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第18話

 翌朝。

 俺は早くに目覚めると裏庭へと走った。

 そして「ウレクイエムロボロスっ!」と召喚の呪文を唱えリブゴンを顕現させる。

「おはようリブゴン!」

『ギギャ~……』

 眠っていたのか、リブゴンは寝ぼけまなこで俺を見上げる。

「悪いなリブゴン。こんな朝早くから」

『ギギャギギャ~』

「実は親父からこれからは真面目に勉学に励むようにってきつく言われてな、お前とのダンジョン探索は今日限りになっちゃったんだ」

『ギギャギ?』

「ああ。俺も親父に養ってもらってる身だからな、あんまりたてつきたくはないんだ。悪い」

『ギギャ~』

 リブゴンは残念だと言わんばかりに肩を落とす。

「だから今日中に最深部まで行けなきゃ、俺とリブゴンのダンジョン探索も終了だ」

『ギギャギ~』

「そんな悲しそうな顔をするなよ。今日中に最深部までなんとしてでも行ってやろうぜ。な、リブゴン!」

『ギギャッギャ!』

「そうだ、その意気だぞリブゴン!」

 俺の言葉でやる気を取り戻した様子のリブゴン。

 そんなリブゴンを俺は早速ダンジョンの中へと送り出す。

 時間がもったいないんだ、一刻も早く最深部を目指さなければな。

「頑張れよリブゴン!」

『ギギャッギャ!』

 いつも通りの元気な返事をしてリブゴンはダンジョン内を走り出した。

 

 ダンジョンの地下一階。

 リブゴンはスライムを無視してダンジョン内を駆け抜ける。

 途中宝箱を目にしたが、

「気にするな、今は時間が惜しい!」

『ギギャ!』

 リブゴンは俺の指示に従い宝箱に見向きもせずスルーする。

 五分と経たずに階段をみつけ出したリブゴンは、すぐさま階下へと足を進ませる。


 ダンジョンの地下二階。

 ゴブリンが現れるもリブゴンの姿を見て勝手に逃げていく。

 急いでいるこちらとしては都合がいいので、そんなゴブリンを尻目にリブゴンはフロアを階段を探しながら突き進んでいく。

 やはり五分足らずで地下三階へと続く階段を発見したリブゴン。

 颯爽と次の階へと向かっていった。

 

 ダンジョンの地下三階に下り立つとコボルトが群れを成して襲ってきた。

 コボルトの爪には毒があるので注意しろ! とうながそうとしたが、リブゴンは俺の心配をよそにコボルトたちを一網打尽にしてみせた。

 コボルトたちの攻撃は一切当たらず、かすりもしていない。

 まったく危なげのない戦いだった。

 やはりリブゴンはとてつもなく強く成長している。

 俺はリブゴンを信じて、そのまま突き進ませることにした。

 コボルトを返り討ちにしつつ、わずかな時間で階段へとたどり着いたリブゴンは、そのまま階段を駆け下りていった。

 

 ――ダンジョンの地下四階。

 このフロアにはハーピィとオークとスケルトンが出現する。

 オークとスケルトンは動きがのろいので、みつけても無視して横を駆け抜ける。

 ハーピィはそんなリブゴンを追いかけてきた。

 なので一旦立ち止まり、追いすがるハーピィを一撃で斬って捨てる。

『ピィー……!』

 とハーピィの叫び声がダンジョン内にこだました。

 その声を聞いてハーピィたちが続々と集まってきた。

 すべて相手にするのは面倒なので、回れ右をしてその場からすぐに立ち去ったリブゴン。

 運良く階段がそばにあったため、そこへ向かって一気に飛び下りた。

 

 ダンジョンの地下五階。

 ここにはホブゴブリンとゴブリンソーサラーが対になって現れ出る。

 そんなゴブリンコンビに通路の前後を挟まれ、仕方なく迎え撃つリブゴン。

 ホブゴブリンが前衛として襲いかかってくる間に、ゴブリンソーサラーが呪文を詠唱し出す。

 リブゴンはそれを止めるため、襲い来るホブゴブリンをシャムシールで一刀両断にしてみせると、その勢いのまま呪文詠唱中のゴブリンソーサラーの額めがけてシャムシールを投げ放った。

 投げつけられたシャムシールがゴブリンソーサラーの額に命中し、突き刺さる。

『グボォォッ……!』

 ゴブリンソーサラーは後ろに倒れ、煙とともに消え去っていった。

「リブゴン、魔石はいい! とにかく下へ進むんだ!」

 ダンジョンに潜れるのは今日限り。

 敵モンスターに遭遇しても出来るだけ逃げて逃げて、逃げまくるんだ。

 そしてとにかく最深部を目指すんだ。

 俺はその思いでリブゴンを急き立てる。

 リブゴンもそれは重々承知しているので、文句ひとつ言わずにその場をあとにして駆け出した。

「リブゴン、無理して戦わなくていいからな! 俺たちの目的は最深部にある黄金の聖杯だけだ!」

『ギギャギャ!』

 俺とリブゴンの想いは一つ。

 黄金の聖杯を手に入れること。ただそれだけ。

 そのためにリブゴンは全力でフロアを突き進むのだった。


 ダンジョンの地下六階にて。

 砂の中から突如として姿を現したサンドシャークの攻撃を、後ろに飛び退けて回避すると、リブゴンは直後、サンドシャークに斬りかかっていく。

 がら空きになっていた腹を掻っ捌いて大量の血を噴き出させた。

 砂が血で赤く染まる中、リブゴンは魔石をかえりみることなく、通路を先へと突き進んでいく。

 砂に足をとられながらも数十分ほどかかってようやく階段をみつけたリブゴンは、背後から襲いかかってきたサンドシャークの突撃をジャンプでかわし、頭部にシャムシールを突き立てた。

