6現目『俺のご主人と幼なじみが修羅場すぎる』
【焔伽構成】
○月××日、俺は下僕とも奴隷とも言える犬に成り下がった今日この頃、飼い主でありご主人様で在られる方と共に、急いで学園に向かっていた。
初日の中の初日である入学式に大遅刻を決している俺達はダッシュで学園に向かっていた。
その最中、隣を走るご主人様は、「あんたが自転車を取らなければ、私まで遅刻することなかったのに!」と文句を言っていた。
俺は目を背けながら、ひたすら走り続ける。
未だにご主人様に殴られた頬が痛む。つうか口切れてね?コレ、切れてね?
走る最中、「ママぁ、あの人何で首輪つけてるのー?」と言う少年の声。
それに対して、「あれはね、人生の負け組の証よ。よぉく見ておきなさい。そして、ああはなるまいと日々の努力をしていくのですよ?」と教育を施していた。
……。…………。
むしろ、そこは見ないでいてほしい……。
そもそもお母さん、その教育は子供にはシビア過ぎやしませんか!?
等と言ってあげたい所だが、負け犬の遠吠え。これ以上、犬の称号なんていらん!
よって喉まででかかった言葉を飲み込む。
「着いた!っていうかマジ!?」
ご主人様が何やら慌てた様子で正面を見ていた。
俺も先を見つめる。
早乙女学園だ。やっと着いたんだな……、……何やら生徒達が校門から出てきてるけど。
俺はいやぁ~な予感がして、iPhoneを取り出して時間を確認してみる。
「……マジか」
そんな言葉が出てきた。
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【猫柳構成】
入学式とやらは、もう疾うに終わっていた。
時間は昼過ぎを越えていて、よく考えてみれば太陽も夕日へと変わっている。
しかし確かに、これほど時間も経っていれば日は沈み、カラスも鳴きながら帰っていくだろう。
それにしても、そのカラスが「あほーあほー」と鳴いていて、こちらを罵っているように聞こえるのだが、気の所為だろうか。
石でも投げてぶつけてやりたい気持ちだが、真にぶつけてやるべき相手は誰かという事を考える。
そう、あの黒いスーツの女……若しくは黒いスーツのオカマである。
自転車をパクってなくした自分も悪いのだが、奴が去勢手術なんてものを強制しなければ全ては平和だったんだ。
ぐぬぬ……許せん。
いつかまた会ったらこらしめてやろう。
というか鷲尾は大丈夫だろうか……オカマになったのだろうか……?
「面倒だけど、職員室に行くしかないわね」
「そうだな……」
「私はあんたの所為にするから怒られる事はないけど」
そう言い残して職員室に向かい始める主人に、俺はリードを引っ張られ、慌てて付いていく。
職員室では、なんとか自転車を盗んだ事を誤魔化したが、先生にこっぴどく叱られた。
あとやはり、何故リードに引かれているのかと聞かれたが、正直に答えても先生は特に何も言わなかった。
本当に大丈夫かよこの学校……。
帰り道になると、ご主人は俺の首輪を外してくれた。
一人になる時間も大切にしたいので、家には俺を帰してくれるらしい。
そうしてくれた方が嬉しいのだけど、何故だろう……微妙に残念に思ってしまう。
最後に主人に名前を聞いてみると、空条 翼という名前を教えて帰っていった。
なるほど、オラオラしそうな名前だぜ。
それにしても、今日はかなり疲れた気がする。
疲労だけでなくダメージも貯まった気がする。
新学期の初日とは思えない日だった。
下僕にもなってしまったし、明日からどんな日が待っているのかと、怯えながら俺は家に帰っていった。
『to be continued』