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機械仕掛けの人形師  作者: 六轟
第4章

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87:

 テレビ放送初日は、最大級の成功と言えるものだった。


 テレビ自体に付けてある視聴率計測器によると、国全体でのテレビの世帯視聴率は98.4%だった。

 この世界初のテレビ放送な上に、チャンネルと言うものが今の所存在していないからこその視聴率でもあるけれども、驚異的な数字だと思う。


 反響もまた凄まじかった。

 翌日には、最初に出てきた国王陛下についてヨイショしようと王都中の貴族たちが王城に詰めかけたり、国中のタルタロスとAPLのプラモやフィギュアが売り切れたり、ダロス出版の本の在庫が全て捌けたりと、政財界問わずの大騒ぎだ。


 中でも特に凄まじかったのは、やはりアイドルデビューした2人組に関する問い合わせだった。

 テレビ放送に合わせて開店したアイドルグッズ専門店には、ディオネとルシファーのグッズを俺自身でもちょっと多すぎるのではないかと思う程の在庫を用意しておいた。

 しかし、翌日の午前中には、在庫も含めて店の商品がすべて売り切れ。

 終いには、店のロゴが入った袋だけでもいいから売ってくれという訳の分からない嘆願まで大量に届けられたらしい。

 アイドルのデビューとしては、大成功なのではないだろうか。


 因みに、ディオネは『ネオン』、ルシファーは『ルー』というアイドルネームをつけてあり、ユニットネームは、女神とエンジェルを組み合わせて『メガエンジェル』となっている。

 これは、ガラテア経由でアフロディーテ様が名付けたものだ。

 この世界にあまり接触しないことで力を蓄えているらしいアフロディーテ様の、久しぶりの接触がコレってどうなんだろう……。


「こんなので、本当に我へ信仰が集まるのか……?」

「神のシステムについてはよくわかんないから何とも言えないけど、よくわかんねーおっさん神よりは、超絶美人のルシファーの方が信仰したいだろ?」

「……そうか……。」


 最近やっと俺が本当に自分の事を美人だと思っていると理解し始めたルシファーは、褒められるたびに素直に照れるようになって可愛い。

 近くにディオネがいれば、すぐに抱きしめられてるのを見ても明らかだ。

 当初のヤサグレ天使っぷりは成りを潜め、今となっては冬場のチワワレベルで大人しい。

 まあ、何かやらかした場合俺の人形操作で即座に拘束されるから、諦めているだけという可能性もないではないけれど、流石に世界を破壊するという行為への情熱は消えてしまったらしい。

 どちらかというとお菓子の方が重要なようだ。

 最近では、俺からおやつ用のお小遣いをもらうために積極的に魔物退治もしていたけれど、それならとアイドルに誘っておいて正解だった。

 本当に正解だった!


「ダロス!もっとルーちゃんと一緒に布教活動したいんだけどいいかな!?」

「ライブの事か?いいぞ。ゲリラライブ用のハコフグも作ったからバンバンやれ。」

「ありがとう!」


 アイドル活動を始めてから、ディオネはとてもご機嫌だ。

 神の世界で共通の嫌な上司みたいな奴に困らされていた仲間同士、割と仲が良かったのもあって、魔王引退後のルシファーとはできるだけ一緒に居たいらしいし。


 他の家族たちにも、テレビは好評だった。

 特に、深夜枠で流した食べ歩き番組が好評で、朝一でそれに似た料理を作らされてしまった。

 ラーメンと餃子って言うんですけど。

 別に俺がこの世界に持ち込んだのではなく、大分前から既に広まっていたらしい。

 カレーライスなんかもあったから、もしかしたら俺やセリカとは別の転生者がいたのかもしれない。

 もしくは、神様たちが興味を持っちゃって使徒に知識だけ与えていたとか?

