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機械仕掛けの人形師  作者: 六轟
第3章

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「僕だって止めたんだよ?神なんてろくでもない奴が多いし、理詰めで説教した所で大抵全く意に介さないんだから。そりゃ僕だって彼女の気持ちもわかるよ?あくびでもするくらいの気軽さで人間滅ぼそうとするような奴らから好き勝手言われ続けて数千年も仕事してたら誰でも嫌になるって。でもさ、彼女は彼女で我慢の限界だったらしくてさ。たとえ負けたとしてもあのクソ神たちに目に物見せないと気が済まないんです!って言って家出しちゃってさ。気がついたら堕天して魔王軍なんか作っちゃってるしさ。彼女って魔物の個体数調整とかも担当させられてたから、魔物を生み出したり指示出したりなんてのもお手の物だったんだよね。それでこの世界をめちゃめちゃに破壊しようとしてたんだけど、神々が本腰入れて討伐しに来たら、いくら最高位の天使でも勝てるわけないんだよね。最後はさ、ボロボロになって人間の領域の片隅で蹲ってたんだよ。それがあまりに不憫で可哀想でさ。僕の使徒に指示して、彼女が殺される前に封印措置を施してもらったんだ。人間たちにとってすごく便利な状態での封印物だから何千年経っても大事にしてもらえると思ってね。その位経てば神々も飽きてルシファー虐め辞めてるだろうと思ったんだよね。なのに、まさか封印が自然に解けるのを待たずにあんなトリッキーな方法で解放されちゃうなんて思わないでしょ?とはいえ対策を講じないといけないと思ってさ、私もすぐ動いたわけ。でも、魔王であると判定できるような状態までには回復できてなかったから魔王特例条項を発動できなくてさ。あ、この特例条項って言うのは、魔王と勇者それぞれに有ってさ、魔王と勇者が生まれたら全世界に宣誓を届ける権利をそれぞれの種族の管理神が持てるって言うやつなんだけどね。そういえば、特例条項の前に魔王と勇者について全然教えてなかったね。魔王はルシファーが自分で名乗ったのが始まりなんだけどさ、そのルシファーにキレた神々が魔王に対してすごい能力を発揮できるっていう反則スキルをてんこ盛りにしたジョブを作っちゃったんだよ。それが勇者でさ、魔王が勝てる見込みなんて殆ど無いんだ。この時点で神なんてクソだって我ながら思っちゃうけども。まあそんなこんなで、魔王扱いもできない程度に弱体化してる彼女でも野放しにはできなくて、僕も人類……というかダロスに肩入れすることにしたんだよ。その原因を作ったのが、僕が使徒にしたバカ王子って言うのも責任感じてたしさ。ルシファーの事は置いておいても、アフロディーテに君との情事を自慢されて悔しかったのもあったしね。だからダロスに孕まされたいって言うのは本心だよ?今ここにいる僕は、女神の意識を持っていただけのただの女の子だからさ。でもそれと同時にルシファーを助けたいって言うのと、彼女にこれ以上この世界を滅茶苦茶にさせたくないっていう気持ちもあるってだけで。僕がこっちの世界に顕現してから結構ダロスのために頑張ったんだよ?だから許してくれない?おっぱい揉んでいいからさ!」

