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一体何があったのかわからないけれど、朝起きたら聖女様と魔王が仲良くなってた。
焚火の周りで楽しそうにお話しているため、見なかったことにしてハコフグ車内へ戻る俺。
爽やかな朝をオシャレな雰囲気でコーヒータイムにしようと思ったけれど、あの乙女チックな空気の中に入っていく勇気は無い。
何なんだアレ。
中に戻ると、ベットの上には睡眠中の面々がずらり。
ローラ以外寝相がすごいことになっていて安心する。
ニルファなんて何故かさっきまで俺が寝ていたベッドで寝ている。
俺が起き出してから1分も経ってない筈なんだが、いつの間に移動したんだろう。
何なんだコレ。
仕方ないので、車内の簡易キッチンで朝食を作り始めると、全員が起きてくる辺りは扱いやすいかもしれない。
「ダロスのとこの人たちってさ、食事中だけは静かだよね。」
「そんなこと無いぞ?多分そろそろ……。」
「おかわりですわ!」
ドラゴンと天使3人、そして今日は聖女までもがモリモリ食べている。
この森来てから、働くか飯を食うかしかしてないな。
勇者と聖女を探しに隣の国から捜索隊でも勝手にやってきたりしないだろうなって警戒してたけど、どうやらあっちの国にこの森を通り抜けられるような戦力はそこまで無いらしい。
なにせ森の中に人の痕跡が全くない。
セリカたちが通り抜けてきた痕跡すら残ってない。
クレーターは、ドラゴンの痕跡だし……。
「なぁ、セリカとマルタがいたトコって兵隊とかいなかったのか?全然この森の調査に来てる気配無いんだけど。」
「私はあんまり知らないけど、戦力って言えるような騎士は殆ど外国の支部にいるんじゃない?私がいたとこには太ったオジサンばっかりだったし。」
「どうして皆さんジャガイモばかり食べてあんなに太れるのでしょうって気になっていたんですけれど、今思うと下っ端の皆さんまで含めて、裏でジャガイモじゃないモノいっぱい食べていたんでしょうねぇ……。」
外国に作った駐屯地に戦力を置いて脅してる感じなんだろうか?
でも、だとしたらこの前俺がハチ型の刺谷さんで瞬殺したのが、もしかしたら主力クラスだったんだろうか……。
俺はあの時自分で作ったロボットで対応したわけだけど、仮に本物の蜂の巣を投げつけただけだとしても倒せた気がするんだよなぁあいつら。
結構あっちの国はガッツリ神が介入してる印象だったのに、その割には戦力は大したことが無い気がする。
それとも、こっちの陣営が異常に強いだけなんだろうか?
少なくともニルファ一人で、正規の軍隊一つ潰せるのはわかっている訳だしなぁ。
いっそのこと、ある程度切り開いた段階で先に基地だけ作っちゃうか?
ここまでアクション無いのは詰まらないし、多少緊迫感持たせた方がいい気がする。
それでも動かないなら、その時はその時で粛々と国境まで切り開いてやろう。
舐められた事されても反撃もできないとなれば、それはそれで立場弱くできるだろうし。
国と国とのパワーバランスなんて、やられたら勝てないとしてもやり返せるぞと言える状態じゃない限り保つことはできんし。
回復魔法を使って病院みたいな事をしているから、それを盾にして横暴な態度取ってるみたいだけど、なんなら回復魔法使える美少女型人形いっぱい生み出して、聖教の強み全部潰してやるのも面白いか?
おかわり分のオムレツを焼きながら、1人でウキウキと悪い事を考えるのは楽しい。
多分、実際に行動に移すより計画を練ってる間の方がゲームみたいで面白い。
ニヤニヤしてると、セリカとかルシファーに寒い視線を送られるけど気にしない。
ヒマならお前らもオムレツとウインナーを焼くの手伝え。
え?火が怖いから無理?お前ら勇者と元天使の筈なのに?
おかわり分だけで20皿目のオムレツを焼いていると、手首に装着した通信機から呼び出し音が鳴った。
何かと思ったら、どうやらリリスかららしい。
「はいはい、なんかあった?」
『ダロス様!ダロス×ダロスの声優オーディションが終了しました!』
「なんて?」
未来の俺と過去の俺が恋愛関係になるマンガらしい。
タイムパラドックスがどう処理されてるのかちょっとだけ気になるけれど、できれば内容を知りたくない。
約束通り好きなアニメを作る権利をあげたんだけど、まさか俺を題材にするとは思わなかった。
深夜枠限定にしておいたよかった……。
「他に何か連絡事項あった?」
『いえ。あ、そういえば先ほどオーディション参加者に偽装してテレビ局に侵入しようとした聖教関係者が捕まってましたね。レギオンの警備員の方に連れていかれて、地下の何かを回す強制労働施設に送られたようですが、それ以上はわかりませんね。』
「そっか。多分そっちの方が重要だったと思うけど、まあリリスが無事でよかった。アニメ頑張って。」
『はい!大好きです!』
うん。
自分をネタにしても怒らず好きなアニメ作らせてくれるんだから、そりゃリリスからしたらありがたいだろう。
でもさ、重要な事は先に教えてほしいな?
