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9現目『女と女の戦いは血深泥』


【猫柳構成】



その衝撃は俺の後頭部を襲った。

激しく脳を揺すり、頭痛の様に頭を痛めつけ、そのまま意識を奪っていく。


そして俺は薄れゆく意識の中で考える。

いくらお隣同士の幼馴染であっても、女性が着替えている可能性を忘れてはならないと。


それでも俺は太ももの柔らかさに至福を感じながら、ゆっくりと意識を失っていった。




━━━━━━━━━━




ぜろ君。そろそろ起きないと学校に行かないと遅刻するよ」

「う、うーん」



淑やかな柚菜の声と、俺を揺らす手によって、はっきりしない自分の意識が少しずつ鮮明になってきた。

ボヤけている視界が少しずつ晴れて、天井がクリアに見てとれる程には視力が回復する。


しかし柚菜が遅刻すると言っていたが、いったい今何時だろう。


アイフォンのスリープを解いて、時間を確認すると、画面に表示された時間は七時三十分。

身支度を短縮して朝ごはんを抜けば、何とかホームルームの本鈴五分前に到着できる時間だが、今回の場合は問題がある。

昨日に引き続き、決して柚菜に知られてはいけない事が知られてしまうかもしれないんだ。


どうすればこの危機を回避できるか考えていると、時間を表示していたアイフォンが通話を着信した。

着信音が鳴る中、確認してみると、電話は非通知設定で掛かってきていた。


なので誰から掛かってきたのかわからないのだが、俺には発信者が誰なのか、だいたい検討がついていた。

迎えに来ない俺に痺れを切らせた空条翼ご主人様だ。

非通知設定で電話してくる訳は、俺に連絡先を教えない為だ。


しかし、もしこの電話に出たら、会話内容で俺がペット……もとい、下僕である事が柚菜にバレてしまう。

それは避けなければならない。

俺はそう思い、迷わず通話終了ボタンを押して電話を切った。


悔やんでも仕方ない。

お叱りを受けるのは、柚菜と別れた後でいい。

とにかく、ばれずにすむ事だけを最優先にしなければ。



「零君、今の電話は誰から?」

「えっ、どうして電話だってわかったんだ?!」

「いつも聞いてるから分かるよ。零君の電話、メール、アラームの音は全部知ってるよ」



成る程、さすが窓越しの幼馴染。

しかしこれほど着信音やらアラーム音を知り尽くされていたら、他にも何か知られていないかと、悪寒がするな……。

早い内に設定を変えておかなければ……。


背筋にしたたかな冷たさを感じていると、再びアイフォンが鳴った。

先程と同じく、非通知の電話だ。

ご主人が掛け直してきたんだ。


「その電話、私が取っていい?」


電話を切ろうとしたが、柚菜がにっこりと笑った。

しかし目は笑っておらず、本人のどす黒いオーラが滲み出ている。


「それはちょっと……」

「問答無用」

「あっ!」


俺は断ろうとしたが、それも虚しくアイフォンは柚菜の手に渡ってしまった。

通話ボタンを押し、柚菜が電話に出てしまう。


背中に感じている冷たさが一気に大きくなった。

だらだらと額に冷や汗が流れる。


あとはもう祈るしかない。

せめてあの禁断ワードが出ない事を……。



「もしもし」

『ペットのお前が何で、待ってないの!』




……終わった。初っ端から発言したよ、禁断ワードを。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━



【焔伽構成】



《零→柚菜》



私は電話があってから零君の様子が変だと思い、直ぐにiPhoneを貸して貰い誰なのか調べようとした。


そうしたら電話先から女性の声がして、しかも『ペットのお前が何で、待ってないの』と言う第一声を聞いて心底驚いた。


え?私以外に女性の知り合いがいたのも驚いたけど、彼女がいった発言の方が気になっていた。


ペット?ペットって零君の事を言ってるの?


私はムッとしてしまい、つい反論の言葉を言ってしまった。




「零君は……ペットより可愛いもん!」


『!?』


「そこぉ!!?」



電話先の彼女が息を飲むような反応を示した。


後から零君が何か騒いでいた気がするけど、直ぐに彼女の反論に耳を傾ける。



『お前誰……?私はこの番号の持ち主に要があるんだけど』



ツーンとした態度を思わせるような声色……核心したよ!


この人、悪い人だ!零君の事だから何か悪いセールに引っ掛かって、何だかんだで主従関係にさせられたに違いない!

そうじゃなければ……趣味なら……零君の首閉めなきゃいけないし。




「!? ゆ、柚菜さん!目元が暗くなってて怖いですよ…?」


「零君は黙ってて!」


『零……?そこにいるのね、下僕!』


「……待ちなさい。貴方……いま、下僕って言った?」


『だから何?お前には関係ないでしょ』


「関係なくなんかないもん!」




私は零がバカにされてるのが、凄い不愉快な気分になりつい見ず知らずの人に怒鳴っちゃった……うぅ、私のバカ……これじゃ、零君に怖がられちゃうよ。




「……(なんだろ、いま凄い矛盾な気配を感じた)」

「お前、名前は?」


「柚菜……黛柚菜!」



ホントは名も知れない初対面の人にそこまで教える事ないと思うけど、この人には教えておくべき気がするんでフルネームを紹介する。




『私は空条翼!柚菜、あんたとはまた会いそうな気がするよ』


「私もそんな気がするよ」



私と空条さんは互いに通話終了ボタンを押して話を切り上げた。




「……俺柄みなのに、この疎外感はなに?」



『to be continued』



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