序章のあらすじ・世界観・登場兵器
〇あらすじ
1945年(昭和20年)4月7日、戦艦大和を旗艦とする第一航空戦隊と第二水雷戦隊で編成された第二艦隊、日本帝国海軍最後の機動艦隊は沖縄に迫るアメリカ軍の上陸部隊を迎撃するため帰る当てのない戦いのため出撃した。アメリカ軍の索敵網を警戒して欺瞞進路を取った第二艦隊は、沖永良部島の付近で突如として発生した天変地異に巻き込まれる。沈没回避のため必死に操艦する各艦をあざ笑うかのように海が突然割れて艦隊はその中に飲み込まれてしまった。
地球から遠く離れた惑星アトランティア。広大なテーチス海に浮かぶ島国トリアイナ王国は、世界征服を目指すヴァナヘイム帝国の脅威に晒されていた。巨大な魔導戦艦ヨルムンガンド級を擁する帝国艦隊が迫る中、人々の目の前に見知らぬ艦隊が突如として現れた。それは、沖永良部島沖で消息を絶った戦艦大和を始めとする第二艦隊だった。王女ベアトリーチェは彼らを味方に引き入れるべく動き始める。
トリアイナ王国の危機、迫るヴァナヘイム帝国の大機動艦隊。王国の危機に第二艦隊は決断する。空母艦載機との航空撃滅戦が繰り広げられ、戦艦大和と異世界の魔導戦艦と砲火を交える。乗組員の運命は一体どうなるのか。
惑星跡ランティアを舞台に繰り広げられるトリアイナ王国とヴァナヘイム帝国の長い戦いの歴史の幕が今開く。
※この物語はフィクションです。実在の人物とは何ら関係がありません。
1 世界観
(1)惑星アトランティア
地球から数万光年離れた銀河系のどこかにある恒星系にある有人惑星。G3Vの標準型主系列星(直径135万km。表面温度5,680℃、年齢約50億歳と太陽とほぼ同じ規模の単独星)を回る惑星系の第4惑星である。直径1万3千km。自転軸の傾き22°19′で自転周期は地球と同じ約24時間。公転周期は366日、海洋:陸地比は7:3。直径約3,396kmと265kmの衛星を2つ持っているのが特徴。
アトランティアは5つの大きな大陸と多数の島々からなる海洋惑星。海陸比は7:3で地球に似た感じの自然豊かな惑星です。
①主な大陸(=後はイメージした地球の大陸)
パルティカ大陸=ユーラシア大陸
南北ロランド大陸=南北アメリカ
アフラル大陸=アフリカ大陸
オスマニア大陸=オーストラリア
エウロペ地方=ヨーロッパ
※南極大陸に相当する極大陸もありますが、この物語には関与しません。
②主な海洋
テーチス海=太平洋
エルトリア海=大西洋
トリアイナ海=日本海
スベリア海=インド洋
地中海
北海
南氷洋
➂主な島嶼国
北半球
トリアイナ王国=日本(マルティア諸島は沖縄)
シルル諸島(シルル王国)=フィリピン始め南太平洋の島々
スケリア=インドネシア
南半球
サフル=ニュージーランド
ムーシャランド=マダガスカル
(2)文化
基本的に近代ヨーロッパ風で、序章には登場しませんがスケリアやサフル等一部の国は東南アジアや中東の文化に類似しています。
(3)技術的背景
序章における艦船、航空機、地上兵器等軍事技術は概ね地球の1940年代を想定しています。魔導技術は地球には無い技術体系なので、人型兵器、空中推進システム等、地球より進んだ部分もありますが、これらの兵器もその手のアニメにあるような無敵兵器にはしておらず、航空力学や各物理法則に縛られていて、通常兵器でも十分対抗できます。
2 序章で登場する国
(1)トリアイナ王国
トリアイナ王国はこの世界の大洋であるテーティス海に浮かぶ島国で人口は約4千万人。最大の島トリアイナのほか、4つの大きな属島(トゥーレ島、ドーリス島、テティス島)と多数の有人・無人島からなる総面積約45万平方キロメートルの国です。また、トリアイナから東に数千キロ離れた場所にロランド大陸、西に約二千キロ離れた場所にパルティカ大陸があり、南方にはシルル諸島と赤道を経てオスマニア大陸があります。さらに、最も南にある属島のテティス島から約1千キロ離れた場所にサンゴ礁で出来たマルティア諸島があり、海軍基地が置かれています。
トリアイナ列島は火山が多い火山列島ですが地形が古く、各島には活動的な火山は少ないため、標高2千メートル以下の比較的なだらかな山地が連なり、そこから流れる河川が広大な沖積平野を形作っているため、この肥沃な土地を利用した農畜産業も盛んで世界有数の食料生産国でもあります。
