。

「嫌だ。壊されたくない。それにこれは日本との大切な繋がりなんだ。一分たりとも渡したくない」

「一分も分析にからない。そこに置いてくれるだけで分析は一瞬で出来るわ」

 テーブルを指差す。本当に分析なんて一瞬で出来てしまうんだけど、警戒している昴は嫌そうな顔をしている。

「タブレット出現」

 私が手のひらを上に向けて言うと、何もない空間から手の平程の大きさの携帯端末が出て来た。昴達三人が何もないところから出した事に驚いている。

魔法だ! とどよめいているが、私は魔法を使えない。これはブレスレットに仕舞われている、ナノマシーンで出来ている端末機械なのだ。本部のデータベースに繋がる携帯機械もあるが、これは個人的な私の携帯端末。色んな音楽や、ゲーム、映像が入っている。

 半透明のそれを昴に見せ、海や空の映像を映しだす。立体的に飛び出てくる映像は風と匂いを再現するモードにしているので、三人は興味津々に端末を見る。

「私の端末よ。これを貸すからそのスマホはテーブルの上にちょっと置いて、分析させてね」

「すげー! 風や匂いまである! 何これ!」

「凄いわね! 水しぶきが本当に画面から飛び出て来て私にかかりそう!」

「きれいね!」

 渡すと、三人は傍に来て端末を見始めた。テーブルに置かれたスマホを私はその隙にスキャンをして、昴達の技術力が何処まであるのか解析するのだ。スキャンしたデータをニ班に送り解析を指示する。


 三人が夢中になっている所、でまた説目を入れる。

「観賞モードD、ニノドーム空中から全体映像」

 私が言うと端末の映像が飛び出して、部屋中に半透明な立体映像が飛び出してくる。今いるドームを小さくして映している。ビルが小指程の大きさに映し出されているので私は、巨人になった気分だ。

「すごい」

 純粋に驚いている三人の声が聞こえて、少し三人が可愛らしく思えてくる。

「今いる研究所がここ。この隅の所よ、それで貴方達の生活空間になる施設はここ。」

「街のジオラマみたい。なんか、日本とたして変った感じがしないな。ビルが多いって感じだけど」

「そう? じゃあ、貴方達の居た世界も私達と同じ様な文明をたどっているのかもしれないわね」

「アーネの住んでいる場所は?」

 愛美が言いながら、映し出されドームを見て映像を掴もうとしている。もちろん掴めるはずもなく手は映像をすり抜ける。

「私はこの辺、三十二号線の直ぐ傍のここ」

「わぁ。豪華な邸宅だ! プールまでついてる! これホテルじゃないの?」

「私は今、居候させて貰っている家よ。ドーム建設当初からある古いお屋敷なの」

「ドームって建設何年なの?」

「ニノドームは建設四百二十二年ね」

「アーネはお嬢様なの?」

「いいえ。私は唯の居候。それより、この辺が街ね。お金が支給されたらここで服とか、必要品を買うと良いわ。若い子が好きそなのはこの辺のお店かな」

「私、施設より、アーネのお屋敷に住みたい」

 え。愛美が可愛らいし瞳を私に向けて来る。無機質な施設より遥かに華やかなお屋敷に憧れのようなモノがあるのかもしれない。

「でもこの施設、凄く色んなものが充実しているのよ。中にプールやジムもあるし、無重力空間もあるし、遊具も色々揃っているの。快適だし、楽しいわよ。個室が貰えて部屋も大きいし、ご飯も美味し。いい所なのよ」

「詳しいな」

「ここではないけれど、施設に二十歳まで居たわ。だから、施設の快適さは良く分かる」

「ふーん」

 何故か昴にじっと見つめられる。それに陽菜まで私を見てくる。なにか疑われている様な眼だ。なんだろ。

 とにかく、私が出来る簡単な説明はこんなところだろう。

 子供が危険な区間には入れない様に制限があるし、下手に恐い話をさせて、更に混乱させるのはかわいそうなのでその辺の話はしないようにする。

 この子たちは、七日間施設で衣食住に困らずに過ごせるのだから、大丈夫。

 三人を担当する保護官がくるまで、ニノドームについて他愛ない話をする。


 私がこれからする事は、この三人が無事に家に帰れるように歪研究所のスタッフに協力して、時空の歪を微調整することだ。

 今まで、私が特別事故処理班になってから二つの生物を元の場所に帰しているけれど、時空が歪んだ時と同じ条件を、数式で再現する作業は大変なのだ。




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