『ギャァァアーッ……!』

 サンドシャークが砂に沈んでいく。

 それを振り返ることなく階段を下りていくリブゴン。

 もうリブゴンの頭の中にはとにかく最深部へ急いで行くことしかない。

 

 地下七階に下り立ったリブゴンを、待ち構えていたかのようにオーガの大群がぞろぞろとやってきた。

 すべてを相手にしている時間的余裕はない。

 なのでリブゴンは正面突破を図る。

「行けリブゴンっ!」

『ギギャ!』

 地面を蹴って駆け出すと、リブゴンは目の前に迫りくるオーガをなぎ払って突き進む。

 一体、また一体と刀の錆にしていくリブゴン。

 その気迫はすさまじく、鬼のような形相のオーガでさえひるんでしまうほどだった。

 動きの止まったオーガを打ち倒しながら自らの正面の道を斬り開いて進むリブゴン。

 まさしく今の現状を打破しようと全力で向かっていくリブゴンの姿に、俺もおのずと心を揺り動かされる。

『グオォォッ……!』

『グオォォーッ……!』

『グオォ……!』

 ・

 ・

 オーガが次々と倒れていき、そこに出来た道をリブゴンは突破していった。

 そして前方に階段が見えてきた。

 それを目にしたリブゴンは大きく高くジャンプすると、オーガの群れを跳び越えて階下へとそのまま下りていった。

 

 ――ダンジョンの地下八階にたどり着いたリブゴン。

 周りを見渡すとモンスターの影も形もない。

 だが階段も見当たらない。

 リブゴンはとにかく時間が惜しいとばかりにフロアを走り回った。

 道中、宝箱を発見するも、中身がマイナスなアイテムである可能性も考慮して手は出さずにスルーする。

 どうせ今日だけしかダンジョンにアタックするチャンスはないのだから、今さらアイテム集めやレベル上げに時間を割く必要もない。

 俺の考えを理解しているようでリブゴンは颯爽とフロア内を駆け抜けていく。

 すると前方にミノタウロスが姿を見せた。

 しかも同時に三体もだ。

 出来れば戦わずに逃げたいところだが、その三体のミノタウロスは、前に続く三つの分かれ道の入り口にそれぞれ陣取っている。

 少なくとも一体は倒す必要がありそうだった。

「仕方ない。リブゴン、お前が選べ!」

 俺は三つの分かれ道のどこに進むかをリブゴンに決めさせることにした。

 どうでもいいことだが、俺はくじ運がとんでもなく悪いんだ。

 だからここはリブゴンに任せる。

『ギギャッギャ!』

 リブゴンは一番右の道を選んだようで、その入り口にいたミノタウロスと対峙する。

 一方のミノタウロスは、

『ブオォォォーッ!』

 と雄たけびを上げ、リブゴンを迎え撃つ気満々だ。

「行けリブゴン! 遠慮するな、お前なら勝てるぞっ!」

『ギャギャ!』

 リブゴンはフットワーク軽く素早く動きながらミノタウロスに近付いていく。

 ミノタウロスはその動きになんとかくらいついていこうと、必死に目を動かしてリブゴンを追う。

 だがリブゴンはミノタウロスよりすでに格上の存在となっていた。

 だからこそ、リブゴンが本気で駆け出した瞬間、ミノタウロスはその姿を見失った。

 そして、気付けばリブゴンはミノタウロスの懐に入っていた。

『ギギャッ!』

『ブオォォッ……!』

 リブゴンの剣撃がミノタウロスの腹を一直線に斬り裂いた。

 と同時にミノタウロスの腹から血がぶしゅぅっとあふれ飛ぶ。

 そのまま後ろに倒れ行くミノタウロス。

 その上を通過してリブゴンは通路の先へと入っていった。

 しばらく行くと、階下につながる階段が見えてきた。

 どうやら三分の一のうち、正解を引き当てたらしい。

 やはり、選択をリブゴンに任せて間違いなかったようだ。

 足元には地下九階へと続く階段。

 それを前にしてリブゴンはひと息つく。

 ここまでの疲れももちろんあるだろうが、ここから先はまだ足を踏み入れたことのない未知の領域だ。

 緊張しているのだろう。

 かく言う俺も、緊張から胸の鼓動がドクンドクンと高鳴っているのだが……。

「リブゴン、お前ならやれるぞ! この調子で最深部まで一気に突っ走ろう!」

『ギギャッギャ!』

 俺の声に強くうなずいて返したリブゴンは、シャムシールを握り直し階段を踏み下りていった。

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