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俺の春 春到来編

とりあえず最終話です。春を先取り。

もうすぐ



暖かくて



愛しい




春が来る





悪い夢だと思いたい。


「ここは将来有望な若い社員にチャンスをあげようと思うんだ。」

上手いこと言ってるが、アンタは行き詰った計画を部下に丸投げしようとしているだけだろ。

「任せたよ、尾形くん。」

断る!とはいえない。

日本人だからではなく、仕事だから。

「やってみます。」

簡潔に言った。

「もちろん、部長にもご協力頂けるんですよね?」

断れないように目に力を入れながら付け加える。

これで終わりだと思うなよ。

「・・・も、もちろんだとも・・・。」

言ったな。せいぜい上手く使わせて頂こう。

「それでは。」

はぁ・・・忙しくなるな。また、はるに会えない。

はるの休みは不定期だから、カレンダー通りに休みとなる俺とは予定が合わず、会える時間は限られているのに・・・。


はると付き合い始めてから俺は言葉より行動を重視するようになった。

二年付き合った今でも、はるは何も言わない。

そして、求めない。

それでも本音が知りたくて、俺は必死ではるの行動から読み取ろうとする。


眠っている彼女から離れようとすると、すがるように俺の首にまわされる腕。

俺が帰ろうとすると、わずかに下がる目線。

その行動に込められた彼女の感情が、俺を安心させるのだ。

この思いは一方的ではないと。


それを確かめるためには、メールや電話ではなく彼女に直接会う必要があるのに・・・。


部長め・・・。隠してるが実は自分の歳の半分以下の歳の某アイドルの熱狂的なファンだってばらすぞ。




それからの数週間は、本当に働いていた記憶しかない。

休日も出勤し、体力と気力をすり減らす日々が続いた。

そして、やっと今後の見通しが立った時、それは走ってやってきた。


「先ぱい・・・俺やっちゃいました・・・。」

何を?と聞く前に俺は本気で逃げ出したくなった。


・・・あぁ・・・はるに会いたい・・・。


こうして今度は、後輩の尻拭いのために俺は走りまわった。

この頃になると、精神的に余裕がなくなり、それをはるにぶつけてしまうことを恐れて、電話もしなくなった。

はるとの繋がりは短いメールだけ。


本当にどうにかなりそうだった。


なのに・・・

「尾形くん、今日出張するはずだった荒木くんがインフルエンザになってしまった。突然で申し訳ないが君に彼の代わりに出張してもらいたい。」


帰ったら、絶対お払いに行こう。


急いで主張する準備を整え、空港に着き搭乗を待つ間にはるにメールを送った。だが、今の現状を説明するだけの時間はなく、内容は「しばらく会えない」とだけ。

出張先に着いたとたん携帯が壊れ、これが最後のメールになるとは、この時の俺は全く予想していなかった。時差から、はるに電話するのもためらわれ、はるに全く連絡できないまま二週間の出張を終えた。


究極に追い詰められたこの状況の中で、俺は決めた。


帰国したら、はるにプロポーズしよう。


誰にもわかつことができないはるとの絆を手に入れるんだ。


その決意が俺の精神をギリギリで保っていた。




二週間ぶりに帰ってきた自宅で俺を待っていたのは、50件以上の留守電。

もしかして、はるが・・・?

本当に必要な時以外はるから連絡してくることはない。

俺は期待し・・・そして、落ち込んだ。

その、ほとんどは店長とおばちゃんファイブからのものだったから。

内容をまとめると「はるが日に日に落ち込んでいってる。お前なんかしたのか。はるを泣かす気か、こら。」という感じだった。最近の伝言なんか、ほとんど罵倒になってた。主におばちゃんファイブからの。

