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第6話

 ダンジョンの地下一階。

 スライムしか出てこないこのフロアは、今のリブゴンにはあまり意味がないので、早々と地下二階への階段を探しひた走る。

 道中スライムに出くわすが、これを一撃で返り討ちにしてさらに先へと進む。

 おそらくスライムが残していく魔石を食べても、レベルはもう前ほどは上がらないだろう。

 効率を考えれば、もっと強いモンスターが落とす魔石を食べた方がいいはずだ。

 それはリブゴンも感じているようで、俺が特に指示を出さなくても極力スライムは無視して、襲いかかってくるものだけを倒すようになっていた。

 もしかしたらリブゴンは、顔つきや体つきだけではなく、頭もよくなっているのかもしれない。

 通路を曲がったところで前方に階下へと続く階段が見えた。

 リブゴンはそれを下りて地下二階へと向かう。

 ――ダンジョン地下二階。

 下り立ったリブゴンの目の前には三体のゴブリンがいた。

 ゴブリンたちはすぐさまリブゴンを取り囲むように移動して、こちらの様子をうかがう。

 敵ながら統率の取れたいい動きだ。

 だがリブゴンはそんなことには臆さない。

 三体のゴブリンに注意を払いつつ、駆け出したかと思うと、壁を背にして身構えた。

 これで背後を取られる心配はなくなったわけだ。

『ギギギギ……』

『ギギギィ』

『グギャギャギャ』

 ゴブリンたちがリブゴンをにらみつけながら、じりじりと近付いてくる。

 だがゴブリンたちは武器は何も持っていない。

 一方のリブゴンはというと、錆びた剣を手にしている。

 つまりリーチは断然こちらの方が上だ。

 とその時、

『ギギャッ!』

『ギギィッ!』

『ギギャァッ!』

 三体のゴブリンが一斉に襲いかかってきた。

 それに対して、リブゴンは落ち着き払ったまま、

『ギギャギャ!』

 剣を横に素早くなぎ払った。

 その剣撃を浴びてゴブリンたちは三体とも後方に吹っ飛ぶ。

 一体はその一撃だけでこと切れたらしく、煙とともに消え去り、魔石へとその姿を変えた。

 残された二体のゴブリンは、その様子を目の当たりにして、動揺を隠しきれないでいた。

 膝に手をつき、なんとか立ち上がったゴブリンたちだが、

『ギギィ……』

『ギギギギ……』

 互いに顔を見合わせ、何やら目配せをし始める。

 すると、次の瞬間だった。

『ギギィィーッ……』

『ギギャァァーッ……』

 二体のゴブリンは回れ右をして、それぞれ別々の方向へ駆け出していった。

『グギャ?』

「に、逃げた……のか?」

 その後ろ姿を眺めながら唖然とするリブゴンと俺。

 どうやらリブゴンは思っていた以上に強く成長していたようだ。


 予想以上に強くなっていたリブゴン。

 そんなリブゴンは意気揚々と地下二階フロアを探索していた。

 曲がりくねった通路を前進して、さらに狭い通路を潜り抜けると、リブゴンは開けた空間に出た。

 そこは天井がかなり上の方にあって、とても広い場所だった。

 すると突然、ゴゴゴゴッ……と背後から音がした。

 振り返ってみると、リブゴンの背後にはさっきまではなかったはずの石壁が立ち塞がっていた。

 どうやら地面から石がせり上がって、通路を塞いでしまったらしい。

「リブゴン、周りをよく見るんだっ」

 何かの罠かもしれないと思い、俺はリブゴンに忠告する。

 それを受け、リブゴンはキョロキョロと辺りを見回した。

 とそこへ、

『ギギギィ』

『グギギギッ』

 ゴブリンの声が響いてくる。

 声のした方を振り向くとそこには先ほど取り逃がした二体のゴブリンがいた。

 腕を怪我しているらしく、そこをもう片方の手で押さえながら、親のかたきでも見るようにこちらをにらみつけている。

 そして、その二体のゴブリンに挟まれる形で、真ん中にはその二体より一回り大きなゴブリンが立っていた。

 手足が異様に長く背の高いそのゴブリンは、両脇のゴブリンたちを見下ろし、

『ギグァグァ?』

 何やら確認をとっているように見えた。

 まるでいじめられた我が子に「あれがいじめた張本人か?」とでも問いただしているような感じだった。

 それに対し、両脇のゴブリンたちが何度も強くうなずいてみせる。

 すると、真ん中の背の高いゴブリンが二体のゴブリンをその場に残してこちらへと歩いてくる。

 その表情は鬼気迫るものがあった。

「リブゴン、注意しろ! あいつはほかのゴブリンとは多分違うぞっ」

『ギギャッギャ!』

 リブゴンは腰を落とし姿勢を低くして身構える。

 右手には剣を持ち、左手には盾を身につけ、背の高いゴブリンの一挙手一投足に注意を払う。

『ギググガァ』

 リブゴンに声を飛ばしてくる背の高いゴブリン。

 正面に立ったそいつは右手にこんぼうを握り締めていて、腕の長さを合わせるとリブゴンよりも相当長いリーチを有していた。

「やれるかっ? リブゴン」

『ギギャギャ!』

 リブゴンはやる気のようだった。

 俺はそんなリブゴンの意思を尊重することにした。

 とは言っても、いつでも地上に呼び戻せる準備はしておくが……。

 とその時だった。

 背の高いゴブリンが先制攻撃を放ってきた。

『グガァァッ!』

 こんぼうを大きく振りかぶり殴りかかってくる。

 ゴブリンの攻撃速度よりもそれはやはり速かった。

 だが、リブゴンも負けてはいない。

『ギギャァ!』

 こんぼうによる攻撃を盾でガードすると、そのまま盾を前に出して突撃した。

『グガッ……!』

 リブゴンに押し込まれ、あとずさる背の高いゴブリン。

 追撃とばかりに続けざま、

『ギギャッ!』

 リブゴンは剣を振るう。

 ザシュッ。

 という音がして、背の高いゴブリンの左腕が宙を舞った。

『グギギギィ……!』

『ギギギャ』

 背の高いゴブリンは斬り落とされた自分の左腕を一瞥したあと、リブゴンに向け鬼のような形相を見せた。

 しかしリブゴンは怯むことなく背の高いゴブリンを見返す。

 イケる、イケるぞ。

 完全にリブゴンのペースだ。

 俺は勝利を確信していた。

 そして、あと一押しとばかりに俺は、

「その調子だ! 勝てるぞリブゴンっ」

 と檄を飛ばした。

 その直後だった。

 背の高いゴブリンがこん棒をリブゴンめがけ投げ放った。

 とっさに盾ではじくリブゴン。

 だが背の高いゴブリンはその隙にリブゴンの懐に飛び込んでいたようで、それに気付いた時はすでに遅く、

『グガァッ!』

『ギギャァッ……!』

 背の高いゴブリンはアッパーカットを繰り出していて、リブゴンは痛恨の一撃をまともにあごにくらってしまった。

 後ろに仰向けで倒れるリブゴン。

 受け身も取れず、硬い石の床に頭を打ちつけてしまう。

 マズい!

『グガァァッ!』

 床を蹴って跳び上がった背の高いゴブリンが追い打ちをかけてくる。

 俺はその刹那、

「ウレクイエムロボロスっ!」

 声を大にしてそう叫んでいた。

 ――そして、気付けば気を失った状態のリブゴンが俺の足元に横たわっていた。

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