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機械仕掛けの人形師  作者: 六轟
第4章

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77/110

77:

「んで、アンタは何者?なんで私たち助けてくれたの?(ズルズル」

「ダメですよ勇者様。助けて頂いた恩人にアンタなんて……。(ズルズル」

「結局お前も食ってんじゃん。」


 現在、ミュルクの森から王都に帰っている途中のダロス一行ですよろしく!

 折角領地の視察に来たのにそれどころじゃ無い案件が舞い込んできたため撤退中。

 勇者は天ぷらそばをペロっと平らげきつねうどん中。

 聖女マルタは、カップ焼きそばを10個で切り上げて、シーフードラーメンに取り掛かっている。


 とりあえず俺の名前と、あの場所には調査に来てた事だけを2人に教えておいた。


「2人は、あの森を走り抜けてからどうするつもりだったんだ?目的地があるならこのまま送っていくぞ?」


 てか面倒な事になる前にこのまま他国にでも行ってくんねーかな?


「いえ、とにかく逃げる事しか考えていませんでした……。」

「あの悪趣味な部屋から逃げ出した時に考えてたのは、もう1人の聖女様がいるっていう神聖オリュンポス王国にいってみよっかなーくらいのノリだったもんね。方向はわかってるんだし、勇者の私が聖女様担いで走ればなんとかなるでしょって思って……。」

「清々しいほどにノープランだな。」


 まずい……まずいぞ……。

 これは明らかに面倒な事に巻き込まれる前兆だ……。

 何より、この2人滅茶苦茶美人だ!

 ってことはだよ?

 俺がこの2人と新しく仲良くなるとバランス調整でまた更に面倒な事になる可能性が大だ!


「って、そう言えばもう1人の聖女ってイリアの事か?」


 俺の中で聖女といえばイリアなんだけど、その認識で合ってるんだろうか?


「イリア?うーん……確かそんな名前だったと思う。神聖オリュンポス王国の王女様だって聞いたけど。」

「私は一度会ったことがありますよ?とても奇麗な方でした。ただ、男性はもちろん女性も寄せ付けないオーラを放っていましたね。最近だと、教会から派遣されていた護衛の聖騎士も引き上げさせたとか。」


 イリアってそんなオーラ出してたっけ?

 最初に会ったのが誘拐されて縛られてる状態だったからなぁ……。

 それ以降は仲間認定されたみたいで結構仲良かったし……。

 ただその前はボッチだったらしいからなぁ……。


「まあ、聖女のジョブを持っているかどうかに関わらず、聖女に選ばれた方はどの国でも似たような物ですけどねー。上に行けば行くほど欲にまみれた者ばかりで……。周りは基本全て敵かゴミですし。」

「聖女様……あ、こっちの聖女様もあのお城だとすっごい警戒心ピリピリだったもんね。微笑んでも心は全く笑ってない感じだったし。」

「えぇ。聖教なんてクソ食らえって思ってました。……ところで、いつになったら私の事を名前で呼んでくださるんですか?」

「……聖女様の名前ってなんだっけ?」

「……友達って言ったのに……。」

「ごめんって!だって聖女様一回も私に名乗って無くない!?」

「まあそうなのですけども。私の名前より聖女という肩書が重要な場所でしたしね。それと、私も勇者様の名前を知りません!」


 女の子が仲良くしてるのを見るの好きだなぁ……。

 俺がただの傍観者で良いならだけど……。


「私の名前はマルタです。以後はマルタと呼んでください。敬称も何もいりません。友達らしく親愛を込めてマルタで。」

「わかったって……。私はセリカ・クサナギ。クサナギは姓だけど、別に貴族とかじゃないよ。」


 マルタの名前は聞いてたけど、勇者の方はセリカ・クサナギか。

 セリカが名前で、クサナギが姓……。


「くさなぎ……草薙?もしかして日本人か?」

「……は!?アンタ日本のこと知ってんの!?」

「ですからセリカ、ダロス様の事をアンタと呼んではいけません。」


 俺以外にも他の世界から呼ばれた奴はいるかもしれないと思わないでもなかったけれど、まさか勇者が日本人だとは思わなかったなぁ。


「どうやったら元の世界に帰れるの!?私この世界に気がついたら召喚されてて、召喚した奴らも元の世界に帰る方法わからないらしいんだけど!」

「俺も帰る方法は知らないぞ。この体はこの世界の物だし、俺は魂だけの状態でこっちきてるから。仮に帰っても俺死んでるらしいしなぁ……。」

「そっか……。でも日本人なんだよね?……てかちょっと待って、よく考えたらこのカップ麺とかも普通に食べてたけど、元の世界の物だよね?自分で作ったの?」

「うん。だってさ、たまに食べたくならない?」

「そんな微妙な動機で作れるもんなの……?」


 便利なジョブ持ってて、何となくでも仕組みがわかってればな!

 工場見学系の動画とかテレビ番組は見とくと良いぞ?

