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機械仕掛けの人形師  作者: 六轟
第4章

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108:

『我が国で行われた聖戦に、多大なる助力貢献をして頂いた騎士の皆様、そして、偉大なるオリュンポス王へ、最大限の感謝を!』


 テレビの中で、ティティアが小難しい演説を終えた。

 会場からは、割れんばかりの拍手が送られる。


 彼女は今、王城で行われている終戦記念のセレモニーに、真聖ゼウス教皇国の代表として参加しているらしい。

 終戦と言っても、即日終了したためにあまり実感は湧かないけれど、大抵の人は、他国のお姫様に自分の国を褒められると喜ぶものだ。

 これからの国交のためにも、ティティアにはヨイショを頑張ってもらいたい。


 誤算は、アストライア様……ライアちゃんがこういう場面であまり役に立たないという事だ。

 悪意には敏感だけど、演説の台詞を考えたりするのは苦手らしい。

 ただ、アレだけ土下座をしていたエイラが案外優秀で、その辺りをフォローしているんだと、ティティアからの映像通信で聞いた。

 忙しいだろうから、そんなに頻繁に連絡取らなくても良いと言ってはいるんだけど、毎晩寝る前に必ずモニター前に呼び出される。

 まだ、俺と結婚するという決意が揺らがないらしい。

 中学生くらいのカップルみたいなやり取りが多くて恥ずかしいんだけど、よく考えたら相手は中学生くらいの年齢だった。



 終戦記念のセレモニーに、メインで戦った俺たちが何故出ていないかと言うと、単純にめんどくさかったのと、大事な仕事をほっぽりだしてティティアに付き合っていたしわ寄せが来ているからだ。

 具体的に言うと、薙ぎ払った木々が何もなかったかのように復活していたり、ニルファが作ったクレーターが、短期間で本格的な湖になっていたりと、魔物の領域ならではのトンデモ現象が起きて、開拓をやり直している。

 ある程度ごっそり開拓が出来れば、アホみたいな速度で成長する木々も減るらしいんだけどなぁ……。

 しかも、折角聖女様がいるのに魔物の領域を浄化する儀式すらしていなかったんだから、本当に慌ててたんだなぁ俺……。


「しゃーなし。またギガンテスで木をフッ飛ばすか。」

「やりますか!?やりましょう!」


 ローラだけは、この状況に喜んでいたけれど。



 ここ数日で起きた大きな出来事といえば、子供が2人生まれた事だろうか。

 ナナセが出産した次の日に、ガラテアが出産していた。


「ジブンたち、こういうのある程度調整できるんスよ。」

「……超安産体質。」


 と言って、文字通りスポーンと産んでいた。

 2人とも女の子で、ナナセの娘をイオ、ガラテアの娘をレダと名付けた。


「アナタの位階もジョブレベルも上がっちゃってぇ、私も力を節約しておく必要が無くなったのぉ。これからはぁ、子供の顔を見に頻繁に来るからぁ!」


 って言って、毎日のようにアフロディーテ様が顕現するようになったのは驚いたけども。


 もう少ししたら、イリアも出産予定日なので、我が家はどんどんにぎやかになる予定だ。

 ここ最近は、毎日のように王様と、カリストにヒモで引っ張られた状態の第一王子がやってくる。

 カリストによる調教によって、第一王子は大分いい感じの王族になって来たらしい。

 いい感じっていうのがよくわからないけど、噂によるとロボットみたいに理性的な受け答えをするようになったんだとか。

 あと服もちゃんと着てるらしい。

 そんな話が伝わっているあたり、乳首丸出しな事に疑問を持っていた城の従業員は案外多かったようだ。

 これで、いつでも王位を押し付けて引退できると喜んでるオッサンからの別荘の催促が、最近そこそこウザい。


 そんなこんなで、子供たちのためにも、ミュルクの森をさっさと切り開き、小さな子供が問題なく住めるくらいに発展させようとしているわけだ。

 来る日も来る日も森の中で作業しているんだけれど、ここにも地下鉄を繋げたために毎日日帰りしているため、疲れはそこまででもない。

 通勤時間は、大体ここまで1時間と言った所だ。

 障害物がなくて真っすぐ高速で走れるというのは素晴らしい。

 ヘリコプターの使用も考えたけれど、疲れた後にアレを操縦するのが案外面倒だったので、結局自動で帰れる地下鉄がメインになっている。

 結婚式の時に使って最後は乗り捨てたヘリは、王城でモニュメントみたいになっているらしい。


 毎日帰れるため、家族と会える時間が確保できるのはとてもありがたい。


「もう!ベタベタしすぎです!仕事したくなくなるじゃないですか!」


 と抱き着いてくるイレーヌも、


「忙しいので離してください……2時間後、お部屋のベッドで……。」


 と言って手の中から抜けていくサロメとも、関係は良好だ。


 イリアをリーダーにしたテレビアニメ事業も中々好調らしい。

 ロボットアニメをメインで作ってほしかったけれど、最近はBLモノも人気があるんだとか。

 アルゼもそのサポートが楽しいと言っていた。

 領地の開発が進んだら、アルゼには領主邸で働いてもらいたいけれど、今後どうなるかは2人次第だな。


 テレビといえば、最近フェリシアとサンドラによる通信講座の視聴率がうなぎ登りだという。

 文字を覚えたり、マナー講座等を見て、今後割のいい仕事に着こうという意欲ある人々がかなり多いようで、お嬢様たちばかりの塾とはまた違った層に人気らしい。

 フェリシアとサンドラには、領地運営をお願いしたいから、彼女たちの後任の講師を準備しておかないといけないかもしれない。

 なにせ、王様から直々に「この事業いい!続けてくれ!」的な事を回りくどく言われているので、途中で辞める事はできなそうだ……。


 ディとフレイ、そしてローラとニルファには、正式に領の騎士団を指揮してもらう事になっている。

 ディとフレイの部隊には、町の周辺と、町の中の警備を担当してもらい、ローラとニルファの部隊には、強大な魔物が発生したり、万が一戦争が起きた時に駆け付ける軍隊としての役割を期待している。

