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楽しい楽しい昼食を終え、とうとう公爵家の裏手の森へとやってきた我々ダロス一行ですよろしく。
メンバーは、リーダーダロス、サブリーダーのディ、サブリーダーのフレイとなっております。
公爵家の裏手とは言いますが、基本的にこの世界は、町から一歩出たらそこは魔物の領域。
基本は魔獣だけど、魔物全般が出てくる可能性がある危険地帯だ。
もちろん、街に近い場所で有れば、そこまで危険な奴がいない場合が多いらしいけれど。
実体があって殴れば死ぬ魔獣はマシな方で、アンデッドと呼ばれる系統の奴らは始末が悪い。
殴ってもなかなか死なないし、中には殴っても効果が無い連中までいるんだとか。
全部冒険者ギルドのモヒカンから聞いた話でごぜーます。
ゲームだと、聖水だかポーションだかをかけたら即死させられたような気もするけど、そんな便利な物は持っていません。
まあ、ケガは自分で治せちゃうのが悪いんだけど。
ガラテアに頼めば、回復薬なら作ってくれっかな?
そういや、なんかのRPGで使うポーションを商品化して売られてた事あったなぁ。
味はまずかったけど、逆に不味いからこそこれで何かが治る!って思った覚え。
案外1本が高かったから3本くらいしか買えなかったんだよ。
でももったいなくて、1本だけ飲んで残り未開封のまま数年ほっといたら、プレミアついてすごい値段で売れたわ。
あー、しまった!
折角王城まで嫌々行ったっていうのに肝心の一番重要な目的忘れてた……。
結局やった事といえば、奇麗なお姉さんの揺れる胸を見てきたくらいか……。
「主様、何かあったの?」
いや、第2王子に美味しいジュース用意しておけっつってたのに、あまりに短い会談だったから飲み物飲むの忘れた。
王室御用達のジュースがどんなものか飲みたかったなぁ……って思ってたとこ。
「主様、今の王室御用達のジュースは、主様のブランドの物ですよ?」
え?また俺の知らない商品があるの?
「王様が、イリアの派閥に属してる主様のブランドだってことで宣伝してるんだって。」
「仮に王様が宣伝しなくても、主様の伝えた物は高品質な物ばかりですし、売れていたとは思いますけど。」
俺が伝えたっていうか、テレビとかネットで見て持ってた知識を使って適当に作った製造機で作ったもんを市場に流通させられるほど量産してる方がすげーよ。
俺が教えたのなんて、食べ物のレシピ以外だと熱処理だの金属とかプラスチックだので紙をコーティングする技術だのだぞ?
あとは精々ペットボトルとかレトルトパックだし。
あ、神粘土でゴムはいっぱい作って渡したなそういや。
便利だからって。
服なんて型紙とかじゃなくて俺の性癖を具現化した奴を現物で渡しただけだからなぁ。
イレーヌパネェっス。
「……うん。イレーヌママはすごいよね……。」
「……はい……。イレーヌお母様はすごいです……。」
何そのテンション?
「……はい主様、ダロス印のグレープジュース。」
ん?今持ってたのか?
サンキュー。
「……万が一喉が渇いたときは、ちゃんと水分補給もするんですよって毎日渡されるんです……。まだ、母親モードが抜けてないらしくて……。因みに私に渡されているのはアップルジュースです……。」
あー、そういうのだったか。
でも、水分補給なら普通の水とかスポーツドリンクの方がいいかもよ。
カフェインが入ってるお茶なんかは案外水分補給にならないらしいし。
利尿作用がなんだかで。
……母親モードに関しては、流石に自分の子供が生まれたら治まるだろうし、もうちょっと我慢してくれ。
「「はい……。」」
それで、ディたちが見つけたっていうよさげな場所はこの辺りなのか?
「うん!奇麗な湖が見えて、洪水とか土砂崩れが起きなさそうなとこなんだ!」
「深い森の中なのと、魔獣が多いので一般人は近寄りませんし、隠れ家を作るならもってこいかと。」
いいねいいね!
深い森の中にひっそりと建つ謎の館!
そこには、館の主である謎の美女と、館の全てを切り盛りする美しいメイドの2人だけが住んでるんだ!
森に迷ってたどり着いてしまった主人公たちは、その館でいろいろな怪奇現象を体験し……。
「主様主様、妄想してる所悪いんだけどね、ここがそうだよ!」
おー!
オーシャン……じゃない、レイクビューって感じだな!
老後はこういう所で悠々自適に過ごしたいなぁ……。
天気が良い日は、釣り竿もって湖行ってさぁ……。
「魚釣りができるのですか?」
できるぞ!誰ともしゃべらなくていい趣味だから得意だ!
