表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの人形師  作者: 六轟
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/110

86:

『ふむ……もう始まっておるのか?親愛なる我が神聖オリュンポス王国全ての者たちよ!今宵、歴史に残るこの瞬間を共に目撃できることを誇りに思う!』


 この国の王様を名乗る人がテレビに映ってる。

 この世界に召喚されてから、まず見る事なんて無いと思っていた液晶テレビ?が、今まさに目の前にあった。

 もってきたのはダロスだ。

 あの人、どう考えてもやりたい放題し過ぎだと思う。


『今、ワシは王都におる!王城の一室に作られた特設スタジオより皆に語り掛けておる!ワシの顔を直接見たことが無い者は多いだろう!残念な事に、広大な神聖オリュンポス王国はとても広く、全ての国民の元へ赴くことは難しい!しかし!これからは、このテレビというもので、皆へ声と姿を届けることができるようになった!』


 これって電気で動いてるのかな?

 ケーブルの類は繋がってない……。

 ってことはアンテナすらないの?

 魔法的な技術で作られてるってことかなぁ……。

 つなぎ目とかも無いから中身がどうなってるのか見当もつかない。

 一見すると1枚の板にしか見えないけど、実は本当にただの板に映像を映してるだけかもしれない。


『情報とは鮮度である!今まで国の端から端まで伝えるのに数日かかっていたものが、このテレビによって一瞬で伝えられるようになった!しかも、これは戦いのための技術ではなく、皆に知識や娯楽を提供するために使われる!世界最高にして、もっとも神の慈愛に満ちた情報技術が!我が国より生み出されたのだ!』


 我が国っていうか、ダロスが作ったんだろうけれど、本人は別にそれを宣伝したいわけではないんだろうなぁ。


『今、この時より!テレビの時代が始まる!ドントミスイット!』


 何がドントミスイットだ。

 これ絶対ダロスが教えたでしょ。


 王様が色々言った後、映像が切り替わった。

 暗いステージに、2人のシルエットが浮かび上がる。

 程なく、この世界ではまず聞かないであろうJ-POPっぽい曲が流れだした。

 スポットライトに照らされ現れたのは、2人の美少女。


 1人は見たことが無い。

 ショートカットでボーイッシュな印象がする女の子だ。

 学校に居たら王子様とか呼ばれてそう。


 そしてもう1人は、ミュルクの森を突破しようとして死にかけてた時、私たちを助けてくれたあの娘だ。

 背中に大きな黒い翼をもった、現実味がないほど奇麗な女の子。

 その時にはとっても凛々しくて、クールな感じに見えたけれど、その後一緒にいる間は凄く無口……というより怯えられてた気がする。

 極度の人見知りなのかもしれない。


 そんな娘が、今テレビで踊って歌っている。

 ちょっと恥ずかしそうだけど、それがまた魅力的に見える。

 きっと、今この瞬間、この国の人たちはこの2人に夢中になっていると思う。

 ダロスは、


「女神と天使をアイドルにするから!」


 とか言ってたけれど、この事だったんだ……。

 ほんと、あんな美人を2人もどっから連れてきたんだか……。


 いや、2人どころか、ダロスの周りには何故かやけに美人がいっぱいいる。

 女好きだって噂だけど、少なくとも私とマルタが気絶している間に乱暴された形跡は無かった。

 だから一応信用はしてるけど、女の子を何人も妊娠させている事実は変えられない。

 一体何人の女の子を誑かしているのか。

 私だって、そりゃ助けてもらえたってわかったときはちょっと危なかった。


 そうこうしているうちに、画面の中の2人がキメポーズを取り、続けて2曲目が始まった。

 デビュー時点から持ち歌2曲もあるなんて、実はすごいんじゃないだろうか?


「なんだか、アイドルって凄いんですねぇ……。」


 隣で見ていたマルタがしみじみとつぶやく。

 そりゃ、この世界の人たちがある日突然こんなものを見せられたら、唖然とするしかないだろう。

 何もかもが初めて見るものなのに、それを畳みかけるように見せ続けられたんだから。

 この世界に召喚されてすぐの頃の私みたいなものだ。


 だけど、何故だろう。

 あの天使みたいな娘をみていると、何故か心がざわつく。

 ドキドキして、体の動きも良くなるような……。

 私って男が好きなんだと思ってたけれど、もしかしたら女が好きだったのかな……?


「何故だかはわかりませんが、ルーちゃんさんを見るとドキドキしますよねぇ……。」

「……え?マルタもそうなの?」

「はい……あら?もしかしてセリカもなんですか?」


 まさか、マルタもそうなの?

 私たち揃って……その……そっちの気が……?


「もしかして、私たちもああいう風になりたいんでしょうか?強くてカッコよくて、奇麗で、だけど可愛さもあって、そして男性と対等の友達になれるような女の子に……。」

「……あー、そうかも?」


 そうかもしれない。

 うんそうだ。

 すぐに恋愛に結び付けるのは思春期の悪いクセだ。

 きっと、初めて出会った時の印象が強すぎるんだ。

 ボロボロの私たちの所に舞い降りた黒翼の天使なんて、どこの少女マンガかって話だし。

 あの翼は、ダロス曰く魔力で作ってるらしいから、本物の天使ではないんだろうけれど……。


 私も結構美人だって言われてきたけれど、あの娘は次元が違う。

 本当に天使とか女神だって言われても信じちゃいそうだ。


 あーあ、勇者なんてジョブ貰っても全然嬉しくないや。

 可愛くないし。

 聖女ならまだ奇麗な感じがするけれど、勇者って他人の家に入り込んで壺とか割りまくったり、よくわからない魔王とか言うのと無理やり戦わされる役職だし。


 私が、画面の中で踊っているあの娘みたいな服を着て歌って踊ってたら、周りからどう見えるんだろう?