一方、 トゥーレ島はトリアイナ4島の内、本島であるトリアイナに次いで大きな島で、開発の手が余り入っていない自然豊かな島です。島の中央部から東海岸にかけて大火山帯が連なり、千から二千メートル級の火山が美しい景観を見せており、火山地帯周辺では硫黄、鉄、銅、鉛、金銀を含む鉱石を始めとした様々な金属鉱石が豊富に産出されることから、鉱工業が盛んに行われています。
なお、この世界では利用価値がないとされる石炭や石油も豊富に存在することから、第二艦隊は燃料補給に関する不安が解消されています(石油は第二艦隊のお陰で利用価値が見直されている)。
なお、トリアイナ本島南部の海岸地帯及びドーリス島は工業地帯となっていて、日用品や魔導機械の中心生産地となっています(魔導艦の造船ドックもこの地域に集中)。
トリアイナ王国の首都トリアイナは島最大の湾であるビスケス湾に面した、人口約60万人の港湾都市です。ビスケス湾の海岸線は約80キロメートルと広く、水深は50mを超え、大型艦の停泊も問題なくできる良港となっています。さらに、テーチス海とは2つの半島で仕切られており、静穏で泊地として最良の港であるだけでなく、風光明媚な観光地としても人気があります。
(2)ヴァナヘイム帝国
約200年前に北ロランド大陸に建国された新興国家で人口約2億人と世界最大の国です。首都は北ロランド東海岸にあるアースガルズ(人口300万人)。
ヴァナヘイムは国力、魔導技術力、軍事力とも世界一と称され、地上兵力数、魔導戦艦を始めとする戦闘艦艇数、世界唯一の飛行機械部隊と、他国の追随を許さない軍事大国です。その一方で軍事から転用された最先端技術は民生品の開発にも使われ、帝国の生活水準も高く、文化、芸術、工芸と言った分野も発展しています。
政治形態は絶対不可侵の皇帝を頂点とした専制君主国家。皇帝が国家の全権力を掌握し、自身の意思に基づいて政治を行っており、明確な権力の一極集中が図られています。物語中では語られませんが、一部の門閥貴族による特権が庶民を圧迫しており、貴族階級と平民階級での軋轢も起こっています。
なお、序章時点では南ロランド大陸の国々もヴァナヘイムに軍事占領後、併合されており、帝国の奴隷国家として搾取の対象となっています(抵抗勢力は悉く制圧され、首謀者は一族郎党全員処刑されるなど、恐怖政治による統治が行われている)。
現皇帝ヘルモーズ二世は、冷酷無比な権力欲の権化といってよい人物で、実父である皇帝ユリウスとその後継者と見られ人望があり、政治能力も高かった長兄を暗殺し、さらには皇位継承権を持つ兄弟姉妹、親類縁者悉く誅殺して成り上がった男です。
その強欲で冷徹な眼は世界に向けられ、強力な軍事力を背景に他国に侵略の手を伸ばし始めました。手始めに南ロランドの国々を武力制圧して併合し、次に攻略する相手として選んだのがトリアイナ王国です。
3 登場艦船
序章に出てきた両勢力の艦船を紹介します。
◇日本帝国海軍第二艦隊
第一航空艦隊 戦艦大和、雲龍型航空母艦天城、葛城
第二水雷戦隊 軽巡洋艦矢矧(旗艦)
第四十一駆逐隊 冬月、涼月
第十七駆逐隊 磯風、浜風、雪風
第二十一駆逐隊 朝霜、初霜、霞
【第二艦隊旗艦「大和」諸元(最終改装時)】
基準排水量64,000トン、満載排水量72,809トン
全 長263.0m、水線長256.0m
全 幅38.9m、吃 水10.4m
ロ号艦本式缶12缶、艦本式タービン4基4軸、出力153,553馬力
最大速力27.46ノット(約50.8 km/h)
航続距離16ノットで7,200海里(13,334km)
最終時乗員3,332名
45口径46センチ3連装砲塔3基9門、60口径15.5センチ3連装砲塔2基6門、40口径12.7センチ連装高角砲6基12門、25ミリ3連装機銃52基156門、25ミリ単装機銃6基6門、13ミリ連装機銃2基4門
搭載機5機(零式水上偵察機)
◇トリアイナ王国海軍
プロテウス型魔導砲艦「プロテウス」
【プロテウス型魔導砲艦諸元】
排水量750トン、全備排水量880トン
全長75m、水線長70m、全幅14m、吃水3.8m
ブラストエンジニア社製魔導ジェネレーター1基
魔導モーター2基による2軸推進
出力328,500MP(440馬力)、速力20ノット(約37km/h)
精製魔鉱石10トン(マナ量48%)、航続距離1,250海里(2,317km)
乗員75名
10センチ口径単装魔導砲2基、6センチ口径単装魔導砲2基
同型艦7隻
※MP=この世界の出力単位で、MP=J。