たまに、やけに話しかけてくる爺さんとかいるとテンションがダダ下がりするんだ!
「主様は、もっといろんな人と話した方がいいんじゃない?」
「主様は、基本人見知りですよね?」
うん……。
最初から仲良くするのって難しいの……。
ありがとうね俺なんかと仲良くしてくれて……。
「主様は甘えん坊ですね!仕方ないのでもっと仲良くしてあげます!手つなぎますね!」
「じゃあディは右手ね!」
あ~娘たちと手を繋ぐのいいいわぁあ……。
とりあえず、建設地はここでいいよ。
川から大分離れてるし、過去周りに洪水で被害が出た形跡も無ければ、地滑りが起きた形跡もないから。
じゃあディとフレイ、フェンリルとスルトでこの辺りと湖までの間の木を根っこごと処理してもらっていいか?
太い部分は乾燥させて薪にするし、それ以外の部分はオガクズにして堆肥の材料にしよう。
「了解しました。いでよスルト!」
『ゴオオオオオオオオ!!!!!!』
「こっちもいくよ!カモンフェンリル!」
『ウオオオオオオオン!!!!!!』
なんかカッコいいモーション付きで自分の乗機を呼び出す2人。
何それ、俺そんな機能をあの2機につけた覚えない。
めっちゃカッコよく鳴き声あげてるけど、あれ別に魂とか付与されてないよね?
カッコよくジャンプしてコクピットに乗り込む2人。
そうだよ!俺がやってみたいのってああいうやつ!
いいよね口があるロボット!
『じゃあ行ってくるね主様!』
『主様は、主様のお仕事をお願いします!』
はいよー!気をつけてなー!
『『はーい!』』
そしてバンバン大木を処理していく2人。
枝の部分を切り離してから地上部分を切り倒し、最後に根っこを抜いているようだ。
熟練の職人感すらあるけれど、生後まだ1年経っていない。
俺も負けていられないな……。
闇より出でし者、黒く禍々しき者、今ダロスの名において、この矮小なりし世界へと召喚する!顕現せよ!3号!
まあ、最初からいるんだけど。
護衛役に必要なので。
じゃあ縦穴掘っていきますねー。
どうせ人間が乗るわけじゃないんだし、現実にない乗り物でもいいだろう。
というわけで、いでよ!超巨大パワーショベル!
ふはははは!一回掘るだけで全行程の半分くらいいけるぞ!
ってやばいやばいやばい!自重で埋まる埋まる埋まる!解除!
あっぶな……。調子乗りすぎたな……。
『主様主様、調子乗りすぎると危ないよ?』
『主様主様、調子乗る時は私たちがサポートできる範囲にしてくださいね?』
はーい……。
じゃあ少し大きめ程度のパワーショベルにしよう。
石炭掘り出すのに使うでっかい水車みたいな穴掘り用重機も世の中にはあるけど、今回はそれだと逆に大きすぎるしなぁ。
動いてもいないのに自重でズブズブ埋まっていく重機を作っておいてなんだけど……。
ジャンボショベルを10台作って動かすとみるみる穴が広がっていった。
人型ロボットと比べて動作させる手間が少なく効率的なため、脳みそへの負担も少なくて台数を増やしやすい。
ジャンボショベル5台で穴を掘り、残りの5台でベルコンに乗せ地上まで運び、地上で圧縮ブロックにしていく。
この圧縮ブロックは、建材として売ってみようかな?
自分で使うには、不純物が多めで面倒なんだよなぁ……。
あーでも、ピザ窯とかにはいいかも?
空気や水分は殆ど抜けてるだろうし、ゆっくり加熱していけばいい感じになるんじゃないかな?
