表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MTーメタル・トルーパー戦記ー  作者: 蒼色ノ狐
25/94

第24話 戦いの狼煙ーユースティアsideー

破る手を持って少女は祈る。

もう二度と間違いを犯さぬようにと。

 「…以上が私が発案できる唯一の作戦です。」

 エリアBCD内の作戦会議室、作戦を説明したスクリーンから目を離したアヤは集まった皆を見渡す。

 その姿はこの間とは違い真っ直ぐ前を向き目に力がある。

 彼女がこの場に入って来た時、当然のように睨まれていたが前に出てこう言った。

 「私を恨まれるのは当然です。必要なら軍法会議にて裁きも受けましょう。ですが、それはすべてガンホリック砦を攻略した後にして貰いたい。」

 前の作戦後とは違う彼女の様子に戸惑う士官たち。

 ひとまず彼女の話を聞いてみようという空気が流れ作戦を聞いた士官の間に沈黙が流れる。

 「本当にそんなことが可能なのか?《《ダミーバルーンの下を並走し空撃ちさせる》》などと」

 まず一人が声が聞こえると次々に疑問が出てくる。

 「ご静粛に!一人ずつ質問してもらえればお答えします。」

 その言葉に冷静さを取り戻したのかまず一人が手を挙げる。

 「なぜダミーバルーンの下を並走するのだ?監視塔を潰せばいい話ではないのか?」

 「おそらく敵は強力なレーダーを使っている可能性があります。ダミーバルーンだけではレーダーで見破られる可能性があります。故にダミーバルーンの下を砂煙がたたないギリギリで並走しなければならないのです。」

 「目視で確認されるのではないか?」

 「敵は長距離射撃に自信をもっているでしょう。目視できる距離まで近づけさせようとはしないでしょう。ですが監視塔を潰すのは最低条件です、報告されては元も子もないですから。」

 この後も立て続けに発せられる質問に丁寧に答えていく。

 その淀みのない受け答えに段々と質問していく者が減ってゆく。

 「その作戦が上手くいく可能性はどの程度なのだ?」

 「この作戦が成功する確率は高いと見ています。ですがガンホリック砦を落とせる可能性は半々と言えるでしょう。」

 「!?」

 彼女の言葉に全体に動揺が走る。

 「お忘れ無きよう。私が立案しているのは《《敵を同じ舞台に上がらせる為の作戦》》です。砦が落ちるかどうかはその後の皆様の働きに掛かっています。」

 「う、うむ、だが、しかし。」

 アヤの断言に全体の雰囲気が暗くなるが、一人がある事に思いつく。

 「そうだ!援軍を要請すべきではないか!この作戦と援軍があればあのような砦など…!」

 「いえ、援軍は呼べません。」

 士官の言葉を遮り否定の断言をするアヤに再び注目が集まる。

 「詳細は言えませんがこちらの情報はこちらの情報はおおよそ向こうに筒抜けです。援軍を申請すればあちらも軍備を増強するだけです。」

 アヤの言葉に再び場が動揺する。

 直接は言っていないものも、ユースティア側の情報を流している者がいると言っているようなものである。

 「故にこの作戦は小破している艦、二隻が修理を終え次第すぐに決行します。その間の監視塔制圧はドラクル小隊にお願いします。」

 「了解。」

 ユーリが承諾するのを確認しアヤは一呼吸おき全体を見渡す。

 ほぼ全員がお互いの顔を不安そうに見ている。

 「私が言わなかった事を皆さん感づいているでしょう。ですが断言します、この中にはいません。」

 アヤの断言に少し空気が緩和されるが、未だ多くの者が不安そうにしている。

 「その者に気づかれないようあの砦を落とすにはこの作戦と、皆さまの奮闘が不可欠です。私を疑うのは当然です、ですがどうかご協力ください。散っていった人たちを無駄死にしないように。」

 アヤが頭を下げ懇願する。

 全体が重い空気に包まれるがやがて一人がアヤに対し敬礼を行う。

 やがて一人また一人と増えてゆき、全員が参戦の意を示した。


 そして小破の二隻の修繕が終わった翌日に作戦が決行された。

 艦隊を捕捉しそうな監視塔はユーリ達の活躍によって潰された。

 後は作戦が上手く行くのを祈るのみとなっていた。

 アヤは再びエーデルワイスに乗り込み旗艦とし艦隊の中央に布陣している。

 「艦隊第一陣、もうすぐ国境を越えます。」

 オリビアの報告に緊張が走る、もう少し進めば完全に敵の新兵器の射程に入る。

 一隻、また一隻とユースティアとアルガの国境を越えエーデルワイスが国境を超えたあたりでアラームが艦を包む。

 「!全艦、衝撃に備えて!」

 アヤの言葉が艦隊通信で伝わるかどうかの時にそれは来た。

 光が再び襲い来て艦隊の真上を通過する。

 衝撃も襲い、エーデルワイスが大きく揺れる。

 やがてそれも収まってくるとすぐにオリビアが情報確認に入る。

 「状況は!」

 艦長であるノアの声が響くと同時にオリビアは答える。

 「全艦隊、損害…無し!」

 その報告にブリッジが歓声に包まれるが、それを抑制したのはアヤであった。

 「浮かれれてる時間はありません!すぐに全艦浮上のうち全速前進!MT部隊を発進させた後、艦隊による一斉射を行います!」

 すぐにオリビアがアヤの命令を全艦に伝え、周りの動きも慌ただしくなる。

 (そうまだ戦いの狼煙を上げただけ、本番はここから!)

 ついに目視できる位置にまでガンホリック砦を捉える。

 各艦から次々にMTが出陣していく。

 そろそろユーリ達も出陣をする頃であろうか。

 (頑張ってください少尉。あなたにはどうか《《戦いが終わったのち》》も見届けて欲しいですから。)


 アルガ公国の切り札であるグスタフXは不発に終わった。

 ガンホリック砦を巡る戦いの火ぶたは今切られた。

この小説が面白いと思って下さったなら嬉しいです。

評価してもらえるともっと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