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7現目『物語は、超展開の連続な気がする』

【猫柳構成】



それから数時間後。俺は自分のベットに横たわり、今日の疲れを癒していた。


沢山の事が起こりすぎていて、自分の部屋が一番だという事を思い知らされる。

今まででこれほど自分の部屋に安心を感じる日はなかったんだ。

引きこもりの気持ちも、理解してしまいそうな程だ。


自宅には今、俺一人だった。

両親は海外に出張していて、妹は友達の家で勉強会があるらしく、そのまま泊まって帰ってこないらしい。


なのでようやく一人っきり。

与えられた安息の時を存分に楽しむ事ができる。


しかし、どうも胸騒ぎがするのは気のせいだろうか。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



【焔伽構成】



ガチャン!(玄関が激しく開かれる音)



……、ふっ、嫌な予感は的中したか。



ドドドッ!(激しく階段をかけ上がってくる音)



この休む間もなく繋がれる音の旋律は、もはや一人しかいない。


昔からの親友(正確には星野幼稚園、月組からの)付き合いだ。


銀色の髪をし、トンガリヘアーで決めている。

極めて細いまぶたをしているせいか、遠くから見ると瞑ってるように見える。


名前は(まゆずみ)竜胆(りんどう)

隣の家に住んでいて、昔からよく遊んでいた親友である。


竜胆は入って来るなり、俺の胸元におんおん泣きながら抱き着いてきた。



「おぉぉ!ゼロぉぉぉ!聞いてくれぇ~!姉ちゃんがっ、姉ちゃんがオレのHDDに録画しといたアニメ消されたんだよぉぉ!」


「は?」



一体何を言っているんだ。

竜胆の姉、つまり黛 柚菜(ゆずな)は、双子の姉と言う意味で大のドラマ好き。


柚菜と俺は竜胆と同じように、昔から一緒にいる幼なじみである。

まあ、中学入ってからは互いに距離を置くようになった為、親友とまでは言わないけど。


今回の竜胆の一件、柚菜のドラマ好きと竜胆のアニメ好きから生まれる問題で、黛家に一台しかないHDDは取り合いになるようだ。


今回は柚菜の方がドラマを録画したら、竜胆の溜めていたアニメが消されたのだろう。

アニメで要領相当取られてるみたいだし。


いつものことではあるが、アニメ要領が多くてドラマが取れないであろう柚菜が上書き保存をしたと言う、この件に関しては竜胆がもっと遠慮すべき事であるのは道理。


よって、俺は竜胆に少し注意をしてやることにした。



「あのなぁ竜胆、それはお前がわ……」


「見付けた」



その時、俺の言葉を上書きするように、静かめの甘い声が部屋を充たした。


竜胆が開けっぱなしにした部屋の扉の方を見ると、そこには腰辺りまで銀色のロングヘアーを(なび)かせて、クリッとした瞳に幼い輪郭をした可愛い顔(一般的に見て)の柚菜がいた。

ちなみに、この柚菜と竜胆はスウェーデン人の母と、日本人の父とのハーフ。

故に銀髪なのである。


北欧美人って感じだな。


柚菜ってここ何年かで一気に可愛くなったよな……。

こんな妹がいたらリア充にすらなれそうだ。


柚菜は竜胆の方を向いた。その視線にビクッと震えさせ、俺の後ろに隠れた。



「いや、俺を巻き込むなよ!?つうか男を見せろ!?」


「無理!っつか死ぬ!」


「何をした!?」


「……姉ちゃんがドラマを上書きしたから、仕返しにドラマの録画設定を消した」


「ちっさ!やることちっさ!」



相変わらずダメダメな親友であった。

昔からそうだ。


竜胆は泣き虫で弱虫で、姉恐怖症で……って、まあ、柚菜が怖いってのはある意味分かるけどな……。


ともかく、竜胆は精神が脆い奴なんだ。


それに対して柚菜は真面目で優しい。普段は。

ただし、理不尽なことを許さずそう言った場面になると強い。


見た目通りの性格に見えて見た目通りではない。

そう言ったところは、やはり双子何だなと思う。


すると、柚菜の視線が俺に突き刺さる。


ムスッとした表情で、ほっぺを膨らませて言ってきた。



「零君、どうして入学式初日から遅刻してるのよ……」



ヤバい……、やはり突っ込まれたか。


と言うのも、俺と柚菜は早乙女学園に入学したのだ。


竜胆は専門学校のため別だが。



「あぁ、その……何て言えば言いかな……」


「理由があるの?」



そんな質問に、俺は正直に答えるべきか悩む。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



【猫柳構成】



去勢手術を強いられて逃げてた事は言える。


あれはイレギュラーすぎるし、仕方がないと柚菜も納得してくれるだろう。


でも、でもだ。

空条の下僕になった事を言ったらダメだ……。


竜胆には言っても構わないだろうが、柚菜にこの事を知られたら殺される……。


柚菜は幼い時から俺の面倒をみようとする、言わば保護者に近い人なのだ。


だから下僕になった事は隠して、去勢手術から逃げてた事だけを話そ――。


「あれ、零君……もしかして私に隠し事してる?」


バレた! 隠そうとしてたのにもうバレた!


「な、なんで隠し事してるって思うんだ?」


「だってあなたと私の仲じゃない。あなたの事は何でもお見通しなのよ、ふふふ……」


俺の胸を指先でつつきながら妖しい笑顔で告げる柚菜に、俺は戦慄した。


何でもお見通し……という事は、俺がベッドの下にエロ本を隠している事とか、エロDVDをゆずの「栄光の架け橋」のCDジャケットに仕舞ってる事も知られているというのか?!


柚菜はさらに糾弾する。


「それで、何を隠してるっていうの?」


「な、何も隠してないぜー! 今日学校に遅れた理由は、変な奴に追い掛け回されただけだぜー!」


「……ふぅん」


俺は誤魔化して言うと、柚菜は目を細めて笑う。


柚菜が納得してくれたのかわからないが、とりあえずその笑顔が恐い。


魔物が放つような力……いや、オーラだろうか、とにかく得体の知れないものが浮かんでいて恐い。


その柚菜はゆっくりとした手付きで、俺に両手を伸ばしてきた。


そのまますっと、両手が俺の首を掴む。


「本当?」


柚菜の両手にぐっと力が入る。


まだ呼吸ができるが、少し苦しい。


俺は目線を反らしながら「うん……」と誤魔化す。


「本当?」


その声と共に、加えて両手に力が入れられる。


今度は呼吸も難しくなり、俺の口から「ぐひゃっ」という、ひしゃげた声が漏れた。


肯定する事もできない。


「本当?」


そして遂に、柚菜は本気で俺の首を絞め始める。


柚菜の双方の親指が首に食い込み、頸動脈もぎりぎりと圧迫している。


かなり苦しく、呼吸もできなかった。


殺される……白状しなければ殺される……。


同じような事を今日は二度悟ったが、俺は再びそう悟った。


何とか柚菜に向かって、「嘘ついてました」と掠れ声で告げる。


そうしてようやく柚菜の両手は離れ、気道が確保されたのだが、彼女は楽しそうに微笑みながらこう言った。


「嘘付き」



『to be continued』

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