おっと、それはおまけで良いんだ。
それよりも隠れ家作らんと。
あっという間に縦100m、幅50m、深さ80m程の穴ができた。
この辺りは、地盤があまり頑丈ではないようなので、30m程は沈下を防ぐ基礎にしておこう。
地下部分を作る前に、今日は先にTBMを走らせておこう。
その方が早く終わりそうだし。
ゴリゴリと動き出すTBM、そしてそれを送り出す俺。
巨大なタンクには大量の特殊加工した神粘土が入っている。
彼は、自分で黙々とトンネルを掘って補強しながら動いていくんだ。
しかも穴掘り終わったら即消滅させられる悲しい奴。
すまんな……デカいからうちでは飼えないんだ……。
トンネルはこれで良いし、あとは残りの地下部分だな。
ここの場合別荘のような使い方もしたいから、地上部分にも建物を作ろうと思っている。
なので、地下部分は万が一の時に使う程度の宿泊施設以外は、基本ロボットの格納庫でいいだろう。
多分ここが一番俺が理想とする施設に近いんじゃないかと思う。
やっぱ普通の建物っぽい所が実は!ってのがいいんだよなぁ……。
地上搬出用エレベーターを2台作り、タルタロスとAPLを2機ずつ置いておく。
あとは、非戦闘員を運ぶために荷台を全部座席にしたハコフグも1台置いておこう。
というわけで、地下部分はこれで完了っと。
地上部分は、西洋風デザインの邸宅という感じにしておこう。
少なくとも俺が知る限りこの世界に和風な文化は無さそうだし、変なデザインにして魔族が作ったダンジョンか何かだと思われて攻撃されても嫌だし。
いや、こんな魔獣が跋扈する場所に建ってる時点で怪しいかもしれんが……。
3階建てで、2階までにキッチンを始めとした共有スペース以外に寝室を20作る。
3階は、居ぬきで湖側を全て窓にする。
窓は開放することもでき、その外はバルコニーにしてバーベキューでもできるようにしておこうか。
って考えてスペース作っても案外使わなくなるって前ネットで見たけど、いいんだ!
タダで作れるから!
あ、折角だから3階の一角は露天風呂とプールにしよう!
全部一繋ぎの部屋だとやっぱちょっとつまんないし!
温泉は……流石に無いか。
ここら辺火山地帯ってわけでもないからなぁ……。
逆にそんなとこだったらこんな施設危なくて作ってられんわ。
湖から水引っ張って来て完全にろ過してからボイラーで温めて我慢だ。
ボイラーって言っても、この世界は魔力を流せば温められる技術がこれでもかとあるから作るのは楽。
材料オリハルコンだしメンテナンスもあまりしなくて良さそう。
頑丈だから仮に中で爆弾を爆発させても周囲に被害出ないんじゃないかな?
建物外に魔獣対策で、自動で防衛してくれるドローン型タルタロスを4機ほど置いとくか。
あれ?でも地上を走り回る2足歩行の機体をドローンって表現していいのか?
アレってもともとは、オスのミツバチの事だよな?
空飛んでないけど……でも水中ドローンとか言うのも最近あるし……自動で走る車もドローンとか呼ばれてたような……。
まあいいや!自動で動いてる奴はもう全部ドローンでいいだろ!
ただ、見た目でドローンタイプだってわかるように顔だけ変えておこう。
通常だったらメインカメラを2つの目みたいに配置してるけど、コイツは人間が乗らない前提だから一つ目にしてしまう。
コクピットも無くして、元々は武装積みすぎてずんぐりむっくりだったタルタロスにしては、かなりスマートな見た目になった。
許可なくこの隠れ家から200m以内に入った物に対して、最初に警告、その後剣による物理攻撃をするように設定。
銃も持たせようかと思ったけど、金属の弾を勝手に撃たせるのはちょっと怖いからなぁ……。
ドラゴンでもこない限り剣でも十分な戦力だろうさ。
「主様主様、ホテルでも作ってんの?」
「主様主様、これ隠れ家なんですよね?」
え?うーん……まあ……場所的には隠れ家なんじゃない……かな?
よし!ここまでにしておこうか!ディとフレイも作業終わったみたいだしとっとと帰ろう!
「……主様、今気がついたんだけど、真っ暗になる前に帰って来なさいってイレーヌママに言われてたんだった……。」
「……主様、サロメお母様からも主様はどうせ時間を忘れて作業してるから途中で止めて帰らせなさいって言われていました……。」
うん、もうすぐ真っ暗になるね。
今から全力で帰っても夕食の時間オーバーか。
連絡だけして晩ご飯を食べて帰ろう。
このまま帰ると晩ご飯抜きにされる可能性がある。
「でもでも主様!まっすぐ素直に帰った方が怒られないんじゃない!?」
「主様!私はお母様たちに怒られるの嫌ですよ!?」
…………そうだな。
愛する妻たちを裏切るわけにはいかない。
2人とも、素直にまっすぐ帰ろうか!
「「はい!」」
夕食抜きになったら昨日買ってきたダロス印のレトルトカレーがあるからそれ食べよう!
「「はーい!」」
「やっぱりディとフレイ相手だと喋んなくて済むから口が楽でいいわ……。」
「主様未だにわかりやすいもんね。ディたちのおっぱいがちょっと大きくなってきたから反応してくれるようになったし。」
「できれば目の前で話している場合、3秒に1回くらいは目線が胸に向くサイズになりたいですね。」
誤解なんです。




