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機械仕掛けの人形師  作者: 六轟
第3章

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62:

「いい!いいよダロス!もっと突いて!」

「セイ!セイ!セイ!」


 現在、敵に対して人形生成をぶちかます練習中のダロスです。

 相手は、最近よく戦ってて個体数が激減してきたデカいオオカミさん。

 なんと生身でやっております。


「人形生成は遠隔操作が効かないから、できるだけゼロ距離でやったほうがいいよ?」


 というディオネの鶴の一声で、フレイがスルトでオオカミを押さえつけ、ディがフェンリルで周辺の他の敵を薙ぎ払い、俺は正拳突きの如くオオカミに人形生成を連続で叩きこんでいる状況。

 ディオネは、隣でコーラ片手にポテチ食べながら眺めてる。

 前世のメーカー品のコーラに比べたら薬臭いものになっちゃったけど、それでもこの世界にはあまりない飲み物だからか、案外売れているらしい。

 最近、王様が晩餐で飲むワインがコーラにとってかわられたとかなんとか。


「セイ!ポテチ!セイ!美味しいか?!セイ!」

「これ最高だね!いつか食べてみたいって思ってたから喜びもひとしおだよ!うすしお味だけに!」


 テンションが高い女神様。

 パッと見、男の部屋に毎日のように遊びに来る幼馴染のボーイッシュ巨乳にしか見えんが。

 端的に言って好き。


「お?今人形化できたぞ!今度のは12回目だった!」

『主様主様、やっぱりボコボコにした方が人形化までの時間は短いようです。』

『主様主様!まだオオカミ捕まえる?』

「いや、とりあえずはここまでにしておこう。これ以上は、肉と内臓を全て溶かして地面にしみ込ませて、骨と毛皮だけ持ち帰るにしたって荷物が多すぎるから。」

『『はーい!』』


 何のダメージも与えていないオオカミ相手に人形生成を使った場合、平均して50回くらいが必要だった。

 ダメージと言っても、肉体的なダメージだけではなく、精神的なダメージも効果があるらしい。

 目の前で仲間をどんどん殺していくと、残ったオオカミは明らかにビビっていて人形化までのハードルが下がっていった。

 倫理的な面を無視するのであれば、知能が高い相手なら色々できそうではある。


 ディオネ曰く、物には抵抗力というのがあって、無生物や敵意の無い相手なら簡単に人形生成で人形にできるけれど、敵意があればあるほどそれが難しくなるんだとか。

 だから、敵意を心ごとぽきぽきへし折ったり、抵抗力を超えるだけの人形生成を押し付ければいいんだとか。

 まあ、使い勝手は全然良くないし、やっぱり普通に殴って解決できない相手への最終手段だな。


「ダロスー!見てよ!アヒル!」

「はいはい……。」


 先日ディオネのお守をしてくれていた姫様は、本日は王城へ3号と一緒に出張中。

 王城からうちへの地下通路入口を作る場所を探しに行ってもらってる。

 地下通路自体は、王様に話したら2つ返事で了承された。

 しかし、出入り口を作る候補地を俺が探すのは逆に目立ってしまい、秘密の通路にならんだろうという事になり、姫様が久しぶりに王城で王様と一緒に歩き回って探している。

 王様が終始デレッデレで、これ本当は理由着けて娘と一緒に歩き回りたかっただけなんじゃないかって気もしているけども。

 まあ、姫様も王様の事別に嫌いじゃないみたいだし、王様と話すときは普通の話し方になって新鮮だから俺としても嬉しいんだけれど。


 代償として、ディオネが野放しなわけだが。

 世話するスキルがありそうなエイルとスルーズは、ディオネの両隣で無言でポテチをパクついてる。

 ニルファとヒルデは、散歩に行くと言ってどっかに行ってから既に3時間帰ってきてない。

 ドラゴン流飛行術と慣性制御を使いこなすAPLの速度で3時間となると、メーティスまでついてても驚かんが。


「頑張れダロス!近いうちに絶対に敵を人形化できるようになってることが役に立つから!僕を信じて!」

「ポテチバクバク食べながら言われてもな……。あんまり俺にアドバイスしてると、神様たちのゲーム的なルールに抵触しないのか?あんまり肩入れしたら駄目なんだよな?」


 この世界は、神々が行う代理戦争ゲームみたいなものだとアフロディーテ様からは聞いている。

 神様たち自身が全力で介入することは許されていないというか、神様たちで戦うと結果が見えてて面白くないとかで、完ぺきではないため未来がわからない俺たちを使って遊んでいるらしい。