「長い。」


 長い説明と言い訳を最後まで我慢して聞いたダロスです。

 とりあえず、魔王に情状酌量の余地がある事はわかった。

 それはそれとして殴りに行かないといけない。

 ただ、アルゼがどういう状態なのかがわからないのがなぁ。

 ルシファーの言う事を素直に聞いてるなら一緒に殴らないといけないけど、洗脳状態だとしたら助けてやらないといけない。

 できれば助けてやりたいとは思う。

 可愛かったし、おっぱい大きかったし。


 ルシファーもまだ殺したくなるほど俺に何かやらかしたわけでもないから、助けてやらないといけないと思っている。

 だけど、俺の大切な家族に危害を加えたことは許せん。

 どんなに可哀想な身の上だったとしても、俺の中の優先順位は家族が上だ。

 サロメとイレーヌを苦しめた責任は確実にとらせる。


「アルゼは、自分の意志で俺に関する記憶の消去なんてしているのか?」

「魔王を復活させたとしても、人間のアルゼにはメリットなんて無い。人類皆消えて無くなれって思ってるなら話は別だけど、一緒に何人かと家に住む程度には人類に絶望してないみたいだし。魔王の力が強まったらアルゼ自身の自我が消えちゃうのは、体内に魔王がいるって自覚するほどに支配されているなら体感的になんとなくわかるはず。多少魔王の力を使いたいって程度なら今の状態でも十分だろうしね。だから現時点では、魔王に憑りつかれてるって事すら明確に認識できていなんだと思う。多分だけど、そうするべきって言う風に記憶を多少弄られてるんじゃないかな?今のルシファーの力だと、完全な洗脳状態にはできないと思うんだよね。たまたまエネルギーとして対象者に吸収されて、さらに相性のいい淫魔なんてジョブの持ち主だったからこそ干渉できてるだけで。それに、魔王の意思が強く表面に出てて、本気でダロスにケンカを売る気ならもっと直接的な行動をしたと思う。神嫌いのルシファーが神の使徒相手に手加減するとは思えないし。だから、まだかなりアルゼの意識が強くて、本人はあんまりダロスに対して敵意がなくて魔王の指示に完全に従わせられるわけじゃないけど、それでも何か取引材料にできるような行為として、ダロスに関する記憶を奪ったんじゃないかなぁ?でも、ダロスが家族に何かされたからって大人しく言う事聞くと思ってる辺り大して情報を得ている訳じゃないんだろうね。」

「ふーん……。」


 人間の枠組みに近い人形に入ってるとは言え、神様の言う事は長くてよくわからない。

 だから……。


「とりあえずアルゼの体からその魔王引っ張り出して殴るぞ。」

「あー……うん。それでいいんじゃないかな。できれば優しくしてあげてくれると嬉しいよ。」


 面倒だから、事の次第の説明と反省の言葉は本人……本天使?から聞こう。

 ディオネ曰く、あっちはディオネが女神だって気がついていたみたいだし、俺たちがこの術を逆探知して自分にたどり着くくらい造作もない事も見越して計画立てているんだろう。

