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第3話

 ダンジョン内を歩き回ってわかったことだが、地下一階にはどうやらスライムしかいないようだった。

 そのため武器や防具を何も装備していないリブゴンでも、充分に戦うことが可能だった。

 そしてもう一つ。

 モンスターを倒すと必ず魔石を落とすらしいこともわかった。

 なのでリブゴンは、スライムを倒すたびに魔石を手に入れることが出来ていた。

 そしてそれらをすべて体内に取り込むことによって、リブゴンは確実に強くなっていった。

 その結果として、

『ギギィ!』

『ピキャァッ……!』

 今ではスライム相手なら一撃で確実に葬ることが出来るまでに成長していた。

 ちなみにだが、リブゴンが魔石を飲み込むと、俺の身体はそれに反応して熱を帯びるようだった。

 それが何を意味するのかはよくわからないが、別にこれといって身体に悪い変化は起きていないので、俺は気に留めることなくダンジョン探索を続けていた。

「よし。だいぶ強くなったし、そろそろ次の階に下りてみるか?」

 そう訊くと、たった今倒したスライムから手に入れた魔石を飲み込みつつ、リブゴンは『ギギャギギャ!』と首肯する。

 リブゴンも俺と同じくかなりやる気がみなぎっているようだ。


 地下二階に下りたリブゴンは、首を左右に振り辺りを見渡す。

 どうやら近くに敵はいないようだ。

「どんなモンスターが現れるかわからないからな。用心するんだぞリブゴン!」

『ギギャギャ!』

 俺の指示に従い、リブゴンは一歩一歩慎重に歩いていく。

 通路の曲がり角までやってくると、そっと顔を覗かせ先の様子を確認する。

 いまだ敵モンスターの気配はない。

 リブゴンは分かれ道を右に曲がり、道なりに進んでいった。

 すると前方に宝箱が置かれていた。

 それを目にしたリブゴンはその場でぴょんと軽く飛び跳ねてから、宝箱に向かって駆け出す。

 宝箱を前にしてリブゴンが、

『ンギャギャ?』

 俺に開けていいかと訊ねてくる。

 もちろん答えはイエスだ。

 俺はリブゴンの問いかけに「ああ、開けていいぞ」と返した。

 リブゴンが宝箱に手を伸ばし、それを開く。

 すると中にはボロボロに錆びた剣が入っていた。

 リブゴンはそれを手に取り、振ってみた。

 さらに、もうひと振りしてから今度は胸の前で構えてみせた。

「いい剣さばきだ。カッコイイぞリブゴン!」

『ギッギャッギャ! ギッギャッギャ!』

 俺に褒められて嬉しかったようで、リブゴンは陽気に小躍りし出す。

 まあ正直に言うと、ボロボロに錆びた剣なのであまり見栄えはよくないのだが、それでも素手よりは幾分マシだろう。

「じゃあリブゴン。剣も手に入ったことだし、気合い入れていけよ!」

 リブゴンを鼓舞するように言葉をかけると、

『ギギャギャギャ!』

 声を張り上げ、リブゴンは気合十分だ。

 するとその矢先、

『ギギ……』

 通路の奥から何やらモンスターの声が聞こえた気がした。

 リブゴンにも聞こえたようで、リブゴンは腰を低くして身構える。

 と直後、俺たちの目の前に、

『ギギギ……』

 ゴブリンが姿を見せた。

 見た目はリブゴンそっくりだが、明らかに敵意を持ってこちらをにらみつけている。

「リブゴン、相手はゴブリンだがやれるか?」

『ギギャギャ!』

 同族なので戦えないかもしれない、そう思い訊ねてみたが杞憂だったようで、リブゴンはゴブリンめがけ駆け出すと、躊躇なく剣を振り下ろした。

 ゴンッという鈍い音がダンジョン内に響き渡る。

 やはり錆びついた剣なので斬れ味はほぼゼロに等しかった。

 だがそれでも充分なダメージは与えられたようで、敵のゴブリンは、

『グガ……!』

 白目をむいて倒れ込んだ。

 床に倒れ、ぴくぴくと痙攣しているゴブリン。

 追撃を浴びせようとリブゴンが剣を振りかぶる。

 だがそこへ、

『ギギギッ』

『ギギッ……』

『グギギギィ』

 三体のゴブリンが応援に駆けつけてきた。

 通路の前後を陣取られ、挟み撃ちの恰好になる。

 ちょっとヤバいか……?

「リブゴン、一旦そこを離れろ。逃げるんだっ」

 俺はそう進言するも、

『ギャギギャギィ』

 リブゴンは全然戦えると言わんばかりに首を横に振った。

 スライムを倒してそれなりに強くなっているはずではあるが、それでも三対一は分が悪い気がする。

 不安に思っていると、先ほど剣による一撃を浴びせていたゴブリンが、頭を押さえながらもよろよろと立ち上がった。

 これで四対一。状況はさらに悪くなった。

 やはり引き上げさせた方がいい。

 するとその時だった。リブゴンの正面にいたゴブリンが突如殴りかかってきた。

 リブゴンはすんでのところでそれをかわすが、今度は後ろにいたゴブリンに足を払われたようで地面に転倒してしまう。

 マズい!

 俺はとっさの判断で、「ウレクイエムロボロスっ!」と召喚の呪文を口にした。

 その途端、リブゴンの視界が暗転し、そして次の瞬間、ボフンッとリブゴンが俺の目の前に現れた。

「おい、大丈夫だったか? リブゴン」

 声をかけると、リブゴンは冷や汗を手で拭いつつ、

『ギギャギャ~』

 と地面にぺたんと座り込んだ。

「ふぅ、今のは呼び戻して正解だったみたいだな」

『ギギャギャ』

 ありがとうとでも言いたいのか、俺を見上げ目を細めるリブゴン。

 まあなんにせよ、リブゴンが無事でよかった。


 俺はダンジョンの探索を一時中断し、リブゴンを連れ家に戻った。

 ソファの上にリブゴンをそっと座らせる。

「俺お腹空いたから昼ご飯にするけど。リブゴン、お前はどうする? 一緒に食べるか?」

 リブゴンにそう訊ねると、リブゴンは必要ないとばかりに首をふるふると横に振った。

「そっか。まあ、魔石沢山食べたもんな」

『ギギャ』

「じゃあ俺だけいただくけど、その間暇だったらテレビでも観ててくれ」

『ギギギャ』

 リブゴンはうなずくとテーブルの上にあったリモコンを操作し、テレビの電源を入れた。

 俺はその様子を眺めながら、一人分のそうめんを茹で始めた。

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