 だから、女神ディオーネーの分け御霊のディオネがあまり俺たちに肩入れするのはどうかと思うんだけれど……。


「そこはとりあえず大丈夫だよ。僕は、分け御霊を作るにあたって神としての殆どの権能をそぎ落としてるって前に言ったよね?それに僕本体とのリンクもすごく希薄なんだ。だから、今の僕は女神であって女神ではないって感じかな。人間としてみたらすごく性能が良い体だけど、あくまで人間の枠組みの中での話であって、女神の領域には至ってないんだよね。それにディオネで経験した事は本体の方には行くけど、逆に僕の方に神としての何かがおりてくる事は、よっぽどのことが無い限り無い。僕がダロスにしてるアドバイスも、殆どがこの世界に来た僕が目で見て体験した事柄とかで導き出されたものだから、女神としての視点で行うものでもないしね。だから、ダロスがいくら僕のおっぱいをガン見してたとしても、不敬だって怒られることも無いんだ。」

「それはありがたい。」


 なんか、大丈夫らしい。


 帰り支度をしていると、ニルファたちが帰って来た。

 本当にメーティスまで行ってきたらしく、お土産にメーティス名物のタルタロス焼きを買ってきてくれたらしい。

 何それ知らない。

 それは本当にイレーヌにも提案してないしされてない。

 食べてみると、お祭りの屋台とかでよくあるタイプのお好み焼きだった。

 タルタロス成分が見当たらないけども?


 帰り道、俺は自分用のパワードスーツを作っていた。

 ロボットに乗りながら敵を人形生成しようとすると、どうしても距離が開いてしまうために効率が悪い。

 そのため、できるだけ生身に近い状態で相手と対峙する必要があると思ったからだ。


 というのは建前で、本当は作ってみたかっただけなんだけども。


 まあ現実問題として、戦場で機体を失っただけではい終わり!なんて怖すぎるので、機体を捨ててから敵地を脱出するまでの補助ができるものは欲しいとは思っていた。

 あくまでそういうロールプレイでの話だけど。

 だって俺はその気になったらその場で新しくロボット作れるし……。


 というわけで完成しましたパワードスーツ!

 体の各所を神粘土から作り出したぼくのかんがえたさいこうの金属装甲で包み、これまた神粘土を使った人工筋肉によって通常の数十倍のパワーとスピードが出せるのだ!

 ワイヤーと脚部ホバーを使用することでどんな悪路も走破し、万が一高所から落下している場合でも、減速用のバーニアもついている!

 まあ飛行はできないんだけど。

 飛行できるようにすると何もかも飛ばせた方が便利だよねってなる風潮が嫌いだから、敢えて飛べないようにした。

 メイン武装は弾の必要ない振動ブレードと、相手が飛んでいる時のために、地対空小型ミサイルと超高出力レーザーガンを搭載している。

 レーザーと言っても、よくSFであるカラフルな光線のやつではなく、工業用のレーザーカッターみたいに射線が肉眼だと見えないタイプだ。

 それらの武装をパージして、更に身軽にすることもできるけど、パージしなくても馬より速いんだから、この世界においてはつけっぱなしで良いと思う。


「どう?カッコいい?」

「私としては、もっとスルトみたいにムキムキマッスルな体型にしても良かったと思います。」

「えー!?もっとフェンリルみたいにスマートでスタイリッシュな方がいいよ!」

「「「それを着ている場合、血は頭部から提供して頂くことになるのでしょうか?」」」

「私のパンチ3発くらいなら耐えられそうですわね……。」

「それってお姫様抱っこモードとかつけないのかい?」


 あまり好評ではなさそうだ。

 いいもんいいもん。

 お家帰ってサロメとイレーヌちゃんに褒めてもらうもん。




「…………あら?」


 APLは全機遠隔操作にして、皆でお菓子を食べながらハコフグでゆったりと帰っていると、もうすぐ王都に入るというあたりでニルファが怪訝な顔で辺りを見回し始めた。


「どうした?なんかあったか?」

「……アナタは誰ですの?」

「あん?」


 なんだこいつ、ボケたのか?

