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機械仕掛けの人形師  作者: 六轟
第1章

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28:

「じゃあ、まずは自己紹介してもらっていいかな?」


 現在、明らかに邪悪な感じの地下室で、ギッチギチに椅子に縛り付けられている方々と対面してるダロスですよろしく。

 彼ら彼女らは、出会って1秒も経たずにナナセに倒され意識を失ってた方々です。

 因みに、甲冑の胴体部分と頭部は砕けていたので脱がしました。今は全員ただの服ですね。

 食い込んでますよ、縄が。

 この世界の平均が分からないので何とも言えませんが、ナナセは強くてカッコよくて奇麗で縛るのが得意だというのはわかります。

 キミ才能あるよ。


「ダロス貴様ァ!!!何をかんがべふっ!?」


 あ、ナナセに顔面蹴られてパパンの歯が飛んだ。


「ナナセナナセ、一々手出さなくていいよ。ナナセの奇麗な体が汚れる。」

「うっ……わかったっス……。」


 素直でかわいいよナナセ。

 流石に縛った相手に横合いから顔面ヤクザキックは女王様失格だけど。


 歯と一緒に心も折れたのか、大人しく従い始める可哀想なM奴隷たち。


「改めて、自己紹介してな?」


「わた、わたしは、フランソワ・ピュグマリオン公爵だ……。」

 パパンね。

「……ローラン・ピュグマリオン。」

 長男ね。

「ちっ……ニコラだ!」

 次男ね。


 あれ?


「3男は?」

「3日前死んだ……。」

「えぇ……?」


 何で公爵家の子供が死ぬなんて事態になってんだ?


 んで残りの鎧だった奴らは公爵のとこの騎士団と。


「それで、そっちのドレスの女の子。キミは何者?明らかに他のむさくるしいのとは雰囲気違うよね?」

「……わ、妾を知らんのか?」

「ごめん知らない。そこの縛られてる奴らのせいで人間不信の引きこもりだったから。有名人なのか?」


 ダロス君がな。


「妾は、この神聖オリュンポス王国の第1王女、イリア・オリュンポスなるぞ!」


 え?王女?王女なの?はえーすごい。

 すごいけど、ごめん。

 もっと気になる部分があった。


「しんせーおりゅんぽすぅぅぅ?」

「何じゃ!?国名に文句があるのか!?」


 ダロス君の脳内にそんな国名ねーぞ?自国名知らないとか勉強不足じゃない?

 オリュンポスってなんだっけ?前世だと神の国か何かだっけ?神聖って……。

 それがこっちで人間の国名になってるってどういうことだ?


 あー、そうか。

 この国も神様たちが戦争ゲーム用に作られたステージの一部みたいなもんか?

 スケールが違うだけで。


「まあいいや……。それで、お姫様がなんでこんなとこに?」

「う……うむ。実は、妾にも何が何だか……。夜、自室で寝ておったらいきなり押し入られての。気がついたらこの部屋よ。何をされるんじゃろうと思っていたんじゃが、突然部屋の中の奴らが倒れて行っての。最後は、妾も気絶して、気がついたらこうして縛られておったのよ。ちょっとでいいから緩めてくれんか……?」

「なんだ。こんなとこでうちの家族たちが暗躍してるっぽい感じだったけど、黒幕はお姫様だったーって事なのかと思ったら、ただの可哀想な女の子かいな。」

「その評価は、ちょっと不満なんじゃが……。あんっ!変なとこ触るでない!」

「ロープ緩めてやっただけだ。文句言わないでくれ。現状アンタの事を完全に信じる事はできてないからほどけないけど、流石に俺を虐げた人間じゃないのにこの縛り方はどうかと思ってな。」


 そもそも、本当にお姫様なのかもわからんしな。

 自国名すら知らなかったダロス君に自国のお姫様の顔なんてインプットされてない。

 基本、女の子の情報は98%がイレーヌちゃんだ。


「じゃあ、悪役顔の皆さん。この状況を説明してもらっていい?公爵邸の中を留守にして何をしていたのかとか、こんな秘密の部屋みたいなとこで何してたのかとか、秘密行動中っぽいのにアホみたいに松明使うバカを雇ってる理由とか、まあ洗いざらいお願い。」

「誰が貴様などにぶべっ!?」


 次男の歯が飛ぶ。


「ナーナーセー?」

「だって主様を悪く言おうとしたんスもん!」

「俺は、サロメとかナナセたちに悪く言われない限り大して気にしないよ。だから今は抑えて。」

「……はいっス。」


 怖い怖い。ブラザーも父親の状態見て懲りろよ。


「……我々は、第3王子について、クーデターを計画していた。」


 長男が語りだす。

 お前が一番冷静っぽいな。

 歯は大切にしろ。


「クーデター?そんなん計画していたのか。しかも組んだ相手が第3王子って……。もう少し勝ち目在りそうな奴と組めよ……。」


 評判悪かったんだろ?

