1 帰郷と新たな戦い
「ただいま」
その日、俺は実家に帰ってきた。
「おお、カイン!」
「よく戻ってきた!」
両親が嬉しそうに出迎えてくれた。
「お兄ちゃん!」
妹のリズは涙ぐんでいる。
「みんな、元気そうでよかった」
俺は家族三人を見て笑顔になった。
やっぱり『帰る家』があるっていいな。
『一周目』の世界では永遠に失われてしまったものが、ここにある。
どんなに苦しくても、つらくても、俺には戻る場所がある。
それが――たまらなく幸せだ。
きっと世界中の多くの人たちに、こんな場所があるんだと思う。
そして、それを守るのが俺の役目だ。
そのために、俺は『二周目』の世界に来たんだ。
あらためて、決意が固まった。
俺は、俺の力を必ず制御してみせる。
その自信を得て、もう一度『戦団』に戻る。
魔王軍の残党を討ち、この世界に完全な平和をもたらすために――。
家族とひとしきり再会を喜んだ後、俺は村の中を歩いて見て回った。
以前とほとんど変わらない。
平和な証だ。
「おお、カインじゃないか」
「よく戻ったなぁ」
「今や英雄じゃないか、はは」
村の人たちもみんな笑顔だ。
魔王を倒した後、何度か村に戻って来たけど、ここ半年ほどはまったく戻れていなかった。
それだけ『戦団』の活動が忙しかったといえる。
だから今日は久しぶりの帰郷だった。
「おや、カインかい?」
村の中を歩いていると、中年の女性に声をかけられた。
――アベルの母親だ。
「どうも、ご無沙汰しています」
一礼する俺。
「懐かしいねぇ。すっかり英雄様になっちゃって」
アベルの母親がにっこり笑った。
「いえ、そんな……」
「アベルは……どこ行っちゃったんだろうねぇ……」
と、寂しげな顔になるアベルの母。
「っ……!」
俺は思わず言葉を失った。
なんて声をかけていいのか、分からない。
ただ、本当のことは言えなかった。
「もうずっと帰ってきてないんだ……」
「そうですか……」
いずれ帰ってきますよ、といった慰めの言葉もかけられない。
俺は――結局、何も言えなかった。
陰鬱な気持ちになり、彼女と別れると、俺は村のすぐ外に出た。
そこには一人の青年が直立不動で立っている。
「村の護衛、ご苦労だったな、ヴェイル」
彼――『死者兵』のヴェイルに声をかけた。
青い肌に美しい容姿をした少年魔族。
こいつは元魔王軍の七魔将――つまり魔王の側近だった高位魔族だ。
『二周目の世界』に来て早々、俺はこいつを討ち、その死体を兵士として再生した。
死者兵――こうやってつくられた兵士は、俺の命令だけを聞く。
だから俺はヴェイルにこう命令した。
『村を全力で守れ』と――。
「俺の留守中、何か変わったことはなかったか?」
「いえ、たまにモンスターが迷い込む程度で、僕が雷撃で始末しておきました」
と、ヴェイル。
死者兵としてこいつを蘇生したとき、多少ぎこちない話し方だったんだけど、時間が経つにつれ生前と同じように流ちょうに話せるようになっていったようだ。
「よくやってくれた。引き続き村を守ってくれ」
「承知いたしました、マスター」
死者兵のヴェイルは従順だ。
「ああ、そうだ。随分と長い間、お前に魔力を供給していなかったな……補給するぞ」
「っ……! ありがとうございます!」
ヴェイルの目がパッと輝いた。
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