1章
フィクションです
会議
前日までは、町人らで活気に溢れていた花の都「京」。しかしこの日、日本の中心であった京は尾張の魔王により町中血で覆い尽くされた。「足利義昭、京より追放」この知らせは一瞬にして各地の大名達の元に届けられた。そしてその知らせを聞いたある者は嘆き、またある者は我が身を心配し、またある者はほくそ笑んだ。
甲斐の国某所...山奥にひっそりと佇んだ小屋の一室に、有力大名達の側近が集まり密談をしていた。「一同に集まってもらったのは他でもない」そう話を切り出したのは、(甲斐の虎の子)武田勝頼に慕われ、師である真田昌幸。「待て!まだ全員集まっておらぬではないか。」そう話を遮ったのは、越前の国(越後の龍)上杉謙信の軍師にして上杉軍のNo.2直江兼続。「このような重要な会に遅れてくる者の国には初めから期待していない。さっさと始めろ。」明らかに苛ついた態度をとっている男は(中国地方の大守護者)毛利輝元の最も信頼する者の1人にして、毛利水軍の全指揮権を持つ小早川隆景。この一言により一瞬の間が出来、その様子を伺っていた昌幸がならばと口を開けた瞬間、戸をピシャッと勢いよく開け、男が1人部屋に入ってきた。「いや〜面目ない!少し遅れてしまったわ!」そう言い放ち、悪びれた様子を全く見せず胡座をかくこの男は、(四国の覇者)長宗我部元親の弟にして、長宗我部の危機を何度も救ってきた男、吉良親貞である。そのような態度に少し不信感を持ちながらもすぐ気を戻した昌幸が続けた。「では改めて。一同に集まってもらったのは他でもない、織田信長についてだ。」その発言に全員の表情が変わる。「かの者、織田信長は今や尾張のおおうつけではなく、天下に最も近い男と言われておる。その成長はめざましく、先日遂に将軍足利義昭を追放し、京までをも制圧してしまった。これでは朝廷も奴を恐れ、いつの日か織田政権が始まってしまう。そうなれば我ら地方の大名は信長の命令に逆らえなくなり少しずつ力を失い、もはや反撃の手立てもなくなるだろう。なればこそ!今ここにいる我々が力を合わせ連携し、台頭した織田家を潰そうではないか」そう力強く発言した。「確かに織田は強くなった。しかし我々は力を合わせずとも織田家と十分戦が出来るだけの力を持っているはずだ。むやみに連携し、後で領土の分配で揉めるくらいならば、力を合わせる必要はないのでは?」さっきの怒りがすっかり消えた隆景が言った。「確かに、領土問題に関しては一理あるが、隆景殿は織田家の戦力を見誤っている。私が織田家臣の中の内通者に聞いた話では、兵数に関しては少なくとも15万を超え、尚且つ、元々鉄砲を多く保持していた織田家は、先日京周辺の小勢力を潰し、全国の商人が集まる町、堺も制圧したため、これから更に大量の鉄砲を作り続けるだろう。それに対し我らは、上杉3万2000、武田3万5000、毛利4万6000、長宗我部1万9000の約12万の兵力。正直我々の領土が飛び地になっていることを考えれば、更に不利な戦いになるだろう。それに加え...」「徳川か...」と親貞が呟いた。「そうだ。これだけの力を持つ織田に加え、危惧しなければならないのは徳川家康だ。徳川は数こそ1万5000とそう多くはないが、家康の家臣団である三河武士は相当な強者達だ。彼らが戦に加わってくれば苦戦は免れない。」「それに補足して、我らは皆織田以外にも外敵がいるだろう。それを考えればここで我らが連合を組むのは必至。」と、昌幸。彼ら大名達は地方をその強さで収めているが勿論彼ら以外にも強力な国を築いている大名は数多くいる。関東の大部分を収め関東制覇に大手をかける北条家、南蛮貿易に力を入れ、かつては九州で絶対的な力を持ち、今は中国進出を狙う大友家、その大友家から南九州の一部を奪い勢いに乗る島津家、奥州で暴れ周り次々と城を落とし続ける伊達家、長い間東北では絶対的支配者がいなく均衡を保っていたが、それを破らんとする南部家、他にも沢山の実力者がしのぎを削りあっている世界である。このような、いつ自分の国が滅ぼされるかわからないこの状況では自分達が力を合わせる必要があると昌幸は考えていた。
場所は変わり織田家本城安土城内、「これより我ら織田の今後の動向について意見を聞く。」そう声を挙げたのは織田家の棟梁織田信長自らである。「まずは勝家、貴様の意見を述べよ。」「まず我が考えたのは、越後進出です。謙信は確かに戦が上手いと言われていますが、間者の知らせでは謙信は毎日浴びるように酒を飲み体も弱っていると聞きます。いくら戦の神と昔言われていたとしてもそのような状態では満足に戦えんでしょう。そして例え謙信が健在だったとしても、織田筆頭家老の我が正面から叩き潰します。」と織田四天王にして最強とも言われる柴田勝家は答えた。「うむ、その意気やよし。では猿、貴様はどう考える?」「儂の意見としましては...。」こう続けたのは百姓の出から奇想天外な策を用いて、階段を一気にかけ上がるように出世を重ね今は勝家に並ぶ筆頭家老の羽柴秀吉である。「中国地方で大きく幅を効かせている毛利家の攻撃がよろしいと思います。毛利はこの日の本で最も強い我ら織田家の次に大きな領土を持ち、近日は戦もしていない為、多くの兵を持っているでしょう。そんな強大な毛利を圧倒的な力で蹂躙する事によって、他の諸大名に従わざるしかない状況を作るのが上策ではないかと。」そう答えた。その秀吉の発言に対し勝家は毛利と戦うのは早いと反対し、それに対し秀吉も反論するといった衝突がおこり、他にも様々な意見が出た。勝家は昔から百姓の出の秀吉にあまりいい感情を持っておらず、今までにもよく激突が起きていた。そのまま中々話がまとまらず痺れを切らした信長が口を開けたその瞬間だった。何か大事が起きた時の為の間者が「ほ、報告いたします!」
コメント是非!