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第13話

 地下四階にはハーピィやオーク、スケルトンといったモンスターが生息していた。

 リブゴンはそれらのモンスターを倒しながら通路を先へ先へと進んでいく。

 その途中で宝箱を発見し、中からポーションを拾い上げる。

 ポーションは薬草と効果は同じ。飲み物か食べ物かという違いだけだ。

 のどが渇いていたらしく、リブゴンはそれを一気に飲み干すとさらに奥へと歩を進めた。

 しばらく歩くと前方からスケルトンが群れを成して迫ってきた。

 スケルトンは動きは遅いが斬れ味鋭いロングソードを持っていて、しかも体が骨だけで出来ているため頭部を破壊しない限り動き続けるという厄介なモンスターだ。

 そいつらが束になって押し寄せてきたので、俺はリブゴンに一旦退避をうながす。

 リブゴンは『ギギャッギャ』と返事をするときびすを返し、もと来た道を戻ろうとする。

 だが後ろからも三体のハーピィがやってきていた。

 それを見て俺はここまで使うことなくとっておいたニトロ薬の存在を思い出す。

「リブゴン、ニトロ薬をスケルトンの群れめがけて放り投げるんだ!」

『ギギ!』

 リブゴンは俺の指示通り、布袋からニトロ薬を取り出すとそれをスケルトンの集団の中に投げ込んだ。

 その直後、ニトロ薬が引火し大爆発を巻き起こした。

 バラバラになった骨が辺りに飛び散る。

砂煙の中、地面に無数に転がる魔石を無視して、リブゴンはハーピィたちに向き直った。

 三体のハーピィはさっきの大爆発にひるんでいる様子で、攻撃を仕掛けてこようとはしない。

 そこでリブゴンが、

『ギギギャーッ!』

 かかってこいと言わんばかりに声を上げる。

 その声に触発されたかのように一体のハーピィがリブゴンに向かってきた。

『ピィーッ!』

 ハーピィは尖った爪を振り下ろしてくる。

 だがそれを盾で受け流したリブゴンは、そのままの流れでハーピィの腹をアサシンダガーで突き刺した。

 その一撃でハーピィが地面に沈む。

 それを見た二体のハーピィはひどく怯え、

『ピィーッ……!』

『ピィィーッ……!』

 と鳴き声を上げ飛び去っていってしまった。

 残されたリブゴンは、足元に落ちていた魔石を回収し、それらを体内に取り込んでいく。

「よくやったリブゴン。宝箱が見当たらなければもう次の階に行ってもいいぞ!」

『ギギャッギャ!』

 リブゴンはすべての魔石を飲み込むと、階下へと続く階段を探して再び歩き出した。

 

 ――地下五階。

 下りるやいなや、ホブゴブリンとゴブリンソーサラーが対になってリブゴンに襲いかかってきた。

 ホブゴブリンはハイゴブリンよりさらに一回り大きく、二の腕の筋肉が発達していた。

 赤い瞳をこちらに向け、『ギギィッ』とにらみつけてくる。

 一方のゴブリンソーサラーはローブを身に纏っていて、手には杖を握り締めていた。

 その杖をリブゴンの方に向けながら、

『……』

 何やら呪文を詠唱している。

「リブゴン、魔法を使われる前にゴブリンソーサラーを叩くんだ!」

『ギッギャ!』

 リブゴンは返事をすると同時に駆け出した。

 しかし、その行く手を遮るようにホブゴブリンが前に出る。

『ギギギィ』

『ギギャ!』

 にらみ合う両者。

 どうやらホブゴブリンはゴブリンソーサラーの呪文詠唱の時間を稼ぐ気らしい。

 こんぼうを手にしたホブゴブリンはリブゴンを見据えつつ構えをとる。

「行けリブゴン、お前なら勝てるぞ!」

 俺の檄を受け、リブゴンはホブゴブリンに斬りかかった。

 ホブゴブリンはそれをこんぼうでガードするが、リブゴンの持つアサシンダガーの斬れ味は鋭く、こんぼうを真っ二つに斬り落とした。

『グギャッ……!?』

 驚きの表情を浮かべるホブゴブリン。

 その一瞬の隙を逃さず、リブゴンはアサシンダガーを横に振るった。

 ザシュッ。

『ギャッ……!』

 リブゴンが横なぎに振るったアサシンダガーは、ホブゴブリンの両目を潰すことに成功した。

 ホブゴブリンが両目を押さえながら悶絶する。

 そんなホブゴブリンはやみくもに腕を大きく振り回しながら近付いてきた。

 それをリブゴンはアサシンダガーでひと突きにする。

『グァッ……!』

 心臓を貫かれ声にならない声を上げるホブゴブリン。

 残るはゴブリンソーサラー一体だけ。

 とその刹那、ゴオォォォーという轟音が耳に届いた。

 っ!?

