1 預言書と黒の魔剣士
「預言書にある……お前が『黒の魔剣士』だ。間違いないな」
トーマは俺を憎々しげににらんでいた。
「我らリゼル教団はお前を世界への反逆者と認定する――」
「な、なにを言って……!?」
俺は戸惑った。
リゼル教団といえば、ターニャが所属する『ルルファリア教団』と勢力を二分する世界最大の教団だ。
そんな彼らが俺を『世界への反逆者』として認定……?
しかも俺のことを『黒の魔剣士』とかいう仰々しい二つ名で呼んでるし。
「ちょっと待って。それは聞き捨てならない」
ターニャが割って入った。
「彼は一年前に魔王を討ち、世界を救った。さらに魔王軍の残党とも精力的に戦い、これを殲滅する日々を送っている……そんな彼をして『悪しき存在』とは?」
凛とした口調で問い詰めるターニャ。
「っ……!」
さすが最高司祭だけあって、トーマも気圧されているようだ。
だが、トーマもキッとした顔で反論してきた。
「我らとて、先ごろまでは彼を世界の英雄であり救世主だと感じておりました。ですがその認識が間違いであったことを――我らが神は示されたのです。二日ほど前に」
「二日前に神託でも降りたっていうの?」
「左様です、ターニャ様」
トーマがうなずいた。
「その神託の内容は――要約すると『カイン・ベルストこそいずれ世界に災いをもたらす『黒の魔剣士』――教団の預言書に記された絶対悪に他ならない』というものでした」
「俺が世界に災いを……?」
思わず目を丸くした。
いや――一つ、心当たりがある。
心象世界でシャドウから明かされた事実。
『魔の力』が抑えきれなくなった時、俺は新たな魔王として降臨するかもしれない、と。
「その顔……心当たりがありそうだな」
トーマが表情を険しくした。
「たとえ、お前に魔王を超える力があるのだとしても、俺たちはお前を討つ。この命を引き換えにしてでも、な」
じゃきん、と腰のナイフを抜くトーマ。
他の神官たちも同じくナイフを抜き、構えた。
完全に戦闘態勢だ。
リゼル教団の連中は、誰もが殺気に満ちていた。
こいつら、俺を殺す気だ――。
「このルルファリア神殿内で、しかも世界を救った英雄カインに戦いを仕掛けるっていうんだね? なら、あたしも最高司祭として君たちを容赦するわけにはいかなくなる」
ターニャがトーマを見つめた。
「あたしはカインを信じてるぞ」
「……つまりルルファリア教団は、その男に付くと?」
「根拠なしにカインと敵対する気はない、って言ってるんだ」
トーマがうめくと、ターニャはピシャリと言い放った。
「あなたの判断が間違っていることをお教えしましょう。今、この場で――この私が!」
言うなり、トーマが俺に向かって突進した。
ナイフを腰だめに構えて――。
こいつ……!?
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