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ロンドン

作者: ルンデン
掲載日:2026/01/22

 少し暖かくなってきた春のある日、ロンドンでは今日も雨が降っていた。それを見上げた僕には、水がすべてを洗い流していくすがすがしい気持ちと、過去の自分や好きだったものが川を下り、海に沈んでいく喪失感とがこみ上げた。

ずっとこの街で生きてきたのに、やはり今日もだんだんと疲れてきた。それはきっと、僕の心に雨なんかには流せないなにかが今も壁に必死でつかまっている何よりの証拠だ。

 忘れたくない。

文字に残そう、と僕は思った。

文字は人類史上最も偉大な発明だ。

僕にとって、文字は心の中のこの大荷物を引き取ってくれる唯一の救いだ。こんなの、人間の手に負えない。

しかし、手に取ったペンはインク切れ、紙を広げればそれはもうボロボロで、たちまち手のひらの上に崩れ落ちた。

その時、僕は何かにとりつかれたように急速に気力を失った。

 なんだ、これは。こんなもの保存して何になるっていうんだ。

…神よ。いるんでしょ?助けてよ…。A4コピー用紙一枚、新品のペン一本…!くれよ!くれよ…。

僕は抵抗したが、あえなく敗北した。神は、今日はたまたま留守だったらしい…

あほらし。

覚えていないが、これと同じようなことが前もあった気がする。

その時も、同じようにこの気持ちを保存したいと思って…同じように最後にはこんなの忘れ去りたいと願った。

でも。どっちの願いもかなわないんだ。

 最後に少し愚痴を垂れ流させてほしい。

これは、なんなんだ。この困難。この感情。自分でも説明できないし、説明したくもない。

読者、頑張って読み取ってくれ。

どうして僕だけこんな思いしなくちゃならないんだ。

泣きそうだ。僕が悪いのか?

きっと、何も悪くない。すべてが正常だ。

僕は、こうやって苦しむ「運命」にあるんだ。

そうとしか思えない…間違いなくそうだ。

いつも通りの軽い声で「ひどい…」とこぼした。

もう慣れた。何回目なんだろう。

 やっぱり、こんなん気にすることじゃない。次の日になれば、純粋に楽しみ、笑ってる自分がいるだろう。

それも悔しい。中途半端は一番ダメだ。

それで、この後もお決まりの流れだ。

おはよう。今日は少し寒い。

ロンドンには、珍しく雨は降ってない。でも僕の心は…いつも通りグルグルしてる…雨だから、とかこじつけだ。

 お腹すいた。

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