Story 9
姫那は後ずさりした。
「俺は河合が欲しい」
彼女は首を横に振る。
「きゃ!」
ソファーにぶつかり、座り込む。
「河合、俺と付き合ってくれ」
葛本が近づいてきて、姫那は押し返した。
「河合」
左手を押さえつけられる。
「っ!」
右手をつかまれそうになったが、振りほどき、ズボンのポケットに手を入れた。
「好きだ」
彼女は膝蹴りした。
葛本の腹にヒットし、彼はうずくまった。
その間にスマホをポケットから出しながら逃げる。
「虎雅さん!助けて!」
『どうした!?』
「葛本さんに襲われた!」
『えっ!?』
玄関に向かう。
「待て!」
『今どこ?』
「家です!」
右手をつかまれた。
「離して!」
『すぐ行く!』
葛本はスマホを取り上げた。
「逃げんなよ」
「離してってば!」
葛本は顔を近づけてくる。
「いや!」
『姫那!』
「大人しくしろ。大丈夫だから」
「何が大丈夫よ!」
葛本は姫那の顎をすくった。
「いやぁ!虎雅さん!!」
『もう少しで着く!』
彼女は深く息を吸うと、思い切り葛本の股間を蹴った。
「いっ!!」
悶絶している間にスマホを取り返し家を出る。
虎雅さんは右から来る
右に曲がり走った。
「待て!」
振り返ると、葛本が追いかけてくる。
ヤバい!
追いつかれる!
パァ!
クラクションが鳴った。
黒い車が停まった。
急いで姫那は助手席に乗る。
「待たせてごめんな」
「いえ、ありがとう、ございます」
スマホで玄関の鍵をロックする。
虎雅は車を走らせた。
「怪我は?」
「ないです」
「何かされたか?」
「ギリ大丈夫でした」
姫那は呼吸を整えた。
「俺の家行くで」
「はい」
虎雅はバックミラーを見た。
「スピード上げるで」
「まさか……」
「そのまさかや」
車が加速する。
「しつこいやつやな」
「……」
「何か飲むか?カフェオレと烏龍茶どっちがいい?」
「じゃあカフェオレ」
虎雅は右手で指を指す。
カップホルダーにカフェオレと烏龍茶のペットボトルが置いてあった。
「好きな方取り」
「ありがとうございます。いただきます」
姫那は信号待ちの間にペットボトルを開け、カフェオレを飲む。
「もう着くから」
彼女は辺りを見る。
え、家どこ?
そう思っていると、車は高層マンションの駐車場に入った。
「えっ」
「ん?」
「家ここですか?」
「そうや」
虎雅は車を停めた。
えー!?
ガチャ
虎雅は助手席のドアを開け、左手を差し伸べた。
「歩けるか?」
「はい」
降りようとすると姫那の体が傾いた。
彼は体で支えた。
「大丈夫か?」
「うん」
彼女は彼に体を預け、目を閉じると深く息を吸った。
「部屋行くで」
姫那は虎雅から離れる。
ふたりは彼の部屋へ向かった。