 振り向くと目の前には、ゴブリンソーサラーの放った大きな炎の玉が迫っていた。


 大きな炎の玉を前にしてとっさに盾で防ごうとするが、一拍間に会わずリブゴンは炎の玉の直撃を受けてしまった。

『ギギャァーッ……!』

 炎に包まれ悲鳴に似た声を上げるリブゴン。

 俺の視界も赤い炎に覆われる。

「リブゴンっ!」

 声をかけるが返事はない。苦しそうなリブゴンの声が聞こえるだけ。

 ただそれでもリブゴンは、炎を消そうと地面に転がり、自らの身体に砂をこすりつける。

「リブゴン、ゴブリンヒールだっ! 早く唱えるんだっ!」

『……ギ……ギギャッ……ギャ!』

 炎が弱まっていく中、リブゴンは必死に叫んだ。

 するとオレンジ色の光がリブゴンを覆っていく。

「リブゴン、平気かっ?」

 リブゴンの目はかろうじて開いているだけなので、俺にはダンジョン内の状況が今一つわからない。

 なので俺も声を上げて何度もリブゴンに呼びかけた。

「大丈夫かリブゴンっ!」

『……ギギギギャ』

 するとようやくリブゴンが答えてくれた。

 視界がはっきりと開ける。

 どうやらリブゴンの身体にまとわりついていた炎はかき消えたようだった。

 そして、ゴブリンヒールによってリブゴンの怪我は回復していた。

 とはいえ、全回復までにはいたらず、若干火傷のあとが残ってしまっている。

「気を付けろリブゴン! ゴブリンソーサラーの奴がまた狙ってるぞ!」

 視界の端に呪文詠唱をしているゴブリンソーサラーの姿をみつけ、俺はただちに忠告した。

それを受けリブゴンは魔法攻撃を二度と食らってなるものかと、

『ギギャーッ!』

 ゴブリンソーサラーに向かって駆け出した。

 ゴブリンソーサラーが杖を高く掲げた瞬間だった。

 それよりわずかに早くゴブリンソーサラーの懐に飛び込むことに成功していたリブゴンが、

『ギギャッ!』

 杖を持ったゴブリンソーサラーの右腕を斬り落とした。

『グガァッ……!?』

「今だ、行けリブゴンっ!」

『ギギギャッ!』

 続けざま、完全に虚を突かれた形のゴブリンソーサラーに、リブゴンはとどめの一撃を浴びせた。

 それが決め手となり、

『グギャァァーッ……!!』

 ゴブリンソーサラーは断末魔の叫び声をダンジョン内に響き渡らせ、絶命した。

「リブゴン平気かっ?」

『……ギッギャギャ』

 俺を心配させまいと、大したことないと返すリブゴンだが、体力は三分の一程度まで減っている。

 ゴブリンヒールはもう使えないし、かといって薬草は出来れば使わずに、いざという時のためにとっておきたい。

 となると――

「リブゴン、ここは一旦帰るか?」

 俺はそう進言してみた。

 それでももしリブゴンが先に進みたいというなら止めはしなかったかもしれない。

 だがしかし、リブゴンは、

『ギギャッギャ』

 俺の提案を素直に受け入れた。

「よしわかった。じゃあ一度呼び戻すからな」

 そうして俺は地下五階の途中まで探索したところでそれを一時切り上げ、リブゴンを自分の目の前に呼び戻した。

 

 ボフンと煙とともに俺の目の前に現れるリブゴン。

 やはり怪我は全回復してはいないようで、火傷跡が痛々しい。

 なので俺は、指をパチンと打ち鳴らして、早々にリブゴンをもとの世界へと送り返してやった。

「ふぅ。これでリブゴンも問題ないな……そうだなぁ、今日は向こうの世界でゆっくりしていてもらうか」

 俺はリブゴンの再召喚は明日の朝にすることに決め、家へと戻る。

 

 階段を上がって自室に入った俺は、ベッドにダイブした。

 そして目を閉じ体を休ませる。

 とそんな時、ポケットの中のスマホが震え出した。

 俺は横になったまま、それを取り出して操作する。

「ん? あっ、うそっ……!?」

 スマホの画面を見て気付いたのだが、今井さんから数回電話の着信があったようだった。

 さらにメールも一件届いている。

 ダンジョン探索に夢中になっていてまったく気付かなかった。

「な、なんだろ?」

 急ぎの用かな?

 時計を見ると時刻は午後四時。

 学校の授業はもうすでに終わっている時間だ。

 今井さんは部活動をしていないはずだから、今は多分家にいる頃だろう。

「とりあえず電話をかけた方がいいかな……?」

 とも思ったが、その前にメールの文面を確認した方がいいかもしれないと思い直し、俺は今井さんから送られていたメールを開いてみた。

 するとそこに書かれていた内容は――俺を驚愕させるものだった。

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