歩哨
俺はこの街でこうして何十年も立ってきた。
その間様々な奴らと出会いそして別れを繰り返してきた。
今では俺ただ独りがこうして立ち続けている。
色んな奴らがいた。
今でもふと奴らの事を思い出し、己の過ごして来た時間の長さに愕然とする。
俺もこの街を離れ別の街で暮らそうと思わなかった訳ではない。
だが動けなかったのだ。
俺を必要としてくれた奴ら。そんな奴らを置いてこの街を離れることなど出来るわけがなかった。
そして時が流れ、俺だけが残りかつての仲間たちは一人また一人と姿を消していった。
この街を離れなかったことを悔やまないでもないが、今となってはこの街の行く末を見届けようと思う。
それが最後まで残された俺の使命だろう。
やはり俺はこの街を愛していたのだ。
眠らぬ街。今日もこの街の何処かで悲しみが生まれ、憎しみへと変わり、そして誰かが傷つく。
それでも俺はこの街で立ち続けよう。
それが俺の使命だから。
誰からも必要とされなくなった時、その時こそ俺がこの街からいなくなる時だろう。
そろそろ夜が明け新しい一日が始まる。
やがて定刻通りに、オレが一晩中見張り続けた荷物を取りに男がくるだろう。オレがここに立ち続けてあの男で何人目だろう。あんな気の弱そうな奴がはたしてこの街で生き残れるのだろうか。だが、この街では臆病者でなければ生き残れないのかもしれない。かつて、男気に溢れていた奴も、勇敢だった奴も、みな消え去ってしまった。
そろそろ俺の一日の任務が終わる。
そう、俺は歌舞伎町の郵便ポスト。
ポストかよ!てな突っ込みを頂ければ幸いですW こんな感じの短編を何本か続けようと思いますので、また読んでやって下さい。