 しかも間抜けにもこの前うちの敷地で返り討ちにあって死んだぞ。


「……今は、私たちもそう思っている。何故か数日前まで、とにかく第3王子を王にすることしか考えられなくなっていた。しかし、第3王子につく貴族の数などたかが知れている。戦力となると、まともなものは我が公爵家くらいなもので、後は雑兵にすぎん。よって魔獣を集めて王都に進軍させ、王都の戦力をそちらに割かせてから、我々の本体で王城を占拠する予定であった。」

「まともな思考じゃねーな。てか魔獣って集められるのね。」

「そういう魔道具がある。国宝だがな。それをイカロス殿下が持ち出して、我々に貸与してきた。これを使って魔物を指揮し、王都に進軍せよとな。王城には私とニコラが向かうため、その魔道具は3男のアランが使用していた。確か……、まやかしの翼……だったか?アレを使うと、魔物たちには使用者が魔王に見えるらしい。」

「へぇ……。あー、因みになんだけど、その第3王子様は魅了持ちで、ソルボン伯爵とかもおかしくされてたらしいよ。精神いかれちゃったとかで強制的に交代させられたけど。」

「……なるほどな。だから我々は、ああも無理に計画を進めようと……。」


 長男めっちゃ落ち込んでる。

 まあ、現状こいつら国家反逆者だしな。


「そういや、なんで3男死んだんだ?魔物たちの襲撃は?」

「……作戦実行直前に、何者かの攻撃を受けて壊滅したらしい。現場は魔物の死体だらけだったとか。魔石だけは抜き取られていたらしいが、他の素材はそのままだった。その死体の中に紛れ込んでアランも2回は生き延びたようだが、3回目の襲撃で死んでいた。その後は、魔物たちの死体の中からまやかしの翼を探し出して、作戦を続行しようとしたのだが、最後は攻撃方法を変えたのか焼き払われていてな。翼も溶けたか燃えたか、とにかくなくなっていた。」

「そういや、森の中で焼け野原みたいになってる場所見たわ。」


 あれってこいつら関係だったのか。

 迷惑なことするもんだ。


「主様、ちょっと内緒話良いっスか?」

「ん?いいぞ?」


 そう言ってナナセに部屋の隅まで連れていかれると、耳元でコソコソと話し出す。

 近くで見ると、ホントキレイな顔してるよなぁ。


「多分なんスけど、その魔獣の集団倒したのジブンっス。」

「……へぇ。あそう……。」

「それとっスけど、最後に焼き払ったのはディとフレイっス。」

「そう……。」

「主様は知らないほうが変に悩まなくていいかと思ったんスけど、この感じだと教えておいた方がいいかと思って。ごめんっス……。」


 しゅんとしてる。

 可愛い。


「いや、よくやった。森の中から王都へ進軍したとしたら、公爵家の辺りも被害にあっていただろうし、抑えた被害で言えばヒーロー扱いされてもおかしくないぞ。少なくとも俺はする。」

「そ……そっスか?えへへ……。」


 頭をなでてやるだけで喜んでくれるんだから安いものだ。

 まだ1歳にも満たないからな。


「ただ、これは他の奴らには秘密にしておこう。面倒な事になりそうだし。」

「わかったっス。」


 縛られてた奴らの所に戻って尋問を続ける。


「んで?王都襲撃が失敗した後どうしてたんだ?」

「その頃には、何故我々がこんなことをしているのかわからなくなっていた。イカロス殿下が参陣する予定の日時を過ぎても森の中の待機所に現れないため、屋敷まで戻れば馬車だけが残っている。人払いをした後本人はどこかへ行ったらしい。その辺りから既に我々も殿下への忠誠心のようなものはなくなっていて、逆に危機感だけが募っていった。」


 あーアレか。殿下死んで、魅了の効果が切れちゃったか?

 でも、サロメがやられた奴はこいつらには効かなかったのかな?

