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前編

まったくの初心者です。至らない点も多々あるかと思いますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


最後に会ったのは、二ヶ月前


最後に電話があったのは、一ヶ月前


最後にメールがきたのは、二週間前

 


そのメールには

「しばらく会えない」だけ




これが世でいう自然消滅か。

最後のメールを眺めながら思う。

いつかはこうなると覚悟していたはずだったのに、二年という月日のせいで緩んでしまったらしい。

この二年間にあなたから届いた、短くて簡潔なメールを何度も読み返してる。



あなたと私が繋がっていたという確かな証を求めて。




今思い返してみても、私と彼には本当に共通点がない。


近所のスーパーの店員である私と大手企業の社員である彼。

現場でのマーケティングの調査とやらが私の働いているスーパーで行われなければ、一生会うことはなかったに違いない。

びしっとスーツを着こなして挨拶する彼の目が鋭くて、何だか怖かったのを今でも覚えてる。

その彼の対応をまかせられたのが、何故か私だったのだ。



「現場の意見が聞きたい」という彼の要望で、何度か二人で話した。

時には、一緒に昼食を食べに外に出たこともある。でも、いつもいつのまにか話がずれてしまい、最後は雑談になってた。


やはり、私では彼の役には立てないと何度も店長に訴えたのに「君じゃなきゃダメなんだゼ☆」と親指を立てて言われた。あなたはいつも楽しそうですね・・・(脱力)。


初めは緊張していた私も、話し上手な彼のおかげで、だんだん自然に会話できるようになっていった。

少し低めの彼の声は、聞いていて心地よかった。




調査とやらが終わっても、彼はたびたびスーパーを訪れた。

「現場の声を聞く」という大儀名文のために。内容はあいかわらず、雑談だったけど。

パートの女性にも大人気で、いつも残りものを押し付けられてた。




そんな、ある日。

私が、帰ろうとしている時に彼がやってきた。


「あ、もう帰宅されるんですね。」


「大丈夫ですよ。特にこの後、予定もないですし。」

自分で言ってて悲しいですが。


「しかし・・・」


そんな、私たちのやりとりを見ていた店長が、何の前触れもなく爆弾を落とした。


「じゃ、彼に送ってもらっちゃいな☆」


いや、ウインクされてもですね・・・


「そんなことをして頂くわけには・・・」


と丁重にお断りしようとした私の言葉をさえぎり、彼は言った。


「あなたさえよければ、お送りさせて下さい。」


と真剣な顔して言われて断れるはずないじゃないですか・・・。




その日から、時々彼が送ってくれるようになった。

送るだけじゃなく、時間が許せばドライブや食事にも連れていってくれた。


この頃になると、もしかして…と考えてしまうこともあったけど、ありえないと自分に言い聞かせていた。



のに




私が住んでるアパートの前に停まった車の中で、私の両手を握り彼は言った。




「佐竹はるさん、俺と結婚を前提に付き合って下さい。」と




何度、こんな場面を想像しただろう。

でも、これは間違いなく現実だと握られた手の暖かさが告げてくる。

その上、「結婚を前提に」って言いましたよね!?

そんなこと、想像の中でも言われたことありません!


完全に許容量を超えた私の頭の中は真っ白になった。


握られた両手は痛くはないけど、力強くて逃げ出すことはできない。

それどころか、真摯な視線から目をそらすことさえ許されない。

彼の目は、嘘もごまかしも拒否している。



あの時の私は、彼の目に操られていたんじゃないかと今でも思う。

いや、本当に。



頭で考えることなく、私の唇から

 

「よ、よろしくお願いします・・・」


とぼやきのような音量の言葉が出てきた。



や、ちょっと待って!

今、なにを言った私!?



今度は自分の言った言葉で混乱する私をよそに


彼はほっとしたように息をはいた。


あの、今の発言はですねっ

私の身体に住み着いている何者かが勝手に言ったんです!!


という頭の悪い言い訳が口から飛び出そうになったけど


「よかった・・・。これから、よろしくね。」


の一言で撃沈された。




今年で21歳になる私の恋愛経験は皆無で、間違いなく付き合いやすい相手ではなかっただろうに彼はゆっくりと私に合わせて行動してくれた。


初めて抱きしめられた時は、腰が抜けた。

初めてキスされた時は、夜眠れなかった。


初めて彼の家に泊まった時は、恥ずかしくて死ねるんじゃないかと思った。


でも、嫌じゃなかった。

怖くもなった。


相手が彼だったから。



好き、だったから。




終わってしまうのかな、こんな形で。

いつのまにか溢れだした涙で視界がにじむ。


迷惑なんじゃないかと思って私からは、ほとんど連絡したことはほとんどなかった。

いつもの私なら、間違いなくここであきらめる。

  

でも



これで終わりはいやだ。

一回だけ悪あがきを・・・してみよう。


携帯を握った。



その時



着信がなった。


反射的に出ると、懐かしいとさえ感じてしまう彼の低い声がした。



「話しがしたい。」



さよならの?



心の中で誰かが言う。

ほら、求めるから傷つくんだよ。


失うってわかってるくせに、さ。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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