 古代の魔道具の修理を要求されるのか、もっと直接的な協力を求められるのか知らんが、無視してパワーで解決するつもりだ。

 オレムズカシイコトワカラナイ。


「ナナセとガラテアは、結界でこの家の家族の保護を頼む。」

「了解っス!」

「……うん。」


「ディとフレイは、もっと別の攻め方……例えば王都に魔物をけしかけたりなんて事がされた時に対応できるように待機。ニルファたちはそれの補助。」

「「「はーい!」」」


「ディオネは、俺と一緒に王城行くぞ。事情を知ってる奴がいた方が良いだろうし。」

「わかった!」


「エリンたちは、まだ何が何だかわからないと思うけど、気にせずいつも通り家事をお願いします。」

「「わかりました!」」


「イレーヌ。不安だと思うけど、今日中に片を付けてくるから安心して待っててくれ。」

「はい。ご武運を。」


「……サロメ、行ってくるよ。」


 そう言って、サロメにキスをしてから家を出る。

 寝ている妻にキスをして出かけるのってちょっと憧れだったんだよな。

 目覚めた時に、また俺を好きでいてくれたら嬉しい。




 アルゼへの対応にロボットを使うつもりはない。

 王城にいる以上、下手にタルタロスやAPLで暴れたら大惨事になる。

 だから、先ほど作ったパワードスーツの出番だ。

 人形生成でアルゼの体を人形にできれば、安全に取りついてる魔王とやらも分離できるだろう。

 きっと……多分……。


 いやわかんないけど、魂付与だのなんだのの応用で行けると思うんだ。

 エネルギーになっても意思を持ち続けているってことは、多分魂だけの幽霊のような状態なんだろうし。

 神魂支配も使えば、いくら天使とやらでも逃げ出せんだろう。

 その状態で俺の作る人形に縛り付けて、肉体の牢獄を作る。

 魂だけの状態でも神々の世界みたいなとこに逃げられたら困るというのもある。


 俺のとりあえずの計画を城までの道中ディオネに話してみたら、お墨付きが貰えた。

 ディオーネー様とルシファーとやらがどういう関係だったのかはわからないけど、できれば穏便に済ませたいみたいだし、多少俺に殴られたとしてもこの世界に残れるようにした方がディオネ的にも嬉しいようだ。


 因みにだけど、パワードスーツでの移動のためディオネをお姫様抱っこして運んだら、顔を赤くしていたのが意外で可愛かった。




 王城に着くと、アルゼの元に行く前に姫様に会いに行くことにした。

 3号を通してみる限り大きな問題は起きていないようだけど、周りの奴らが俺の事を忘れている事に気がついたようで混乱しているようだ。


「おおダロス!妾と王以外ダロスの事を覚えていないようなのじゃが、これは何が起こっているのかのう……。」


 なんてことを3号を抱きしめながら言うので、とりあえずの状況説明をしておく。


「……ってな事になってるんだよね。」

「おぬし、本当に面倒な事に良く巻き込まれるのう……。」

「俺と結婚したら姫様も一緒に巻き込まれるかもな。」

「一緒ならば構わんよ?」

「好きだ。」

「妾もじゃ。」


 このやり取りを王様にニヤニヤと見られていたので、割と恥ずかしかった。

 ディオネによると、この国の王族は使徒に任命されていないとしてもディオーネーの加護が多少付与されているので、今回の術の影響を受けていないらしい。


 王と姫様に短めの説明をした後、第2王子と会談した庭には人を近寄らせないようにしてもらうように頼んでおく。

 ガラテアの逆探知によると、そこにアルゼはいるようだからだ。

 荒事になった場合、周りに人がいると邪魔だ。

 俺の事を皆が忘れている以上、俺が指示を出したところで誰も言う事を聞いてくれないだろうし。

 姫様の所に来るまでの間ですら、王族の護衛たちに何度も止められかけて押し通ってきたので。


 てかマジで一番王族の近くにいる近衛の奴等が役に立たない。

 何が何でも自分たちの護衛対象を守ろうって気概が伝わってこないんだよな。

 言われた事を言われた通り素直にやってるんだから文句言われる筋合いはないだろ?って感じだ。

 誰一人俺の突進を身を挺して止めようって動きすらしなかった。

 クビにした方がいいぞこいつら。


 まだ俺を止めようとして軽く跳ね飛ばされた門番の兵士ドミニク君(以前王城に来た時に本人から聞いたところによると、23歳、独身、彼女無し、最近ナンパした女の子とベッドインしたら女の子じゃなかったとわかって以来、女の子相手だとEDになっているらしい)の方が優秀だったぞ。

 俺も彼と戦うのは少し抵抗があった。

 彼に良縁がある事を願っている。



 姫様と3号を残し、アルゼの待つ中庭へと移動した。

 その中にある東屋には、あの嫌味な顔の第2王子とアルゼの姿が。

 どうやら、それ以外の人間は近くにいないらしい。

 あちらはあちらで人払いをしてくれていたらしい。


 俺が来たことに気がついた第2王子が待ってましたとばかりに話し出す。


「待っていたぞダロス!今自分がどういう状況に置かれているかわかっているか?」

「わからないな。どういう状況なんだ?」

「いやなに……。俺の部下にならない場合、お前の事を誰も思い出せなくなるというだけだ。」

「へぇ……。」


 正直俺を忘れる術を使っているのがアルゼだという事はわかっているので、この名前も思い出せない王子の相手なんてしたくないんだけど、時間稼ぎも兼ねて言いたいように言わせてみる。