 ジョブレベルが上がったことで、アイギス・ドールもギガンテスも、ヒルデたちのサポート無しでも運用できるようになった。

 そのため非常に使い勝手が良くなったんだけど……。


「……流石に3人いっぺんにくっつかれるのは重い。」

「「「……。」」」


 ヒルデとエイルとスルーズが、自分たちの出番が無くなると抗議を始めた。

 無言で俺に抱き着いてるだけなんだけれど、これが地味に効果的だ。

 3人全員でくっつけるように小さくなっているらしいんだけれど、全員がガッシリと俺によじ登って掴まっていたら重くてしょうがない。


「あーもう!お前らはちゃんと必要な存在だから!近衛って事にして俺とか家族の事守る役割になってくれ!」

「「「……!」」」


 ということで、彼女たちが率いる近衛部隊、通称『ヴァルキリーズ』が結成された。


 因みに、近衛も騎士団も、構成するのは全員女性になる予定。

 イレーネ曰く、


「いっそのこと全員女性という特殊性を前面に出していきましょう。戦力に関しては、ダロス様の強化アーマーがあれば問題ありませんし。」


 ということらしい。

 まあ、まだ領地を切り開いてすらいないので、絵に描いた餅にもなってないんだけれど、話題性には困らなそうだ。



 逆に困っていることもある。

 ゼウスを倒してから、どうにもルシファーの様子がおかしい。

 目を合わせてくれないし、何かを言いかけて辞めるという事も多い。

 なんだ?NTRされたか?

 ディオネも心配してウザ絡みしてるくらいだ。

 いや、それは元々かもしれないけれど。


 そんな事を想っていたある日、深刻そうな顔のルシファーに話しかけられた。


「貴様、ちょっと話がある。2人きりでだ。」

「……わかった。」


 改めて話をされるとなると、流石に緊張する。

 こういう空気は苦手だ。

 良い話題だとしても、悪い話題だとしても、俺の心臓に負担がぎゅるぎゅるかかる。


「……その……だな……。」

「うん。」


 2人きりになってもやっぱり口も空気も重いまま。

 本格的にNTRの気配がする……。


「我は、セリカたち勇者が元の世界に帰る方法を探しに旅に出ようと思う。」

「……うん?」


 予想と全く違う提案に、流石に鳩が豆鉄砲を食ったような顔になっていただろう俺をみて、少しだけ笑顔になるも、すぐに表情を引き締めたルシファーは続ける。


「ディオーネー様には、彼女たちを元の世界に戻す方法は存在しないと教えられている。魔王さえ倒せば、元の世界に帰すというゼウスの言葉は、完全なる嘘だとな。」

「うわぁ、嫌な奴だったんだなぁやっぱり。」

「それでも、彼女たちが帰る方法を探しすらしないのは、直接の責任は無いにしろ、この世界に勇者を召喚する切っ掛けになった魔王として、許されないと思うのだ。だから……。」


 そこまで言って、まだ言いにくい事がありそうな様子のルシファーだったけど、今までに見たことが無いくらい顔を赤くしてから……。


「我は、いつになるかわからないが、必ずお前の元に帰ってくる!だから、その時は……我と……け……結婚しろ!我も責任を取るのだから、お前も責任を取るべきだ!」


 そう言い放った。


「あぁ、いいぞ。結婚しようルシファー。」

「なんでそんなあっさり返事をするのだ!?結婚と言うのはもっと神聖な……。」

「いや、結婚自体もう結構してるし、それに、俺にとってはもうとっくにルシファーの事を家族だと思ってるしさ?」

「……そうか。まあ、既に一緒のベッドで何度も寝ている仲だからな我ら。」

「だろ?」


 そう言って笑いあう俺たち。

 俺は寿命が永遠に近くなっているらしいから、別にルシファーが戻ってくるまで何年かかったとしても待っていられる。

 彼女が満足できるなら、いつまででも待つさ。


「いや、何勝手に決めてんの?私そこまでして帰る気ないけど?」

「ですねぇ?」

「なに!?」


 2人きりでの話だったけれど、途中からどうやらもう2人聞いていたらしい。

 まあ、俺の方からは2人が見えていたから、盗み聞きと言えるかは微妙だけれど。


「しかしだな、我としてはお前たちの事を知ってから知らん振りをするのは……。」

「だから!私は!友達が最低でも2人もいるこの世界でもそれはそれで満足してんの!元の世界に戻れるならそれはそれで嬉しいけどさ!神様がその方法は無いって言ってるんだよ!?それに、この世界でも前の世界と同じようにご飯もちゃんと美味しいの食べられるようになったしさ!アンタが私の犠牲になる必要無いんだって!」

「私なんて転生していて、もう見た目も完全に変わっていますから、今更元の世界に帰ってもちょっとですねぇ……。」

「ほら!マルタもそういって……え?ちょっとまって……マルタって異世界から来たの!?」

「はい。言ってませんでしたか?」

「聞いてないよ!?」


 女の子3人で、俺を置いてきぼりにしながらの議論をすること数分。


「……なんか、旅にはいかないことになったのだが……。」

「そっか。じゃあ今度結婚式しような。」

「……うむ。」


 結婚式の予定が入りました。




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