◇ヴァナヘイム帝国(トリアイナ王国占領作戦参加艦艇)
ヨルムンガンド級魔導戦艦
1番艦 ヨルムンガンド
2番艦 ドゥーヴァ
3番艦 ヘヴリング
4番艦 ミドガルズ
【ヨルムンガンド級魔導戦艦諸元】
全備重量42,816トン
全長237m、全幅32m、全高37m、着水時の吃水8.87m
艦橋は艦体中央からやや後部の位置に設置しているのが特徴
クワット社製大型魔導ジェネレーター1基、エネルギー変換機2基
インペリアル・マジェスティック社製魔導推進機4基
出力115.5MMP(154,888馬力)
最大速力24.2ノット(時速約45km)
乗員1,250名
口径40センチ単装魔導砲塔8門(4基2列)
副砲15センチ単装魔導砲片舷6基計12門
8センチ連装対空魔導砲8基16門
搭載機4機(ドローム)
空中浮揚及び推進システムにより海面約3m上を航行する。
アスク級巡航戦艦
(アメリカ海軍のアラスカ級大型巡洋艦に相当)
1番艦 アスク
2番艦 エムブラ
30センチ連装魔導砲5基10門
12センチ連装魔導砲6基12門
ドローム母艦
(日本海軍の蒼龍型空母、イギリス海軍のアークロイヤル級空母に相当)
1番艦 アルヴァク(フィンヴァラー6機、ドローム26機)
2番艦 アルスヴィズ(ドローム36機)
3番艦 グリスニ ( 〃 )
4番艦 ヒルディス(フィンヴァラー3機、ドローム26機)→機動艦隊から分離した別動隊を編成
その他参加艦艇
最新鋭巡航艦ヴェクネター級8隻
軽装巡航艦アクーラ級2隻
重武装突撃艦サルモン級14隻
4 登場航空機
序章で激戦を繰り広げた航空機を紹介します。
<日本側>
艦上戦闘機 紫電改二(艦上機型紫電改)
全幅11.99m、全長9.346m、全高3.96m
自重2.7トン、全備重量3.8トン
発動機 誉二一型(離昇出力1,990馬力)
最大速度644.5km/h(推算値)、594km/h(実測値)
実用上昇限度11,250m
航続距離1,715km
九九式20ミリ2号機銃4型×4挺(主翼内)
機銃弾900発
60キロ爆弾×4発または250キロ爆弾×2発
局地戦闘機の試製紫電改に着艦フックを取り付けた型で、史実では試作だけに終わった機体です。天城と葛城を登場させるに当たり、大戦末期のゼロ戦では力不足であると感じたことから採用した次第です。大戦末期の日本海軍航空隊を支えた紫電改の艦載機型。艦隊防空の要であるこの機体の活躍も見どころです。
艦上爆撃機 彗星十二型甲
全幅11.50m、全長10.22m、全高3.175m、自重2.6トン
発動機 アツタ32型(離昇1,400馬力)
最大速度579.7km/h(高度5,250m)
実用上昇限度10,700m
航続距離1,517km
乗員2名
7.7ミリ機銃2挺(機種固定)、13ミリ旋回銃1挺
500キロ爆弾1発または250キロ爆弾1発
大戦初期から中期にかけて活躍した九九式艦上爆撃機の後継機として開発された新型艦爆で、同盟国ドイツのダイムラー・ベンツから購入したDB601Aをライセンス生産した液冷発動機「アツタ」を搭載した機体です。十二型は発動機をアツタ32型1,400馬力に換装して580km/hという爆撃機らしからぬ高速性能を持った機体になりました。
しかし、液冷エンジンは精密な機構であったため、当時の粗悪な金属部品と燃料では既定の性能を発揮するのが難しく(絶好調の時は素晴らしい性能を発揮したそうですが)、九九艦爆の方がマシと言った搭乗員もいたとか。しかし、スペック上は非常に優秀な機体であったので、この物語や他の架空戦記物では空母艦爆隊の主力機として大活躍してます。
そういえば、昔のマンガ県立地球防衛軍でベンツ台村ってのが出ていたな…。
艦上攻撃機 天山十二型
全幅14.894m、全長10.865m、全高3.82m、自重3.08トン
発動機 火星25型(離昇1,850馬力)
最大速度481.5km/h(高度4,000m)
実用上昇限度9,040m
航続距離1,746km
乗員3名
九一式航空魚雷×1発
爆弾250kg(2発)または500kg(1発)、800kg(1発)
二式13ミリ旋回機銃(後上方)、一式7.92ミリ旋回機銃(後下方)
旧式化した九七式三号艦上攻撃機の後継として開発された攻撃機で、大馬力の火星空冷発動機を搭載し、最大速度は九七式艦攻より100km/h以上も優速となった機体です。また、長い距離の操縦に対応するため、自動操縦装置を標準装備して操縦員の負担軽減も図られていましたが、実際には不具合もあってあまり使われなかったようです。