 その間にもアルゼへの人形化を繰り返しているんだけども。

 距離が近いほうが効果が高いって言っても、別にゼロ距離じゃないと効果が無いわけじゃない。

 ジワジワと侵食してやる。

 本当は技名を叫ぶ必要もないから相手にはバレない。


「その変な術をアルゼに使わせているのは、アンタだってことか?」

「……成程、術者がアルゼだという事はバレているわけだな。そうだ!この城の宝物庫には、他人のスキルの詳細を調べる事ができる魔道具があってなぁ。それを使う事でこの堅物女がそういうスキルを持っている事はわかっていた。まあ、命令したのにそれを無視するものだから、こいつが大事にしている女たちを人質にとっているがな?」


 ……あれ?


「ディオネの予想外れてない?アルゼ本人の意思あんまり関係ないっぽいよ?」

「あれ……?ルシファーに憑りつかれて記憶を多少なりとも弄られてるはずなのに、人間の人質とられたくらいで言う事聞く倫理観があるの……?どうしてだろう……よっぽど抵抗力が高いのかな……。」


 あてになんねぇな!

 よく見たらアルゼめっちゃ俺見てビクビクしてるじゃん!

 表情はあんまり変わってないのに顔色と汗だけで焦ってるのを表現する奴初めて見たわ!

 これ俺を舐めてる顔じゃないよ!


「それで王子様、人質ってどういうことだ?」

「私が指示すれば、アルゼが飼っていた元貴族の令嬢全員が死ぬというだけさ。」


 この世界には、通信機というものは俺が作ったもの以外存在しない。

 遠距離で連絡を取る方法は最速でも伝書鳩だ。

 ということは、その人質をとっている奴らは、この東屋が見える範囲にいるという事になる。

 だったら対処法もあるな。


「ディオネ、この中庭全体に外から中が見えなくなる結界張れる?人の出入りもできないやつ。」

「可能だよ。というか今張った。」

「流石女神、帰ったらポテチを食わせてやろう。」

「コーラも欲しいかな!」


 ディオネの張った結界は内側からは問題なく見えるようで、外が少し慌ただしくなったのがわかる。

 中庭全体だとそこそこ巨大な結界になっているはずなので、周りからはかなり目立つ事だろう。

 人質を取っている奴等は王子からの指示が貰えず、かといって中の人間相手に交渉をしようにも、多少人目があるため秘密裏には不可能な状態。

 3号による筆談で姫様に状況も伝えたから、上手くすれば姫様と王様が人質を解放してくれるかもしれないし。


 というわけで、落とし前の時間だ。


「なぁ王子様。俺の大切なものに手を出した奴等がどうなったか知ってるか?」

「ああ知っているとも。兄上も随分大人しくされたようで愉快だったぞ!だがまあ、アレは脳まで筋肉でできているのか事前準備が足りないのだ。私みたいに相手の弱点を突い」


 話が長そうだったので、パワードスーツのフルパワーで第2王子の乳首の辺りを千切る。

 第1王子での実験で、乳首を痛めつければ王子は大人しくなるというデータがあるのでとりあえずやってみた。

 いきなりの事で本人はまだ自分の身に何が起きたのかわかっていないようだ。

 唖然と一瞬で間合いに入っていた俺と、その手の通り過ぎた部分を見比べている。


「直接的な被害さえ無ければ、第1王子みたいに再教育ってことも考えたんだけど、お前はもう許さない。ただ殺してもやらない。後で相手してやるからしばらく寝ていろ。」

「まっ」


 相手の返事も待たず死なない程度に頭を殴り飛ばしておく。

 結界まで飛んで行ってぶつかっていたけど、まあ大丈夫だろう。

 死んでたとしたらその時はその時だ。

 はっきり言ってあいつには今興味が無い。

 問題はもう1人の方だ。


「じゃあ、話し合いをしようかアルゼ。」



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