５現目『犬のお巡りさんか、雄犬か』
【焔伽構成】
自転車がない……。
これってかなりマズイ状況じゃないんだろうか？
いや、まて……そんなことはない。あってほしくない。
落ち着いて状況を整理してみよう。
まず自転車を無断で拝借した＝窃盗
自転車を路上放置＝違法駐車及び窃盗投棄
自転車紛失＝器物破損
「…………」
やべぇ……、まごう事なき犯罪者だ、俺。
一気に多前科持ちだ。お母さん、僕は高校１年生にして前科３犯みたいです。
最早逃れることすら叶ないません。
とまぁ、冗談はさておき俺は空を見上げると同時に、現実も見ることにした。
フッ……訴えられる！これは絶対訴えられる！
目の前の被害者さんがプルプル振るえている。
ヤバい……俺の反応を見て何かを悟られたらしい。
背筋に冷たいモノが走る。これは殺気……？俺は恐怖しているのか。
気のせいか、流れてくる風も冷たい気がする。
側を通り掛かった小学生の何人かが、俺達の周りを避けて通っている。
中には子供を送り出している母親が「見ちゃダメよ」と注意を促している。
お母さん、それは正解ですよ。この殺気……子供には悪影響だ。
「なぁ、アンタ……ま・さ・か自転車亡くした、とか言うんじゃないだろうな？」
小さな……ホント小さな声で被害者さんが話し掛けてくる。
むしろその小さな声が逆に怖いのだが。
「す、スマン！いや、すいません！自転車ここに置いていたのですが、どうやら無くなられたみたいです！」
苦し紛れだが、心込めて誤ってみた。
すると、被害者さんはニコッと笑ってくれた。
良かった、許して━━━
ギュルッ！
その時、空が回っていて、街が下に見える。
何が起こったのかよく分からなかったが、直ぐに気付いた。
俺は被害者さんに右ストレートで殴られ、空中を舞っていたのだ。
空が回ってるのではない。俺が空を舞っているのだ。
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【堀川構成】
その瞬間、時間がとても長くなったように感じた。
俺の手や木の葉などの全てのものが、世界がゆっくりと動いていた。
俺はそんな世界で宙を舞いながら、「ドーパミン」や「アドレナリン」という単語を思い出した。
熟練のボクサーは試合中、一瞬で放たれる相手の拳が、何秒にも長く、ゆっくりと見える事があるのだという。
それはボクサーの脳内で、このドーパミンとアドレナリンが多く分泌されているからなのだ。
それと同じ現象が今、起こっているのだろう。
アドレナリンが多く分泌されているのだろう。
しかしそれを悟ったとしても、俺は現状を変えられなかった。
女にもらった衝撃は身体中に響き渡っていて、意識さえ朦朧としていた。
そして俺は成す術なく、砂浜へと落ちる。
腰から地面に着き、ごろごろと転がる。
たまたま突出していた岩に頭をぶつけて静止した。
「いい痛てぇぇーッ！」
ごろごろ転がって痛みに悶絶する。
今日だけで俺は腰を二回強打し、頭もこぶが出来ているだろうし、怪我が数え切れない。
入学して初日でこんな日になるなんて、誰が予想しただろうか。
もしかして、俺はこの学校で毎日こんな日々を過ごすのだろうか。
そんな疑問が生まれたが、答えはすぐに女が出してくれた。
「警察を呼ぶか、私の下僕になるか、どっちがいい？」
唐突にそんな選択肢を用意してきたが、俺はその選択肢がどういう意味かわかった。
警察を呼ばれたくなければ下僕になれという意味だ。
俺は女の下僕になる事の方が比較的に幸せに思えた。
警察に捕まってしまうと人生に影響がある。
だから俺は言った。
「優しく、してください……」
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【焔伽構成】
「大丈夫、優しくするからまずこれ首に付けてね」
今渡された物は、犬が散歩する時に使用されるリード輪っかが渡された。
「あの、優しくするって……」
「そう。私の飼っていた犬が死んじゃったの。あなたの顔を見ていると、可愛い童顔だから飼っていた時の事思い出しちゃって」
悪気はないだろうけど、俺に対して可愛いと言われるのは、傷付く。
女性は言われたら嬉しいだろうけど、男にそれを言われたら男らしさがかけて情けない。
彼女的には、男として見てるというより、ペットとして見られているのであろう。
「あの、せめて人間として扱って下さい」
「なら、刑務所行く？ 私はそれでもいいけど」
彼女、小悪魔的な笑みを浮かべている。
弱みを握っているせいか、この状況を楽しんでいやがる。
「理解しました、ご主人様」
「分かればよろしい。忠誠を似合った働きをするなら私なりのご褒美をあげるから」
さぞ楽しいご褒美なんだろうな。「我々の業界では、ご褒美です」見たいな内容の。
この女、破壊力バツグンな拳。そして男装なうえにドS。どんだけキャラたてんだよ……
『to be continued』
しばらくぶりに更新しました。諸事情で遅くなってしまいました。
未来の彼方は間も無く配信します。
私は白猫であるも不定期ではありますが、もれなく配信中です。
宜しくお願いします。
