13 勇者の称号
勇者カイン・ベルスト――。
コーネリアの言葉を俺は半ば放心状態で聞いていた。
まさか、俺が……勇者パーティの荷物持ちに過ぎなかった、この俺が。
一国の君主から勇者と呼ばれるとは。
「私はあなたに対し、勇者の称号を与えるべきだと他国に働きかけようと思っています。あなたはそれだけのことを成し遂げたのですから」
コーネリアが微笑む。
「すべては――魔王軍残党との最終決戦が終結した後に」
「私ごときにもったいないお言葉です、陛下」
俺は恭しく一礼した。
「よろしければ」
コーネリアが俺に顔を近づけた。
「この次は――二人で会うときには『コーネリア』とお呼びください、カイン殿」
「えっ……」
「ふふ、あなたとはもっとお近づきになりたいですね」
その微笑みは、やけに妖艶に見えた。
「カイン様!」
コーネリアが去った後、入れ替わるようにしてアリシアがやって来た。
「よかった……やっとお話しできます」
周囲を見回しながら、アリシアが俺の側まで来る。
「カイン様は大人気だから……一緒にお話しする機会を得るだけで一苦労です」
「私を探してくださったのですか? 申し訳ありません、姫」
「ふふ、でも今はこうして話せていますから。嬉しいです、あたし」
「私もですよ。姫と言葉を交わせる幸運と幸福を噛みしめています」
俺はアリシアに微笑んだ。
本当は――『一周目』のときのような関係に戻りたい。
英雄と姫じゃなく、ただの男と女として話したい。
でも、それは無理なんだ。
すべては失われ、俺たちは違う立場で、違う出会い方をした。
もうあのころのような関係にはなれない。
望んじゃいけなんだ。
今のアリシアには――今の幸せがあるはずだから。
「カイン様?」
アリシアがキョトンとした顔で首を傾げた。
「どうかなさいましたか? あたしの顔をジッと見て……」
「い、いえ」
俺は慌てて首を振った。
「魔王軍との戦いがすべて終わったら――きっとカイン様は世界中から英雄として表彰されると思います。領地をもらい、あるいはどこかの国の王にな
るかもしれませんね……」
アリシアが言った。
「俺が王に……!?」
さすがに驚いて、素の態度になってしまった。
「ふふ、別におかしな話ではないでしょう? あるいはどこかの国の王女と結婚して、王の座を継ぐとか……」
「王女と結婚……」
つぶやいたところでアリシアと視線が合った。
「……あたしの国でもそういった話は出ているようですよ?」
「アリシア……様」
急に心臓が早鐘を打ち始めた。
それは、つまり――。
俺がアリシアと結婚して次代の国王になる、っていうことか?
自分が王になる、なんて考えたこともなかった。
そもそも、こんな風に英雄扱いされる未来さえ、想像していなかったからな。
俺が考えていたことは、ただ『一周目』で守れなかった世界を、今度こそ守りたいという気持ちだけ。
後悔を払拭し、過去を乗り越える――俺の中に在ったのは、それだけだ。
【読んでくださった方へのお願い】
面白かった、続きが読みたい、と感じた方はブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです……!
評価の10ポイントはとても大きいのでぜひお願いします……!
評価の入れ方は、ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある
☆☆☆☆☆をポチっと押すことで
★★★★★になり評価されます!
未評価の方もお気軽に、ぜひよろしくお願いします~!