 あとは、サバイバル系の動画もたまに役に立つ。

 どんな寄生虫や毒があるかわからん虫を食おうとは思わないけれど。

 ガムテープは正義。


 俺は、この世界に来ることになった経緯と、こっちに来てから何があったのかを色々端折って説明した。

 神人形師というジョブに関しては、念のためロボットを作れるだけのジョブって事にしておいたけど。

 セリカによると、俺が死んだのは大震災と呼ばれるような大きさの地震だったらしい。

 日本中でそこそこの人数が亡くなったらしいけれど、セリカは詳しい事を知らなかった。

 コイツはもうちょっと社会の情報を入手するべきだと思う。


「因みに今正式な妻が3人いて、婚約者が2人。子供は2人生れてる。あと3人妊娠させてる。」

「ケダモノじゃん!」

「妻のうち1人はイリアな。」

「アンタ本当に聖女様に何してんの!?」


 だってさぁ……。

 可愛かったんだもん……。

 神様にも子供いっぱい作れって言われたし……。


 勇者様があーだこーだと顔真っ赤にしてキレている。

 しかし、息切れして罵倒が中断したタイミングで、マルタが一石を投入してきた。


「……あ、あの、つまり、ダロス様はそう言う事をした……と言う事ですよね?」

「え?うん。ヤればできるよ。」

「具体的には!?まず何からするんですか!?」

「そうだなぁ……みんな最初はキスを10分くらいしたがるかなぁ……。」

「そこまでにしとけよ変態!」


 和やかに雑談をしながら王都へと向かう。

 体力が落ちている者を乗せて無理して走ることもできなかったので、どうしてもその日のうちに王都入りすることができず、途中でキャンプした。

 夕食は、マルタ以外の希望でまたカレーライスになった。

 2日続けて……?と思ったのは俺だけだったようで、全員特に問題なく完食していた。

 特に、セリカとマルタは泣きながら食べていた。

 薄味ジャガイモで生きてきたマルタはもちろん、数か月の間、元の世界の食事が摂れていなかったらしいセリカは限界だったらしい。


 ただ、案外元の世界と同じ料理もこの世界にはあったと言う事を教えてやると、数十秒呆然とした後、ろくな飯を食わせなかった聖教ぶっ潰そうかな!?とキレていた。

 おっちゃん……なんかうまいもん食わせたるからな……。


 夜、見張りの必要もないので皆寝静まっている中、尿意を催し起きる俺。

 トイレに行ったあと、外で夜の空気を感じ悦に浸る。

 なんか意識が高い気がするんだ……。

 さて、明日はあの新しい仲間に何を食わせてやろうか……。

 エビドリアが食いたいとか言ってたけど、エビって川えびでもいいんだろうか……。

 海のエビは手に入らないからなぁ……。

 そもそもこの世界の海ってどこにあるんだろう……。

 いつか皆を連れてってやりたいなぁ……。


「貴様!ひょっとしなくてもあの勇者と聖女を既に仲間だと思っていないか!?」

「あ、ルーちゃんも起きたんだ?確かになんか普通に受け入れてることに今気がついてビビったよ俺。」

「我ずっと震えてたんだが!?貴様の後ろに隠れてたんだが!?今だって寝れなくて隠れてたんだが!?」

「アレって怖がってたのか?てっきりとうとうルシファーのデレが来たかなってちょっとドキドキしてた……。」

「なんだデレって!?」


 その後もしばらく抗議が続いていたけれど、2人きりで話すチャンスなので、勇者や聖女の事を聞いてみることにした。

 神様では無いし、勇者と言うものが成立したのはルシファーが堕天してかららしいので、正確な情報とは限らないけれど、それでも聞くだけ聞いておこう。

 特に、ボロッボロにされた側の意見は貴重だ。


「そもそもの話なんだけど、勇者とか聖女って何なの?」

「漠然とした質問だな貴様……。まあいい、我が知っている事であれば教えてやろう。」


 ルシファーが把握している限りだと、勇者と言うのは神が召喚した別世界の人間に与えられるジョブであり、魔王を倒すために作り上げた厭らしい物らしい。

 魔王と戦う時に限り、身体能力が100倍になる。

 それだけではなく、見た魔法はそのまま自分も使えるようになったり、普段の位階上昇時における身体能力の上昇値も物凄く多いんだとか。

 魔王をさっさと倒せるようにどこかの神が作り上げた最終兵器こそ勇者だそうだ。


 一方聖女は、この世界の人間に低確率で与えられるジョブであり、回復系のスキルや魔法、魔術に精通できる。

 と言っても、能力には歴代聖女でもばらつきがあり、大した回復能力も無い者もいれば、光魔法で攻撃まで繰り出す聖女までいたらしい。

 これは、本人の能力だけではなく、担当する神からの力の譲渡量によっても変わってくるそうだ。

 イリアの場合も、ディオーネー様の使徒に選ばれてから一気に上がったって言ってたし、そういうもんなんだろう。


「我も直接聖女の担当をしていたわけでもないし、勇者に関しては殴られながら検証したものに過ぎないのだがな……。」

「成程なぁ。まあでも、今回の勇者と聖女は両方人形化が完了しているし、最悪の場合でもルシファーは守れると思うよ。不安なら俺の後ろに隠れてればいいさ。」

「……わかった。」


 それきり特に何も話さなくなるルシファー。

 安心したのかと思いきや、本当に俺の後ろに隠れながら歩いているのはなんなんですか?

 そのまま一緒のベッドに入ってくるのはなんなんですか?

 狭いよ?誘ってんの?


 まあ割と震えてて冗談も言えなくなるんだけども。

 前の勇者はそんなに怖い奴だったんだろうか?

 そう思いながら、仕方なく窮屈さを我慢して寝ることにした。

 

 翌朝、黒い天使に寝ながら蹴り落とされて起きる。

 解せぬ。



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