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MTーメタル・トルーパー戦記ー  作者: 蒼色ノ狐
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第71話 あなたは私の…(後編)

きっと言葉にしなくても二人はきっと…。

 「!!ドロシーさん!!!」

 鳥の姿をしたハイロゥの爪にぶら下がっているドロシーのファフニールを見て思わず叫ぶティナ。

 そこから先はティナ本人ですら記憶が曖昧になるほど動揺していた。

 とにかく助けなければならない、その一心であった。

 ファフニールの全推進力を使い突撃を行った。

 別のMTの部隊と交戦していた鳥のハイロゥは反応が遅れ結果的に突撃は体当たりとなり一撃を与える事に成功した。

 その後、爪から離れたドロシーのファフニールを抱き抱えるとそのまま離脱した。

 「急がないと!!」

 改めてドロシーのファフニールを見てみる。

 明らかに大破しておりコックピット部分にまで損傷が見られる。

 生命反応はあるようだが微弱であり先ほどから通信を行っても返事が無い。

 ティナな想像しゆる最悪の結末を必死に振り払う。

 「死なないで、ドロシーさん!!」

 とにかく死なせたくない、届くはずの無い言葉を必死に送る。

 涙が自然と溢れ視界がゆがむ中でティナの想いはドロシーに届いたようである。

 「…ハ…ミル…トン?」

 「!!ドロシーさん!!!大丈夫!?もう少しで艦だから!!」

 おぼろげながら聞こえてくるドロシーの声にティナは言葉を掛ける。

 だがドロシーは聞こえていないのかある質問をする。

 「…どうして?」

 「え?」

 「どうして…そんなに…心配…するの?」


 声が聞こえる。

 必死になって自分の呼ぶ声が聞こえる。

 ふと、どうでもいい事を考える。

 こんなに必死に何かを伝えようとしてくれた人は今まで居ただろうか?

 自分の両親。

 いや、家族は私が感情が薄いのを知っている。

 だから母親は父親が死んだ時でさえ私が感情を見せなかった事を内心はどうであれ責めなかった。

 他に私に親しい人間はいない。

 友達?

 感情が薄く一緒にいて楽しくないであろう人間と好んで友人となろうという人間はいなかった。

 それを寂しいと思った事はないし、これからも無いだろう。

 …徐々に聞こえてくる声が鮮明になってくる。

 この喧しい声はとても聞き覚えがある。

 この数年、嫌というほど聞いてきた声だ。

 声の正体が分かると同時に視覚も覚醒していく。

 周りを見れば損傷したコックピット。

 そこから私を呼ぶハミルトンの声だけが響く。

 「…ああ。…そうか。」

 突如として現れた大型のハイロゥから強襲を受けてそのまま気絶したのか。

 体を見る限り相当の傷を受けている筈なのに痛みの感覚が無い。

 …恐らく私は死ぬのだろう。

 死ぬのは別に怖くない。

 軍人である以上こんな風に死ぬのも覚悟の上だ。

 …だけど。

 「まだ。」

 そうまだ死ねない。

 頭に浮かんだ疑問。

 それを解き明かすまでは死ねない。

 幸いにもそれを解くカギは今も私に声を掛け続けている。

 感覚のない腕を必死に伸ばし通信を入れる。

 「…ハ…ミル…トン?」

 「!!ドロシーさん!!!大丈夫!?もう少しで艦だから!!」

 私の声が聞こえた瞬間、明らかに喜色を含んだ声で呼びかける。

 …どうして?

 「…どうして?」

 「え?」

 「どうして…そんなに…心配…するの?」

 どうして彼女は私が生きている事が嬉しいのだろうか?

 どうして彼女は私を生かそうと必死なのか?

 おぼろげな頭で必死に考えても分からないこの答えを死ぬ前に聞きたかった。

 私が質問をすると彼女は怒ったような声で答えをくれた。

 「そんなの決まってるじゃない!!」

 「《《友達》》だから!!」

 「……は?」

 自分でも間抜けだと思えるような声が出てしまったと思う。

 いきなり何を言い出してるのだろうか彼女は。

 「友達が死にかけてたら必死になるに決まってるでしょ!!もう喋らないで傷が痛むよ!!」

 また私を友達と呼んだ。

 いつの間にハミルトンと友達とやらになったのだろうか。

 そもそも何をもって彼女は私を友達と呼ぶのだろうか?

 あくまでイメージであるが友達というのは休日を共に過ごしたり、食事したり、買い物したりと多大な時間で様々な行動を…ん?

