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尿意によって早朝に目が覚めたダロスです。
己を解き放つと感じるこのブルっとする感覚は、尿が体外に排出される事によって体温が少し下がるせいで起きるそうです。
折角早く目が覚めたからと、早朝の大自然を堪能してみることにした。
自作したマグカップ型タンブラー(オリハルコン製)にコーヒーを入れて飲んでみます。
すごく苦い。
砂糖を入れ忘れ、牛乳に関しては冷蔵庫に入れるのを忘れていたという失態のせいで、ブラックで飲んでしまった。
ブラックで飲む意識高い系ダロスという事で自分を納得させる。
はぁ……落ち着くわぁ早朝の大森林……。
例え中に入ればヤベェ魔物だらけだとしても、朝もやに包まれた森というのはいいねぇ……。
デカいクレーターに関しては、隕石が落ちたって事にしておこうかな……。
…………ドオオオオオオン!
遠くから轟音が聞こえる。
これは爆発音だろうか?
爆発を起こす魔物でもいたらやだなぁ……。
この森の中に自分から入っていく人間なんて早々いないだろうし、ましてや生きて帰ってくる奴なんてもっと少ないだろう。
だから、この森の中に住む魔物について詳しく知っている奴なんて多分一人もいない。
何が出てきてもいいように心構えしておかないといけない。
そして、面倒になったら森ごと焼き払うくらいの適当さでいないとやってらんない。
…………ドオオオオオオン!
先ほどより爆発音が近づいた気がする。
こっちに移動しているんだろうか?
「貴様、起きていたか。」
「あ、ルーちゃんおはよう。」
「……もう、一々突っ込むのも面倒だ……。」
最近ふにゃけていたルシファーだけど、なんだか今のルシファーはキリっとしている。
何かあったか?
「むぅ?」
「どうした?」
「……いや、何か嫌な予感がするというか……、ところであの爆発の主は助けに行かなくていいのか?」
「助ける?どういうこと?」
「森の中で人が戦っているようだから一応の確認だ。」
「あれ人なの?この森の中入るバカなんている?」
「我に聞かれても困るが、アレは光魔法の一つだな。」
へぇ。
光魔法なんてあるのか。
なんかカッコヨ。
「ってこんなこと言ってる場合じゃねぇな!助けに行くぞ!」
「やれやれだな人間め。」
案外面倒見いいよねルーちゃん。
すぐさま全員を叩き起こし移動を開始する。
大木が連なる大樹海の中を駆け抜けるのは中々大変だけれど、俺のハコフグは器用に駆け抜けていく。
まあ、避けられない木をなぎ倒してるだけなんだけど。
ローラの白タロスは、俺とは対照的に華麗に木々の間と縫うように走り回り、APL1は開き直って木の上を飛んでいる。
しばらく走ると、センサーが人間の反応を捉えた。
どうやら、大型の魔獣に追われているらしい。
速さから言ってこちらと合流する前に魔獣に追いつかれてしまうかもしれない。
センサーを頼りにハコフグの上部に取り付けた100mm無反動砲で狙いを定める。
ただ、木の向こう側だとどんな弾の逸れ方をするかわからないので、射線が通る場所まで走らないといけない。
何とか間に合ってほしいと思っていると、どうやら走っていた人が転んだようだ。
感じからして、かなり痛そうな転び方だった。
「ルシファー!機外に出て彼らの応急処置頼む!重症だったら俺が治すから、最悪でも俺が対応できるまで延命して!」
「よかろう!」
転んだ人たちに魔獣が迫る。
射線が通るまであと1m……50cm……今!
「消し飛べ!」
ハコフグから放たれた砲弾は正確無比に魔獣の頭部に命中し、そのまま体を液体にまで破壊した。
他の魔獣と転んでいる2人の間にハコフグで入り込む。
どうやら2人とも生きているらしい。
「おーギリギリ!大丈夫かそこの2人!?ちょっとそこで大人しくしててくれ!」
ルシファーが2人の元に飛んで行ってくれたようなので、こっちは魔獣を片付ける。
既にニルファとローラが戦闘を始めていて、圧倒言う間に数を減らしていった。
というか俺が手を出す間もない。
仕方ないので、転んでた2人の治療に向かう事にした。
「結構ケガ酷いみたいだな……。こっちの修道服みたいなの着てる女の子の方が重症っぽいからこっちを先に治療する!ルシファーはもう片方の子をハコフグのベッドに運んで!」
「心得た!」
すぐに人形生成と神粘土で傷を治す。
骨も何か所か折れてたし、内臓も一部損傷していたけれど、傷跡1つ残さず治してやった。
魔力がかなり減っているようだけれど、それは寝てれば回復するだろう。
俺は、修道服の女の子を抱き上げハコフグの中に向かう。
「あのっ!聖女様……!無事……?」
先にルシファーが運び込んだ女の子が必死に話しかけてくる。
ん?てか聖女様?
「こっちの娘は聖女なの?傷は全部治したよ。ただ魔力切れだからしばらく寝かせておかないとだけど。」
「そっか……!よかった……!よかったぁああああ……!」
命からがらといった感じだったから無理もないかもだけれど、安心したのか泣き出してしまった。
っと思ったらすぐ気絶するように寝た。
よっぽど限界だったんだろう。
なんでこんなとこに女の子が2人でいたのか知らないけれど、間に合ってよかった。
大人しくしてくれているうちに、人形生成で治してしまう事にしよう。
「……だ……ダロス……ちょっと……。」
「どうした!?お前史上最悪に顔色悪いぞルシファー!?」
「こ……こいっ、コイツ……勇者……かも……!?」
「んえ!?」
勇者!?
魔王絶対殺すマンと噂の!?
魔王と一緒に居たら俺も殺される!?
「あ、でも大丈夫だわ。安心しろ。」
「何故そんなことが言える!?勇者だぞ!?」
「いや、今この娘の体人形生成で治してそのままだから、俺の支配下にあるし。」
「あぁ……。貴様の能力エグくないか……?」
でしょ?自慢なの。
エロ本の登場人物じゃなかったことを感謝しろよ?
「……ん……んん?」
「あ、起きた?おはよう。」
「んー……。おはようございます……。」
数時間後、勇者(仮)が目を覚ました。
寝起きはあまり良くないらしい。
「……あれ?動けない……。」
「ごめんな?起き抜けで錯乱して暴れられても困るから拘束してるんだわ。」
「……アンタ誰?私に何するつもり?」
「エッチな事してもいい?」
「ダメに決まってんでしょ!」
うん、魔力は回復しているようだな。
怯えながらも強気な態度で非常に宜しい。
囚われのヒロイン感マシマシ。
多分5人組だと赤系で使える能力は炎。
「落ち着け。お前が暴れないって約束してくれるなら拘束を解く。」
「ちょっと!聖女様は無事なんでしょうね!?」
「……無事、なんだけど……うーん……。」
「アンタ何かしたの!?あの娘になんかあったら殺してやるから!!」
俺は何もしてない。
ただお腹が空いてるようだったから食料を与えただけ。
「騒がしいですよ勇者様。私は無事です。(ズルズル」
「本当!?本当に本当!?」
「はい、本当に本当です。(ズルズル」
「……ねぇ、それ何食べてるの?」
「カップ焼きそばと言うそうですよ?これで10個目です。」
「は?」
聖女様は、ジャンクフードに目覚めてしまった。
聖女様は、マヨネーズに目覚めてしまった。
聖女様は、コーラに目覚めてしまった。