 あっちはもっと特殊な条件が必要とか……まあ唯一その力持ってた本人死んだから考える必要もないんだが。


「しかし、今更何もせずいれば我々は斬首の上取り潰し。故に、最後の手段に出た。」

「もう最後の手段に?その段階なら知らんぷりでいれば何もなかったことにできたんじゃ?」


 行方不明のバカ王子と、そいつが持ち出した国宝以外何も被害出てなかったんだろうし。


「……。」

「あ、気がついてなかったか。」

「我々は、少数精鋭で王城に侵入し、人質として王女を誘拐した。」

「何でそうなった!?」

「混乱していて、それくらいしか思いつかなかったともいえるか……。今になって怖くなっているが……。」


 何泣きそうな顔してるんだよ……。

 王女様も微妙な顔してるじゃん……。


「なぁ王女様、これどうしたらいいと思う……?」

「う……うむ、全くの無かったことにはもうできんじゃろうなぁ……。」

「ですよえねぇ……。」


「まあ、俺としてはこの人たちが斬首でも構わないんですけどね。」

「なに!?こやつ等はおぬしの家族ではないのか!?」

「だから言ったでしょ。こいつらがダロス君を虐げてた張本人なんだよ。」

「う……うむ……?」


 さてどうした物か。

 このバカ家族がどんなに惨い死に方したとしてもどうでもいいけど、多分俺もまとめて死刑とかになるんだろうなぁ。

 知らぬ存ぜぬで通るほど甘くないだろうなぁ……。

 実際には全く関係なくて、貴族としての最低限のお金すら貰ってないんだけど……。

 うーん……。


「姫様、お願い申し上げたい儀がございます。」

「何じゃいきなり改まって。もう無礼がどうとか言う気も無くなっておった所なんじゃが。」

「いやね、こいつらも一応第3王子の被害者なわけですよ。それに、同じように魅了でおかしくされてた奴らも多いと思うし、情状酌量の余地ありってことにしてくれないですかね?」

「それはまあ構わんじゃろうが、それだけではなぁ。」

「ですので、今回の事件は姫様が解決なされたことにしてはどうかと。」

「ほう?どういうことじゃ?」


 ちょっと興味出てきたみたい。

 縛られたままだけど。


「我が公爵家は、第3王子に加担していたわけですが、肝心の第3王子は行方不明になり、魔獣の集団も殲滅された様子。であれば、これはうちの公爵家が手を回して、事件を未然に防いだと無理やり理由付けしてもいいのではないかと。その指示を出したのが、何を隠そう姫様です。ただし、王城の中にも第3王子の手が回されている恐れがあったため、一時的に姫様を外に連れ出す必要があった。だけど、王城の中に忍び込んだ刺客は、これまた姫様の指示で公爵家の人間が始末したため、これから姫様は救国の英雄として、公爵家の全戦力を引き連れながら城へ超派手に凱旋する……なんてどうですかね?」


「おぬし、ずっるいこと考えるのーう?」

「いえいえ、姫様の献策があればこそ……って事になるんですよ?」

「そうじゃったそうじゃった。」

「無理やりなのは自覚してるけど、公爵家潰すのって流石に国としても面倒でしょう?しかも原因が第3王子で、魅了の効果を使ってたって多分ここ数日でバレてるし。多少の罰で終わらせる言い訳つけてあげないと。」


 なんてだべる我々。

 無理やりだけど、とにかく無罪か減刑を取り付けたいね。

 無理ならサロメ達連れて逃げるぞ。

 まさかイレーヌの言ってたことが現実になるとは……。


「あ、現職の公爵は、いくら作戦だった事にするとは言えやらかしまくりって事で責任とって引退。次の公爵は長男って事にしましょう。」

「なんじゃ?おぬしがやりたいと言い出すのではないのかえ?」

「そんな面倒なことやってられるかいな。」


 いや本当に。

 俺はもっと趣味に時間を使いたいんだ。

 折角料理できる人増やす算段着けて、家も買ったのに。

 ここは長男に押し付ける。


「そういえばローラン。家の中に兵士が全くいないし、武装も見当たらないんだけど、主力部隊はどこにいるんだ?」

「だから、全部やられたぞ。魔獣の群れに付き従っていたからな。襲撃して全滅するたびに、王城に行く戦力から割いていたが、結局ここにいる数人以外はほぼ死んだのだろう。我々も、事ここに至って何をどうすべきかわからなくなり、この避難所に隠れていたにすぎない。もし生き残りがいればと偵察に出したものを追ってお前がここに来るとは思わなかったが……。」

「松明はダメだろやっぱ……。」


 だってめっちゃ目立ったもん。


「あれ?じゃあ全戦力で王城まで行っても地味じゃない?」

「締まらんのう……。」




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