それとも、日常茶飯事なんだろうか?
「もしもし、警備室?」
『はい!何でありましょうか主様!』
「小耳に挟んだんだけど、最近侵入しようとする奴多いの?」
『そうですね!まあ全員水際で引き留めているので今の所問題ありません!』
そんな多いのか。
武力じゃなくそんな場所から攻めてこようとしてたなんてなぁ。
これはちょっと油断してたかもしれない。
俺が油断しててもちゃんと対応してくれる皆には感謝だな。
おっと、良い焼き加減だな。
ディとフレイはこの位のトロトロが好きだったはず。
「因みにさ、どうやって侵入者かどうか判断してるの?」
『邪な考えがある者は通れない結界が地下鉄の駅に張られておりまして、そこで引っかかった物は強制収容所に送られております!』
「すごいなその結界。やっぱりガラテアが?」
『はい!やることが無くてヒマだからと!』
「そう……。ありがとう、じゃあ仕事頑張って!」
『は!』
やっぱりガラテアは凄いなぁ。
アイツいればもう割となんでもありだからなぁ。
子供生まれたら、何かで労ってやらんとな。
よし、この位硬めに焼いたのがニルファの好みだ。
1人で20皿目だけど、どこまで食べるんだ?
「ダロス様、シャウ〇ッセンはないのでしょうか?久しぶりに食べたいのですが。」
「日本じゃねぇんだからあるわけないだろ。カリっと音が鳴るウインナーってだけで満足しておけ。」
「そうですか……。では、卵焼きおかわりお願いします。」
「何が『では』なのかわからんけど、ちょっと待っててな。」
マルタの冗談はわかりにくいけど、食欲があるのはいいことだ。
肉付きが良くなり、おっぱいも大きくなってきてて良きかな。
「なぁセリカ、ミュルクの森に軍事基地的なもの作ろうと思ってるんだけどさ、そこのお飾り総司令官にならないか?勇者の肩書があれば真聖ゼウス教皇国に対する挑発にはもってこいだろ?副指令は聖女様で。3食昼寝付きで給料弾むぞ。」
「聖女はその意見に賛成です!」
「えー……。いや、お飾りならいいけどさぁ、私リーダーとかそういうの本当に何にもわからないよ?」
「大丈夫大丈夫。基本全部ドローンにするから。もし何かあって対応できないと思ったら地下鉄で逃げれるようにしとくし。」
「それならいいよ。そろそろ隠れるのも飽きて来てたし、お金も自分で稼ぎたかったしね。」
聖教に対して最高の挑発材料をゲットしたぞ!
聖女と勇者に反発されてるなんて知られたら、聖教の正当性が揺らぎかねないからなぁ。
今までは流石に聖教自体は残してやった方が、社会システムの維持にもなっていいかとも思ってたけど、相手が民間人相手にしかけてきたならもう手段なんて選んでやらん!
これで大々的に行動を起こしてくれれば、大義名分が成り立つぜ!
「というわけで、いっかい森の開発を中断し、ここに基地を作ります!どんなものにするかはまだ決めてないけど、何か希望のある人は今言ってくれ!」
折角なんでみんなの意見も聞くことにする俺。
やっぱりこういう大きな建物を作る時には、それぞれの希望をできるだけ反映した方が後々問題も起こり難いだろう。
どんなカッコいい迎撃システムがお好みだい?
「わたくしは回転寿司と言うものがあった方が良いと思いますわ!」
「「「アイス屋とプリン屋を希望します。」」」
「主様主様!焼き肉屋なんてどうでしょうか!?」
「主様主様!お好み焼き屋も捨てがたいよね!」
「え?ダロスのとこって基地にそう言うの作るの?じゃあ私はラーメン屋とケーキ屋かなぁ。」
「そうですねぇ……、ではお蕎麦屋さんがあると嬉しいですねぇ。丼ものもあるタイプの。」
何の話だっけ?
ショッピングモールのフードコートか何か?
「なあダロス、我が思うに、貴様は自分の眷属を甘やかしすぎなのではないか?」
「そんなこと無いよ。いっつもキツキツの暴君だよ。」
「自分の食事もせずに我らの食事を作りながら言われてもなぁ……。」
ルシファーが呆れながら言う。
俺の事は気にせず食べ始めてていいんだぞ?
「高さ100mくらいの人形を作るのは如何でしょう?大きければ大きいほど良いと思います。できれば、腕を飛ばせると嬉しいですね。」
ローラが迎撃用設備の案を出してきた。
人形って食べれただろうかと一瞬思ったけれど、これ軍事基地の設備の話だったな。
こうして、巨大ロボットと多機能食堂を備えた軍事基地建設計画が始動した。
ただ、高さ100mのロボットだと流石に久しぶりの頭ダロス案件かもしれない。




