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俺の春 下準備編

正隆さん視点です。一旦ここで話をきらせて頂きます。


最後に会ったのは、二ヶ月前


最後に電話したのは、一ヶ月前


最後にメールを送ったのは、二週間前



そろそろ限界だ。




ネガティブな彼女のことだから、これが自然消滅か・・・とか考えて勝手に別れたことにしかねない。

そんなことありえないのに。

役に立たない電話を握り締めながら思う。




例え何度この繋がりが途切れても、はるだけは絶対に手放さない。




 ―2年前―


貴重な休日だというのに、俺はスーツをきっちり着込んで、とあるスーパーの前に立っていた。

彼女を手に入れる、その為に。


「さて、行きますか。」




彼女を手に入れると決めた日から、俺はどうやったら逃げられずに彼女に接近できるだろうと考えていた。

彼女は、押したら押した分だけ引くタイプ・・・というより押す前から安全な所まで引いてるタイプだ。

歩み寄ることさえ、彼女は許さない。


ならば、どうするか。


逃げられないように周りを囲んでしまえばいい。



「はじめまして。尾形 正隆(まさたか)と申します。」


目の前の真っ赤なドレスシャツを着たオールバックで、やたら顔の濃い男性に名刺を差し出した。

・・・一見すると、バラくわえて社交ダンスしてそうな人だが、まぎれもなくこの店の店長である。


「うーん?うちは個人経営のスーパーだからおたくみたいな大手のやり方とは合わないんだけどね☆」


「いえ、今日は個人的にご検討頂きたい案件がございまして。」


「個人的に?」


困惑した表情になる。まぁ、当然だな。


「はい。実は、ここで働いている佐竹はるさんとお近づきになりたいのですが、協力して頂きませんか。」


普通こんなことは職場の人間ではなく、彼女の友だちとかにお願いするべきなんだろうが、彼女とこのスーパーの繋がりはとても深い。長く働いていることもあるだろうが、この店長やパートのおばちゃん達には娘のように可愛がられているのだ。彼女も、ここの人達からは逃げたりしない。何としてでも、味方になってもらいたかった。理解を得るため、続けて言葉を重ねる。


「はるさんの性格から考えて、私が強引に近づこうとすれば、はるさんは萎縮して逃げてしまうと思うんです。」


「だから、私たちに仲介人になってもらいたいと?」


その通り。

「はい。どこぞの馬の骨に突然かっさらわれるよりいいかと。」


「なるほどねぇ・・・☆それに、職場に手をまわす位本気なんだね★」


「もちろんです。例え、こちらに断られたとしても、また別の方法で俺は彼女に近づきます。」

えぇ、絶対に。


「ふーん・・・と彼は言ってるんだけど皆さんどう思う?」

と言いながら事務所のドアを手前に引くと、5人のおばちゃんがなだれ込んできた。


あんたら、仕事はどうした。



5人のおばちゃんは、当たり前のように俺を取り囲むようにそれぞれ席についた。


おばちゃんの一人が言う。

「はるちゃんは、私たちの娘も同然。そうやすやすと近づけさせないわよ!」


別のおばちゃんが言う。

「それに、とても繊細な子よ。あなた、その変ちゃんとわかってるの?」


さらに別のおばちゃんは続ける。

「私たちが、はるちゃんにふさわしいか見定めてあげるわ!」


そして、店長がまとめる。

「・・・というわけだから、ちょっと付き合ってくれる?」


聞くまでもない。

こうなるだろうと予測して、スーツを着てきたのだ。

さすがに、おばちゃん5人は予想外だったけどな・・・。


「皆さんが納得されるまで、いくらでもどうぞ。」




それからは、6方向からの質問の嵐だった。

学歴や年収、家族構成から始まり、家事はどれくらいできるのかとか子どもについてどう思うのかなど気が早すぎるだろという内容の質問も飛び出し、果ては歴代の彼女と別れた理由はなんだったのかとかちゃんとその彼女たちとはきれてるのかとかまで聞かれた。


お、怖るべし、おばちゃんパワー・・・。


1時間にも及ぶ怒涛の質問攻めを経て、皆さんが出した答えは・・・


「「「合格っ☆!!」」」


その言葉を聞いて、机の下で小さく拳を握った。

というか、ここまで聞き出されて却下だったら、暴れ出すな、絶対・・。


でも、おかげで心強い協力者たちを得た。

その後、今後について少し話し合い、俺が会社の調査と称してこのスーパーに入らせてもらうことになった。仕事であれば彼女は、逃げずにちゃんと俺と向き合ってくれるだろう。



出会いの下準備は済んだ。


さぁ、君を手に入れよう。





今日の教訓:おばちゃんたちは、絶対に敵にまわしてはいけない。



読んで頂きありがとうございました!正隆さんは、こんな人でした。出会い編に続きます。

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