 もしマルタがそうなってたら……、あ、マルタは割と違和感ないかも?

 私は、似合わないなぁ……。


「マルタってさ、歌とか踊りは得意だったりするの?」

「いえ全く。家は小さくて一人になれる場所なんてありませんでしたし、人前で歌ったり踊ったりって恥ずかしくありませんか?」

「あ、わかる。」


 同級生にカラオケへ連れていかれて、自分の番が回ってきたときのあの緊張感は忘れない。

 そもそも歌うのが嫌なら行くなって話だけど、あまり断り続けるのも悪いかと思って行っただけだ。

 女子高生と言うのは大変なんだよ。


「セリカもあのような歌を知っているのですか?」

「あー、まあ、私はアニメとかゲームの曲ばっかりだけどね。」

「アニメとは、このアイドルのコーナーが終わってから流すとダロス様がおっしゃっていたものですか?」


 そう、あの変人はこの世界でアニメーションを作り出したらしい。

 まあ、紙がいっぱいあれば初歩的な物なら作れるでしょうけど、きっとそういう次元の物じゃないんだろう。

 いったいどんなものを作ったのか。

 作画用のPCなんて無いだろうし、精々セル画だろうか?


 あれ?まさかPC作ってないよね?

 いやでも、ロボットよりはPCの方が簡単に作れちゃう……?

 なんだろう、考えたら怖くなってきた……。

 そもそもテレビ局も作ってたらしいから、十分考えられる……。


「あ!始まったみたいですよ!」

「え?……うわぁ……。」


 いつの間にかライブは終わり、本当にアニメが始まっていた。

 しかもロボットアニメ。

 見た所、パラパラ漫画でもセル画でもない。

 デジタル作画のアニメのようだ。

 やりやがったなアイツ……。

 流石に3DCGは使えなかったようだけど。

 いや違うなこれ……3DCGは使えなかったんじゃなくて敢えて使わなかったって事な気がする。


「成程、動く絵とは凄いですねぇ。どんな魔術を用いて作っているんでしょう?」

「私の元の世界だと、大抵はマンパワーで解決してたらしいけど。」

「マンパワー……強そうな魔術ですねぇ。」


 違う。

 魔力なんて使ってない。

 人力だ。

 あとは電力。


「でもさ、これで本当に聖教の力なんて削げるの?私は懐かしい感じがして嬉しいけどさ。」


 テレビでは、びっくりするほど滑らかなロボットの戦闘シーンが展開されていた。

 どれだけの費用と人員を投入してるんだろう。


「セリカの世界では当たり前の物なのかもしれませんが、この世界においては驚異的な物です。きっと、今この国の方々は、度肝を抜かれているのではないでしょうか?人にとって神の存在とは、とても移ろいやすい物です。実際に神を見たことがある者なんて早々いませんから。私は、神の存在を直接感じ取ることもできますが、一般の方々からしたらゼウス様よりも、むしろ先ほどのアイドルの2人の方が信仰対象として印象深いのではないでしょうか?もともと、真聖ゼウス教皇国以外の聖教の信者の大半は、ケガや病気を治してくれるから信仰しているという方々が殆どらしいですから、目の前にそれを上回る衝撃的な物を見せられたら、そちらに心をやってしまうのも無理在りませんよ。特に、この技術の提供者が、神から祝福を受けていると噂のダロス様なのですから。」

「すごい、マルタがなんか聖教の偉い人みたい。」

「偉い人でしたよ?2位だったり3位だったり安定しませんけれど。今はただの居候ですが……。」


 最近、食いしん坊な所ばっかり見せられてて忘れてたけど、聖女って偉いんだった。

 ジャガイモ食を辞めて美味しい物を思う存分食べられるようになったマルタは、肌艶も良くなるし出る所も出るし、女の子としての魅力がどんどん上がっている。

 ダロスの視線もよくマルタの胸に吸い込まれてるし、それに気がついたマルタがニヤッとしてることもある。

 ただ、そろそろ控えめにしておかないと、出ちゃいけない所まで出て来そうで怖い。

 私の2倍は食べてるんだもんこの聖女。

 しかも夜中にこっそり食べてたりもするから……。


「アンタさ、そろそろ食べる量減らさないと太るよ?」

「そうでしょうか……?食べれば食べる程胸が大きくなっていくので、面白かったのですが……。」

「私はいいけど、その発言聞いたら多分10人に9人の女はアンタを敵認定するよ?」

「まあ怖い!襲われた時のために食べて力をつけなければ……。ダロス様によると、テレビを見ている時にはコーラとポテチがお勧めだそうですよ?」


 そっか。

 こうやって聖教の信者は減っていくんだ……。


 私は、そんなどうでもいい真実を実感しながら、自分用のカップ焼きそばにお湯を入れる。

 いつの間にかロボットアニメは終わり、なんだかドロドロの同性愛アニメが始まっていたけれど、ダロスは一体何教と戦うつもりなんだろう?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