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第十一話 時間の檻、偽歴の門

《第十二環区》——公式記録に存在しない区画。

地図上では廃棄処理場として処理され、すべての出入口には封印符が重ね貼りされていた。


だがレイは、以前受けた依頼で知っていた。

この区画には、“過去を保管する”施設がかつて存在していたことを。


その名は《テンペル・クロノ》——直訳すれば、“時間の神殿”。


「……ここが、記録が指し示していた座標」


かつて中央技術庁の下層施設だった場所は、今や無人の遺構と化し、あたりには薄く記録干渉霧が漂っている。


エルは耳を伏せ、低く唸った。


「にゃ……これは普通の封印じゃない。“逆再生の術式”が使われてる。近づけば、“今”が巻き戻される危険があるにゃ」


「なら、正面から入るのはやめよう」


レイは手元の端末で、周囲のエネルギー流をスキャンする。

数秒後、彼は小さく頷いた。


「……裏に“換気用シャフト”がある。魔力反応が薄い、あそこなら侵入できる」


地下五階。金属製の通路は既に錆び、足音を吸い込むように静まり返っていた。


だが、そこには異常があった。


「……残響が、ある」


レイは立ち止まり、耳を澄ませた。


何かが、“記録の外側”で動いている。

足音でもなく、機械音でもない——だが確かに“誰かの気配”があった。


突如、金属音が鳴る。


暗がりから飛び出してきたのは、銀色の仮面をつけた人影。背には鋭利な魔導斧。

それは《偽歴教団》の戦闘兵、《リワイター》。


「接触確認。記録干渉対象R-KzR.β。排除開始」


刹那、レイは反応した。背中から取り出したのは《連結術式銃〈ウロボロス〉》。


「……久々だな。こういう挨拶も」


銃身が淡く赤に光り、封じられていた“魔法陣”が開かれる。

リワイターの斧が閃き、空気を切り裂いた——!


レイは側転しながら銃を一度叩く。

銃身が変形し、“雷撃符”が展開。


「雷装——撃ち抜け、《第七式・落雷矢サンダー・アロー》!」


音とともに、魔導の雷がリワイターを貫いた。

だが、相手は吹き飛ばされながらも立ち上がる。機械的な声が響く。


「魔力適合率、確認完了。装甲調整——完了」


「強化再起動……か」


リワイターの肩部装甲が開き、内蔵された“記録封鎖装置”が展開される。


空間が歪む——記録そのものが“書き換え”られ始めていた。


「こいつ……周囲の“時間的事実”を書き換えて、俺の行動を“なかったこと”にしようとしてやがる!」


レイは叫び、次の魔法を組み上げる。


「なら、その前に終わらせる……!」


手のひらで、刻まれた術式が燃え上がる。


「術式展開——《過去断層破撃カレント・ブレイカー》!」


銃から放たれた弾丸が、空間の“記録層”に衝突。

一瞬、世界が白く光り、周囲の時間の流れが“解体”された。


リワイターはバランスを崩し、崩れ落ちる。


その隙に、レイは一気に距離を詰め——


「お前は、過去に囚われすぎた!」


一撃、拳で仮面を砕いた。


仮面の下から覗いたのは、かつて《時間管理局》で共に働いていた男の顔。


「……アレクト……!」


記録書から“存在を消された”はずの元同僚だった。


アレクトはかすかに微笑み、崩れ落ちた。


「……まだ、間に合う……“中核”は……まだ……」


レイは彼を抱き起こし、言葉を待つ。


「“装置の起動……まだ先……だが……仮面の……男が……”」


それ以上、彼は言葉を紡げなかった。


「……すまない」


レイは目を閉じ、彼の亡骸をそっと横たえた。


「“時間”を歪める装置。それを巡って、何人もが“奪われた側”に回されてる。次は、俺が止める番だ」

読んでくれてありがとうございます。続きもどうぞ。

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