転生先
陰キャな界人は、学校からの帰り道、クラスメートを助けた。しかし、自分は命を落としてしまう。死んだあと謎の人物に会い、夢である異世界転生を叶える。と、言われる。とても驚きつつも、自分の夢が叶う喜びを感じ転生する。
その先には?
僕は念願の異世界転生を叶え、転生先で目を開けた。するとそこには、肌が紫色で頭から2本の角を生やした体の大きな男と、何人かの女性がいた。明らかにこれから始まる勇者ライフのスタートではないなと思い、声を出そうとしたけど転生したから赤ん坊スタートで声が出せない。
「ほぉ。生まれたか。」
「魔王様!元気な男の子です!」
魔王様?・・・ちょっとまさかこれは。
「かわいい我が子だ。」
うん、終わった。異世界転生したのはいいんだけど、どうやら僕は魔王の子供に転生してしまったらしい。なんで魔王なの!?
「どれ、我もだいぶ年老いてきた。突然だがこの我が子に魔王の地位を譲るというのはどうだろう?」
「え?魔王様なぜですか?」
「あぁ、肩書きは魔王から先代魔王になるが、権力は揺るがぬ。こんな老いぼれな我より、かわいい赤子が魔王のほうが皆の注目が集まる。最近我の発言力も落ちてきたが、赤子を魔王とすることで我にも注目が集まる、すると、その親である我の発言力が大きくなる。」
「確かに。それはそうですね。」
なんか勝手に話進んでるけど?え?僕魔王になるの?
「我が子に何と名をつけようか。」
まずい、ここで変な名前をつけられては困る。
「カイッカイ!カイ!」
「魔王様!お子様が初めて喋りましたよ!」
「ほぉ。・・・ならば、名前はカイにしよう。」
僕はカイじゃなくてかいとなんですけど。かいとって言おうとしたんだけどうまく喋れずカイと連呼してしまった。
「良い名前ですね。魔王様。」
「我はもう魔王ではない。魔王はカイだ。そうだな、我はカイトとでも名乗ろうか。」
あ、それ僕の名前です。なんて言えるはずもない。たぶんカイの父さん《とうさん》でカイトってなったんだろうな。知らんけど。
「もう少し、我が子をみていたいものだが、
公に魔王が次代へ移ることを伝えなければならない。そのほうが我の都合がよくなる。」
「わかりました。それでは公言の準備を。」
そう言うとたくさんいた女性たちは部屋から出ていき、部屋には二人きりになった。
「カイ、お前に実のことを言うと我はもう寿命が長くないのだ。魔王がいなくなれば、その隙に内戦を起こすものや、お前のいのちを狙って魔王国を滅ぼそうとするものもいるだろう。だから今お前を魔王にして、お前の足元をがっちり固めておきたいのだ。」
突然の告白に僕は驚いた。
さっきまでの堂々とした態度はなくなり、やけに申し訳無さそうな顔をして赤ん坊の僕にそう言った。きっと本当はすごい優しいんだろうな、と思った。
その後少し無の時間が続いた。
「カイト様!準備が整いました。」
「わかった。今行く。」
そう言って先代の魔王は、僕を腕にかかえ歩き出した。