本来、雷撃任務が主である機体ですが、ヴァナヘイムの空中浮揚システムに対抗するため、水平爆撃での出撃になりました。この辺も序盤の見どころになっています。
艦上偵察機 彩雲
全幅12.5m、全長11.15m、全高3.96m、自重2.91トン
発動機 誉二一型(離昇1,990馬力)
最大速度609km/h(高度6,100m)
実用上昇限度10,740m
航続距離3,080km(落下増槽装備時5,308km)
乗員3名
一式7.92ミリ旋回機銃
世界的に見ても珍しい偵察専門の艦上機として開発された機体です。早く真っすぐ飛ぶことを考えて設計された彩雲は直線的な細長い胴体を持つスマートな機体で、高馬力エンジンと大直径プロペラによる高速性能と長大な航続距離を両立させているのが特徴です。ただし、史実では彩雲を搭載する空母は既に無く、陸上偵察機として戦略偵察や戦果確認、編隊誘導の任務が主だったとされています(南方方面の偵察で追撃してきた最大速度605km/hのF6Fを振り切り「我ニ追イツクグラマン無シ」と発した電文は有名ですね)。
この物語では、しっかりと空母艦載機としての任務を全うしていますし、ディアナとフレイヤの人生を変えた機体としても役割を与えられています。
<ヴァナヘイム側>
高性能「人型」飛行機械フィンヴァラー
全高14.7m、全備重量6.5トン
クワット社製小型高出力魔導エネルギー変換機1機
インペリアル・マジェスティック社製航空用魔導推進機4基
高純度精製魔鉱石300kg搭載(マナ量185%)
最大速度540km/h
実用上昇限度8,700m
作戦行動時間65分(=最大出力持続時間)
50mm魔導ライフル砲(手持ち式)
連続発射可能数20発
40mm魔力弾(ロケット弾みたいな兵器)20発(脚部6発×2、肩部4発×2)
フィンヴァラーの搭乗員は胸の部分にあるコクピットに乗り込み、頭部の魔力眼から送られる映像を見て操縦します。所謂ロボット兵器で、背部にある4枚の翼からマナを放出して飛行し、機動性も高い帝国側の最新戦闘兵器です。
異世界だから地球の兵器体系とは異なる物を出してみようと思った結果がコレ(と魔導戦艦)です。「坊の岬沖で沈んだ大和を活躍させたいんじゃ!」と書き始めたため、「敵側の兵器は地球と全く異なる物にしよう。どうせなら、魔導力で動くロボット的なモノにしよう」なんてノリと勢いで考えたシロモノです(;^_^A)。
ただ、この物語に類似する小説等では大概、地球製の戦闘機はロボット型の兵器に一方的に蹂躙されがちですが、このような兵器が空を飛べば空気抵抗で速度も制限されて音速は越えられませんし(空中分解してしまいます)、様々な物理法則が冷徹に作用しますので、意外と地球製兵器の方が優位に戦えるのではないか…と考えたところはあります。
なお、魔導機関搭載の飛行機械の欠点としては、搭載する精製魔鉱石の量(エネルギー量)が制限される影響で戦闘継続時間が短いという点が上げられます。
円盤型攻撃機ドローム
直径10.3m、全高5.15m、全備重量5.5トン
クワット社製小型魔導エネルギー変換機1機
スルード社製航空用魔導推進機3基
高純度精製魔鉱石200kg搭載(マナ量185%)
最大速度328km/h
実用上昇限度6,000m
作戦行動時間80分(=最大出力持続時間)
30mm魔導砲3基、連続発射可能数35発/基
地上攻撃用魔力弾3発(日本軍の250kg爆弾に相当)
やってしまった異世界の戦闘兵器第2弾であります! アダムスキー型UFOの天井部を平坦にして、人が出入りできるハッチと手すりがある形状とイメージしてください。こんなのが役に立つのか等と考えないように(笑)。
主武装の魔導砲は円盤の縁辺部に120°の角度になるように固定装備され、1m位の自在に動く腕状となっていて、どの方向から敵が来ても攻撃することができるようになっています…が、固定装備なので敵に対して3つの砲を向けた集中攻撃はできず、速度も機動性もイマイチのため、紫電改の敵ではなく、単なるやられ役になってしまいました。
まあ、日本艦隊がこの世界に来る前のアトランティアでは、飛行兵器はヴァナヘイムが唯一保有していたこともあって、「無敵のドローム」と呼ばれ、他の国々の人々の恐怖の象徴になっていました。




