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隠蔽

「・・・人族じゃ・・・ない?」

「こんなからくりも見抜けない。がっかりです。」

隠蔽者がそう言ってため息をつく。単体で魔王城に乗り込んできたのも、今だ魔王に見つかってないのも、人族ではないなにかと言われれば納得だ。マーム帝国の上層部は、案外マナーがいいらしく、勇者などが魔王国へ攻め込むときは何らかの合図とかを送るらしい。変な話だ。

「お前は何者だ?」

先代魔王がそう聞く。

だけど隠蔽者は、その言葉に答えない。

「我の質問に答えよ。」

先代魔王がもう一度聞く。

それでも隠蔽者は何も答えない。

「カイト様。申し訳ないです。隠蔽者の気配も何もかも完全に消えました。もうここにはいないかと。いや、魔王様と話された時にはもうすでにいなかったのかと。」

「・・・なに?」

右腕のないユメミルが先代魔王にそう伝えた。体の一部は魔力で復元可能らしく、ユメミルの腕がさっきよりはましになってきている。

「あいつ、いったいなんなんだ。隠蔽者の野郎。悪いが、我はマーム帝国に行ってこようと思う。マームの上のやつと話がしたい。」

先代魔王はそう言った。隠蔽者は、自分の名前を名乗る時にマーム帝国を出していたから、マーム帝国なら何か知っているかもしれない。

「・・・僕も行く。魔王国の危機なら僕も行って真実を知りたい。」

最近僕が魔王に転生したのも何か意味があるはずで、魔王としての人生を頑張ろうと、思えてきた。怖いけど。

「駄目だ。カイ。マームに行くのは命の危機がある。お前はここに残れ!」

その目は怒っていた。さっきのユメミルの件で感情が苛立ってるんだろう。

「わ、わかった。」

僕はその威圧に思わず身を引いてしまった。こういう所は、前の世界の陰キャ時代からずっとだ。威圧とか大声にビビってしまう。

「いい子だ。」

「カイト様。もしや、マーム帝国にお一人で向かうつもりですか?」

「ああ、その通りだ。我がいない間、もう一度我が子を頼むぞ。」

「・・・はい!」

特に気にならないほど少しの間があった。いつもならすぐに返事するのに。

「では、行ってくる。」

「え、待って。その格好でいいの?」

今の先代魔王の姿はそのまんまの魔王の姿だ。匂いも強烈な魔族の匂いがする。

「うむ、出かけるわけではないからな。このほうがマームも出迎えてくれる。」

「そ、そうなんだね。じゃ、じゃあ、気を付けてね。」

「ああ。」

先代魔王は、そう言うと、僕にの胸に手をあて、「解き放て」と言って魔法陣に乗った。

「い、今のは?」

「ほんのいたづらだ。・・・お前は魔王だ。お前は我の子だ。我の意志を継いでいけ。」

そう言って先代魔王は消えていった。

これがこの世界での僕の父から言われた最後の言葉になるなんて、僕は微塵も思っていなかった。



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