はるを不安にさせてしまったことを後悔しつつ、俺が連絡しないことではるが落ち込んでくれたことに悪いと思いつつ喜びも感じていた。


全く会えない日々。


俺だって不安だったんだ。




指が覚えてるはるの電話番号を押し、久しぶりにはるの声を聞いた。

ただ、それだけで満たされる自分がいる。

君なしではいられない。

いたくない。

願わくば、永遠に俺の側に。


「話しがしたい。」


二人の将来について。





会社に少し顔を出す必要があったので迎えには行けず、近所の喫茶店で待ち合わせた。

久々に会った彼女は、目に見えて緊張してた。

さらに、店長たちが心配するのも理解できるほど、彼女の様子は変わってた。

目の下のくま、ぎこちない笑顔、それに・・・


「はる・・・少し痩せたんじゃないか?」


顔に触れて確かめようとした俺の手を寄せ付けないように彼女は首を振った。

これは、確実に俺が別れ話をすると思ってるな。


「大丈夫だよ。それより話しって何?」


はるの変わりように心が痛みつつ俺との別れを思って、ここまで追い詰められているはるがたまらなく愛しかった。

はる、俺は一生、君を手放したりしない。


「あぁ・・・そうだな・・・」


姿勢を正し、はるを見据える。


「はる・・・俺と・・・」


はるが唇を噛んだ。覚悟できてるんだな。

だが、その覚悟はいらない。

俺が欲しいのは、別の覚悟だ。



「結婚してほしい。」




「・・・うん。正隆さんがそういうなら・・・。」

とはるが言った。

決めてたセリフを言っただけなんだろうが、とりあえず同意したことに変わりはない。

言質はとった。

あとは攻めるのみ。


「け、結婚っ!?」


叫ぶ彼女に頷いてみせる。そう結婚です。


「け、結婚って・・・。わ、別れるんじゃ・・・?」


それは、永久にありえない。


「別れる?はるが泣いて叫んでもそれだけは絶対に認めない。」


はるが混乱している様子を楽しみつつ、話を強引に進めていく。


「さて、指輪を買いに行こう。」


立ち上がり平然と言った俺に彼女は


「まだ、返事してないっ!」


と言った。


「さっき、うんって言ったじゃないか。」


俺との別れに対して言ったとわかっているが、別れを受け入れちゃった彼女に少しぐらい意地悪しても許されるだろう。


「あれはっ!」


はるをからかうのは、このへんで、やめとこう。


「ふう。しょうがないな、はるは。」


と座りなおすと、あたふたしているはるの両手を握り、はるの目を見つめる。

やっと、ここまで近づけた。

これからも、ずっと俺の側にいてほしい。

だから・・・。



「佐竹はるさん、俺と結婚して下さい。」



はるは答えた。いつかと同じように、小さな声で


「よ、よろしくお願いします。」


あぁ。末永くよろしくな、はる。



言葉と一緒に出てきたはるの涙を指でぬぐってやっていたら、周りから拍手が聞こえてきた。

・・・さすがに、これは恥ずかしいな・・・。




店を出たその足で、指輪を買いに行った。俺が勝手に買ってもよかっんだろうが、はると二人で決めたかった。

はるの希望を聞き出し、それを購入した。

シンプルなデザインだが、はるは気に入ったらしく俺の家に向かう車内で、じっとそれを眺めていた。

俺は、はるの薬指に俺と一緒の指輪がはめられているのを見てるだけで満足だった。



二人きりになると、久しぶりに会ったということもあり、はるに触れたくてしょうがなかった。

襲いそうになるのを、何とか理性で抑えた。



が、それも部屋に入るなり切れた。

そこからは余裕なく、はるをむさぼったこと以外覚えていない。

俺の全てではるがここにいることを確かめたかった。

はるは怯えながらも、抵抗をやめて、俺を受け止めてくれた。



とりあえず俺の欲望がおさまった頃には、はるは大分ぐったりしてた。


そんなはるを抱きしめていると、腕の中のはるがためらいながら


「あの…何でこんなに連絡なかったの…?」


と言った。無意識の上目遣いに反応する自分の体に苦笑しつつ、俺は会えなかった2ヶ月のことを話した。

俺の話を聞き終えた、はるは


「大変だったね・・・。」


と心をこめて言ってくれた。

あぁ・・・やっとはるの側に帰って来れた。


「何がつらかったって、はるに会えないことが一番つらかった・・・。


 何度、真夜中の襲いに行こうと思ったか・・・。」


半分冗談、半分本気だった。


「襲ってもいいから会いに来てほしかったな・・・。」


はるがポツリとつぶやいた。

こんな言葉を聞ける日が、来るとは・・・っ!(感動)


「あのねっ」


今の自分の発言にはるが取り乱す。

いや、もう耳に永久に残すことにしたから取り消すことは不可能だぞ、はる。

はるがそう言ってくれるなら・・・


「わかった。これからは、ガンガン襲うことにする。」


楽しい新婚生活になりそうだ・・・。


照れくさいのか、下を向いたはるに、また愛しさが溢れる。




はるは俺を選んだ


あの日、眠るはるに誓った言葉


『誰よりもお前を愛し、誰よりも大切にする。


 だから、誰よりも俺を求めろ。


 そうすれば、永久に俺はお前を愛するから。』


俺は、この誓いをこれから一生かけて果たしてみせる。



だから・・・



「はる。」


はるが顔をあげる。


頼むから


「ずっと一緒にいろ。」



命令するように言ったのは

「NO」は受け入れられないから。



はるが答える。


「よろしくお願いします!」


力強い言葉と見惚れるほどの笑顔で。




さよならに怯える君にゆるぎない絆をあげよう。


なにげない日常を君と生きていこう。


握った手は永遠に離さない。


俺の全てで、君をつなぎとめる




死が二人をわかつとしても




暖かく、愛しい春は何度でもやってくる。


そう信じて




ほら


今年も


春がきた。




 ―The End― 





読んで頂きありがとうございました!いきあたりばったりで出来た作品ですが、予想していた以上にたくさんの方に読んで頂けたこと、大変嬉しく思っております。

今後、機会があれば番外編として結婚式編や新婚編などを書いていきたいと思います。気長にお待ちくださいませ。

最後に次回作予告を活動報告に載せております。よければ、引き続き読んでやって下さいな。

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