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九話



 特別事故処理班の緊急車両は特別仕様になっている。様々な機械がのっており遠隔装置でドームのシステムを起動させる事も出来る。

 もし、空き巣を狙った泥棒ならば侵入したからの五分が勝負だ。シュアの開発データを狙ったシステム強盗だったら十分は屋敷にいるはずだ。

 仕事場から屋敷まではどんなに飛ばしても十五分はかかる。その間に、緊急車両に入っているシステムを使い、侵入者を囲い込むのだ。

 屋敷の周囲に逃走防止のシールドを張る。これは、緊急事態のみ使う事が出来る特殊システムだ。普通の防犯システムのシールドよりも強固に出来ていて、解除するのに時間がかかるのだ。一班の人は車両で街中の監視カメラのモニターをチェックし、いつどこから侵入者が来たのか、確認している。

 シュアとも連絡を取りながら、屋敷内のシステムを管理していく。監視カメラはハックされているのか、どんなに探しても人が見当たらない。熱感知で検索しても見当たらない。おそらく、侵入者は監視カメラに映らないように温度を調節できる防御シールドを張っている。

 屋敷内に、虫型の小型カメラを放って中を確認するが、やはり写らない。そういう時、屋敷の防犯システムとして、壁から小さな分子を出し、空間に物体が存在するか確認をするのだが、それにも反応がしなかった。

 侵入者は防犯システムを熟知しているのかもしれない。だからわざと、通常の防犯システムを簡単に作動させたのだろう。

 シュアの開発データなどは元々、屋敷に持ちこんではいない。だから、盗むデータがないので平気だし、シュアは自分のパソコンにハック対策をしているので簡単にそれを突破できないはずだ。

 だから、今一番気を付けなきゃいけないのは、昴、愛美、陽菜の三人だけだ。

 アヤメからの連絡で三人は無事に監視部屋に入れている事は知っている。あれは、中からしか出る事が出来ない作りになっているので、三人は無事だろう。


 屋敷に着くまでに犯人の目星が付けられるはずなのに、全く調べられなかった。こんな事は未だかつてない。一班の尖鋭達は、苦渋の顔を浮かべシステムを再チェックしている。先に来ていた警護官と話を付ける。警護官達は周囲を包囲し、脱出できない様にしてくれていた。


 何があるか分からないので、厳重装備で私達は屋敷に突入した。

 警戒して中に入る。もう一度、屋敷全体をスキャンし、侵入者が何処にいるのか探してみる。やはり、侵入者と思しき人がいない。屋敷から出た形跡はないので、中にはいるはずだ。

 

 慎重に屋敷内を捜索する。だが、やはり侵入者を発見できなかった。逃げられたのかもしれない。この厳重に包囲された屋敷から脱出できるなど、ありえるのだろうか。


 一班の皆と警護官達と話したあと、三人の無事を確かめに行く事にした。

 アヤメに中から開けさせて、なにがなんだかわからないといった様子の三人と会う。状況をアヤメからも再度確認する。


 そこで、重大な事に気がついた。

 アヤメは人の気配を読み取り侵入者がいると判断したと言う。

 だが、人は元々存在していなかったのだ。この屋敷には幽霊が闊歩している。

 本当に、古い建物なので、本当に幽霊がしょっちゅう出るのだ。それを、侵入者とアヤメは判断したのだ。


 強盗だと思って警護官や特別事故処理班に来てもらったのに、勘違いだった。

 私がちゃんと確認しなかったのがいけなかった。アヤメに幽霊の事を話してなかった。誰も見つける事が出来なく、ピリピリしていた一班、警護官の力が抜けて、人騒がせなと言う視線が送られてくる。

 私は平謝りだ。私がアンドロイドを、良く理解していなかった所為だ。シュアも帰宅してきて状況を説明して、警護官や特別事故処理班帰って貰う。明日は始末書を書かなきゃいけないだろう。

 頭痛がしてきた。

 本当に強盗じゃなかったから、良かったと言えば良かったのだが、屋敷を捜索した時に部屋が警護官や特別事故処理班によって荒らされた。

 強盗が隠れていいないか目で確認する為に、物を退かして探したのだ。

 小火で白くなったリビングのほかに、荒らされた部屋の片づけも増えてしまった。


 荒れ果てた、屋敷を昴達は理解できない様子で、周りを見ていた。

「盗賊でも来たんだな……」

 昴が呟く。

「やだ、恐い」

「だから私達をあの部屋に入れたの?」

「盗賊は来てないんだけどね……」

 これをあらした犯人は私達だ。

「俺、戦うよ! 剣はある? 俺、剣道授業でやっているし運動神経も良いからやるよ!」

 何やら、戦う気満々の昴だ。そう言えば兄の運動神経は抜群によく、これでも、成績はいつもオール5だった。よくお母さんが、お兄ちゃんみたいに勉強できるようになろうね。て言っていた。

 あれ? 勉強が出来るのと、頭が良いは別ものかもしれない。


「戦う必要はないから」

「わ、私祈る? 巫女的な何か発する?」

 巫女的な何かって何のつもりだろう。愛美が大きな瞳を不安げに揺らしながら、それでも何か少し期待したような目で私を見る。良く分からない。

「何もしなくても大丈夫よ」

「私は、戦うのも、祈るのも無理だから大人しくしてるよ」

 陽菜が小さな手帳を持って書きながら言う。この屋敷に紙というモノは殆どない。だいたいが端末で出来るからだ。元々陽菜が手帳を持っていたらしい。

 何を書いているのか不思議に思うが、私と視線が合うと、手帳を直ぐにしまった。

「危険はないの。でも、ちょっとトラブルがあってね。もう、大丈夫だから」

 とりあえず。今日で切る所まで片付けたら、明日には清掃業者に入って貰って片付けよう。

 

「アーネ、これちょっと借りるよ」

 シュアがアヤメを見て言う。アンドロイドのシステムを整えようと思ったのだろう。私もそれは是非頼みたい。

「どうぞ」

 私が許可すると、昴がアヤメの手をとり自分の後ろに隠した。

「悪の魔法使いにアヤメを預けるなんて許可できない!」

「昴、シュアは別にアヤメに酷い事をするわけじゃないのよ」

「信用できない。また、アヤメを動かなくされたらかわいそうだ」

「動かないようになんてしないわよ。アヤメのできる事を増やせるように教えるだけだから」

 昴はそれでも信用できないと私と、シュアを睨みつける。

 これは、だめだ。一度、シュアがアヤメを緊急停止させた事を根に持たれている。

 シュアに視線で、昴が寝た後にアヤメのプログラム修正してほしいと頼む。シュアは快く承諾してくれた。

「わかったわ。シュアにアヤメを任せるのは止める。その代わり、この散らかった部屋を皆で片付けましょうか」


 夜遅くまで部屋の片づけを行い疲れた。自分達の部屋ぐらいは片付ける事が出来た。あとは明日清掃業者に来てもらい片付けよう。

 いくら普段自動清掃機がしていると言っても、倒れた本棚や、裏返しにされたベッドなどを片づけるのは自動清掃機では無理があるのだ。

 清掃代、いくらになるかしら……。破壊行為はしていないからそこまで高くないと思うけど、この屋敷無駄に広いから清掃代高そうだな。





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