 セリカとマルタまで通信機使って要求してきたときには驚いたけども。


 最近妊娠したからか、食べ物の好みが変わってトマトばかり食べているイリアがため息をついた。


「にしてものぉ……、自分の親がキメ顔で話しているのを全国民が見ているというのは、中々恥ずかしいもんじゃったな……。」

「王族ってそういうの慣れたもんじゃないのか?」

「あんなにハッキリと顔が見える距離で演説することなど無かろうよ。そう考えたら、なんとなくのう……。」


 まあ、画質が良いせいで毛穴まで見えるからなぁこのテレビ。

 前世でもBDなんかは女優泣かせと言われていた。

 まあ、俺が死んだ頃になるとBDすらもう使ってる人あんまりいなかったけれど。

 レンタルビデオショップからビデオテープが無くなり、取って代わったDVDすら需要が無くてどんどん潰れてたからなぁ……。

 レンタル事業を縮小して、リサイクルショップ部門が好調だからなんとかなってるとか言われてた。


「ダロス様、それでは予定通り今後は私がテレビ局を運営していくという事でよろしいのですね?」

「頼むよイレーヌ。実の所、俺は一視聴者でいたいタイプだから、運営側はしたくないんだよな。」

「わかりました。では、そのようにレギオンたちには伝えておきます。それと、そろそろマルスを返してもらいますね?」

「な!?せっかく久しぶりにゆっくり子供を抱いていられたというのに!」

「ダメです。そろそろおっぱいの時間なんですから。」

「プリシラもです。」

「そんなぁ……。」


 イレーヌとサロメに可愛い可愛い我が子を奪われてしまった。

 きっと今の俺は周りから見ると目からハイライトが消えているように見えるに違いない。


「ジブンたちの赤ちゃんも、生まれたらあんな風に構われちゃうんスかねぇ?」

「……生まれる前から、お腹に話しかけてるくらいだから多分……。」

「妾の場合、国王まで胎児に話しかけにくるぞ?」


 妊婦たちが口々に好き勝手言っている。

 当たり前だろ?

 俺はお父さんだぞ?


「主様主様、そろそろ時間ですよ?」

「主様主様!お弁当の準備もできてるよ!」

「お菓子も倉庫にパンパンに詰めましたわ!足りなくなったらすぐに取りに戻れますけれど!」

「「「アイスクリーム美味しいです。」」」

「小さくなって食べてるせいで、口の周りべたべたですねぇ……。」


 フレイ、ディ、ニルファ、ヒルデたち3姉妹、ローラたちが出発準備を整えて知らせに来た。

 実は、これから俺たちはまたミュルクの森へと向かう。

 前回行った時には、セリカとマルタの救出というアクシデントのせいで中断してしまったけれど、調査と開拓をしなければならないからだ。


 更に、前回とは違って今回は撮影もしようと思ってる。

 開拓の歴史というか、進捗をテレビで流すつもりだ。

 これには、単純に俺仕事してるよアピールの意味もあるけれど、真聖ゼウス教皇国に対するタイムリミットの表示でもある。


 長い間、神聖オリュンポス王国と真聖ゼウス教皇国が戦争をせずにいられたのは、このミュルクの森が緩衝材の役割を果たしていた部分が大きい。

 進軍しようにも、開拓しようにも、強い魔物だらけでままならなかったからだ。

 しかし、それがゴリゴリと神聖オリュンポス王国側から拓かれて行ったらどうなるだろうか?


 いや、実の所別にそれで戦争を吹っ掛けるつもりとか言うわけではないんだけれど。

 ただ、それをテレビで流し続けていれば、もしかしたら相手は何か勘違いをして、こちらに対して何かの行動を起こすかもしれない。

 その場合、あの国にある聖教本部をどさくさ紛れに潰す口実もできるかもなぁとは思っているが、まあその程度の軽い仕掛けだ。

 相手が行動を起こしても起こさなくても構わない。

 例え、ディオネとルシファーがガチギレするほど嫌っている神の国だとしても、聖女であるイリアに役立たずの護衛騎士しかつけなかったとしても、俺が保護した勇者と聖女をまともな飯も食えない状況にしてたとしても、言い訳のしようもないほどのケンカを売ってきたりしない限りは、平和でいてくれるならそれに越した事は無いと思ってはいる。


 まあ、でっけーロボットだらけの軍事基地みたいなのはカッコよく作りたいと思ってるけれど、それに周りが脅威を感じて攻めてきたとしても俺のせいじゃないと思う。


「ダロス!我も連れていけ!もうしばらくあんなフリフリ衣装で歌ったり踊ったりなんてしたくない!」

「えー!?一緒にゲリラ布教活動やろうよルーちゃん!」


 ルシファーも参加したいようだ。

 まあ前回も連れて行ったし、しばらくの間流す分の動画も撮影し終わっているからそれ自体は構わないけども……。


「連れて行くのはいいけどさ、途中から勇者と聖女も一緒だけど大丈夫か?」

「なに!?……いや、問題ない!エギルギアさえあれば何を恐れる物か!」


 今のルシファーにとって、勇者よりアイドル活動の方が恐ろしいらしい。


「じゃあルシファーも参加で。ディオネはテレビ局の守りを頼むよ。」

「そんなー!?」


 テレビ局とは、公爵家の裏手の森に作られた隠れ家であるダロスフォレストハウスの隣に新しく作られた建物だ。

 現在、その中ではレギオンたち200人が頑張ってテレビ放送を行っている。

 次世代のアイドルを探すオーディションをフェリシアとサンドラ主導でやり始めたらしいけれど、水着審査等もあって男子禁制らしく俺も詳しくは知らない。

 とにかく、そこそこの人数がいるので、ドローンタルタロス数機以外にも守りがいてくれるとありがたかった。

 一番狙われやすいのがアイドルのディオネかもしれないけれど……。


「それじゃあ行ってきます!」

「「「いってらっしゃいませ。」」」


 家族たちに見送られ、俺はキャンピングハコフグに乗り込む。

 足の踏み場もないほどに食料が積み込まれているけれど、気にしないことにした。





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