 そこまで考えてここ最近の行動を振り返る。

 …基本的に彼女と一緒に過ごす事が多かった。

 何という事だろうか。

 私、ドロシー・T・ワグナーは知らぬ間にティナ・ハミルトンと友達になっていたらしい。

 道理で買い物に付き合う事に疑問を抱かなくなったわけだ。

 道理でその時間を《《楽しい》》と思えたわけだ。

 「ハ、…ハハ。」

 思わぬ答えに自然と笑いがこみ上げてくる。

 「ドロシーさん!!大丈夫!?艦、もう目の前だから!!」

 突然に笑い出した私を心配してか彼女が必死に話しかける姿がどこか面白くて、また笑みがこぼれる。

 だけど、それを楽しむ時間はもう残されていないようだ。

 「…聞いて、ハミルトン。私はもう長くないわ。」

 「そんな事言わないで!!ほら!もうすぐ着艦できるよ!!そうすれば!!」

 「聞きなさい!!ティナ!!」

 「…え?」

 突然の名前呼びに彼女はキョトンとしてるだろうが知った事ではない。

 先にそっちが名前で呼んできたのだこれでお相子だろう。

 「…いい?ティナ?私はもうすぐ死ぬでしょう。」

 そう私はもうすぐ死ぬ。

 もう手足の感覚が無い。

 こんなに言葉がスラスラ出てくるのが奇跡のようである。

 「…けど、うんきっと貴女はそれを乗り越えて先に進める。」

 「ドロシー…さん。」

 音声だけでも彼女が泣いているのが分かる。

 自分が死ぬことよりも彼女が泣いている、そのことが悲しい。

 「私は一足早く逝くけれど、貴女は生き続けて。…それこそ私があの世で『彼女が私の友達だ。』って自慢できるぐらい軍人として、人として成長してみせて。」

 「…うん。…うん!」

 きっと彼女は無理に笑っている事だろう。

 例え目に見えなくとも私を悲しませまいと必死に。

 「分かったら戦線に戻りなさい。そして一人でも多く救ってあげて。」

 「…分かった!!」

 そう彼女が言うとしばらく音声が途絶える。

 おそらく着艦した艦に私の機体をあずけてるのだろう。

 その衝撃すら感じ取れなくなっているのが初めて煩わしく思う。

 「…ドロシーさん。」

 後は死に向かって行くだけと思っていたが彼女はまだこちらに語り掛けてくる。

 「今まで…ありがとう。ドロシー。」

 その声に対し私はもう開くのすら億劫な口を使い返事をする。

 「…こちらこそ。…ティナ。」

 この声が届いたかどうか分からないけれどこれを最後に通信は切れた。

 意識が途絶えそうになりながらも私は彼女のことを考える。

 本当にうるさくて、うっとしくて、子どもみたいで。

 それなのに私より学力が高くて。

 …優しくて。

 隊長…どうか彼女のいる世界をどうか守ってあげて下さい。

 さようなら…わ、たし、の、とも、だ、ち…。


 「クソッ!こいつ硬いぞ!」

 「怯むな!撃ちまくれ!!」

 突如現れた大型のハイロゥに苦戦する防衛陣はとにかく火力を集中させていた。

 だが強力なバリアに阻まれあと一歩届かずでいた。

 すると後方からミサイルが発射されバリアに当たり爆発する。

 「援軍か!?」

 ミサイルが撃たれた方向を見れば先ほど一撃離脱したMTがガトリング砲を撃ちながら大型MTに突撃していく。

 「なんだあいつは!?特攻しに行く気か!?」

 「分からん!とにかく援護するぞ!」

 突撃していくMTに合わせて他のMTも火力を投入する。

 するとバリアは徐々にひび割れやがて砕けていった。

 だが、突撃していったMTは止まる事なく持っていた銃剣をハイロゥの頭に串刺しにし弾丸を連射していく。

 やがて耐えきれなくなったハイロゥは内側から爆散し、後に残ったのは突撃したMTのみであった。

 「や、やったぞ!!お前なんて言うんだ!?」

 大型MTの撃破に成功し一同が歓喜に沸く中、ある一人が突撃していったMTに通信を入れる。

 「ーーーーーーよ、ーーーーさん。」

 「え?」

 「さようなら、私の友達。」

 そう言い残すとそのMTはその場から去っていった。

 「…通信に気付かなかったのか?」

 若干の疑問は残るがとにかく今は目の前の事に集中しようとそのことを忘れることにした。

この小説が面白いと思って下さったなら嬉しいです。

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