 まだ生後数か月のはずだぞ?


「俺の事がわからんのか?」

「わかりませんわ!」

「元気良いな……。じゃあ俺以外のメンバーの事はわかるか?」

「アナタ以外……、ディにフレイ、ヒルデとエイルとスルーズ、ディオネですわよね?」


 俺の事だけがわからんのか?

 なんだ?冗談か何かか?

 それとも何か変な事でも起きてるのか……?


「ニルファがここで人間と一緒に生活している理由については思い出せるか?」

「ええ……。私が卵の時に人間に採取され、メーティスで管理されてる時に、何か美味しい魔力を貰って孵化し、その後は野生の生活に戻る気になれなくて人間社会で暮らしていますわ!」


 俺本人の事だけが記憶から消えてるのか?


「他の皆は、何か異常はある?」

「主様の事はちゃんと覚えてますよ?」

「主様の事は絶対忘れないし!」

「「「最近私たちあんまり血を貰ってないことも覚えてますからね?」」」


 とりあえず、ニルファ以外のメンバーは俺の事を覚えてくれているようだ。

 じゃあ、ニルファだけを対象にした記憶消去の魔法とかだろうか?


「あー……ダロス、これちょっとまずいかも?」

「なに?怖い事言う感じ?」

「うん、これはあの娘やらかしちゃったかなぁ……。」


 そういうと、ディオネが少し悲しそうな顔になる。

 あの娘って誰よ?説明してよ!どこの女よ!

 そんな思いが伝わったのか、とりあえず説明をしてくれるようだ。


「今王都中に、ダロス本人に関する記憶が曖昧になるっていう効果のスキルが使われてるみたい。って言っても、それ自体で人体に影響があるような物じゃないみたいだけど、神の使徒クラスの出力で行使されてるから、神の加護とかが無い王都中の人間がダロスの事忘れちゃってるんじゃないかな?」


 俺の事を忘れるだけ?

 なんだその限定的な効果。

 王都中って言っても、俺に関することを忘れるだけならそこまで問題も起きないか?


「って言ってもさ、女神の加護とか、ダロスに作られて間接的に女神の庇護下にある子たちなら問題なく弾ける程度のものだね。」

「それで今このメンバーだとニルファだけが俺を忘れてるのか?」

「何かとても大切な方だったような気はするのですが、思い出せなくて牙痒いですわ……!」


 イライラしてドラゴン娘が暴れ出すのではないかって事以外には、今の所実害は無いか……?


「ダロスの事を忘れたって、大半の人は問題ないと思うんだよね。」

「まあ、俺ってそこまで交友関係広くないしな。」

「たださ、ダロスの家族に、ダロスがいなかったら自殺とかしちゃいそうな程依存してる娘いるじゃない?」

「あ」


 メイド母娘2人は問題ない。

 俺の事忘れても仕事はしてくれてるだろう。

 ナナセとガラテアは俺が作ったから除外。

 姫様は、ディオーネー様の使徒だから忘却のスキルも弾けてるはず。

 イレーヌは……まあ、俺の事をある日突然全て忘れたとしても、上手く暮らしていそう……か?


 ただなぁ……サロメだけはヤバそうなんだよなぁ……。

 俺が一緒にいないと生きる理由がわからないとか平気で言いだしそうだからなぁ……。


「皆しっかり掴まっててくれ。家まで最短ルートを通るために今からハコフグで初めての立体的な移動方法を使う。」

「それってどうするんですの?」

「屋根の上って障害物なさそうじゃない?」

「面白そうですわ!」


 コイツ本当に俺の事忘れてんのか?



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